この記事では「身になる」について解説する。

端的に言えば身になるの意味は「役に立つ・相手の立場に立つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大学の国文科を卒業したあおやぎを呼んです。一緒に「身になる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/あおやぎ

幼い頃から本を数えきれないほど読んできた活字中毒。国立大学の文学部国文科に入学し、日本語について学ぶ。2人の子育て経験を生かし、分かりやすく言葉の使い方について解説する。

「身になる」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 62717854

「身になる」という慣用句をご存知でしょうか?日常でも良く使われる表現ですよね。「実になる」と書いてあることもありますが、同じ意味なのでしょうか?使い分けがあるのか気になりますね。それでは早速「身になる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「身になる」の意味は?

「身になる」を国語辞典で調べてみると、次のような意味が記載されています。

身(み)にな・る

1 からだや心のためになる。その人の役に立つ。「食べたものが―・る」「知識が―・る」

2 その人の立ち場に立って考える。「親の―・って心配する」

3 心からその人のことを思う。和歌では多く草木の実にかける。

「花すすき穂に出でやすき草なれば―・らむとは頼まれなくに」〈後撰・秋下〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「身になる」

1つめの意味は、何かがその人にとって役に立つということです。モノだけでなく、知識や技術、お金のことなどにも使うことがあります。2つめの意味は、その人の立場で考えたり発言すること。「親身になる」とも言いますよね。3つめの意味では現代で使うことは少ないですが、味方になる・真心を込めるといった意味合いになるようです。

「身になる」の語源は?

次に「身になる」の語源を確認しておきましょう。「身になる」に直接の起源となる古事や出典はありませんが、古くから使われている表現のようです。

身」というのは、身体(からだ)という意味だけでなく、転じて「自分・わが身」「身の上・境遇・身分」などもあらわします。そのため、何かが身体の一部となったように役に立つことや、誰かの身の上になったかのように考えること、さらに関連して心からその人のことを思うことを「身になる」というようになったのですね。

\次のページで「「身になる」の使い方・例文」を解説!/

「身になる」の使い方・例文

「身になる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.現代和歌の研究会に向けて、たくさん書籍を購入したが議論を見ていると内容が身になっていないようだね。
2.書き手というものは、一文一文を読者の身になって充実させるべきだ。例えそれが競馬新聞であろうとも。
3.ともこさんは健太のこと、すごく心配していたよ。仲間の身になる人だよね。

1.は、書籍の知識がその人のものになっていない、役に立てていないという意味での「身になる」の例です。「身になる」には単にその場で役に立つというより、「その人自身に取り込んで血肉になる」ようなイメージがあります。2.は「相手の立場に立つ」という意味での例文です。自分が読者であると仮定して、読みたい・読みやすいように書く、ということですね。

3.は現代ではあまり使われない用法ではありますが、2.の意味が転じて心からその人を思う、味方になるという場合に使われます。

「身になる」?「実になる」?

「身になる」と書くか「実になる」と書くか迷ったことはありませんか?どちらも見かけたことがあるのではないでしょうか。「実になる」を辞書で引いてみると、「樹木に果実などが実る」と記載されています。「身になる」の誤用ともされているのですが、「努力が実になる」と書いた場合には「努力が実り、よい結果が出る」という意味での比喩表現ともとれますよね。実際に、太宰治作品をはじめとして過去の小説などにも登場している表現なのです。

実生活で使う場合には、「身になる」としておいた方が無難ではありますが、一概に誤用と言い切れないことも覚えておくとよいでしょう。

「身になる」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 72317072

大きく2つの意味がある「身になる」ですが、似た表現はあるのでしょうか。以下にご紹介していきます。

\次のページで「その1「身につく」」を解説!/

その1「身につく」

「身になる」の1つめの意味、「その人の役に立つ」に対しての類義語です。何かが自分の所有物となる、知識や技術、習慣などが定着し、使いこなせるようになるといった意味の言葉になります。

その2「先意承問」

「相手の立場に立って考える」という意味の類義語です。正式には「和顔愛語 先意承問」といいます。浄土宗の「仏説無量寿経」の中にある言葉です。「和顔愛語」は「穏やかな笑顔と慈愛に満ちた言葉」という意味、「先意承問」は「相手の望むことを先に察し、その希望を叶える」という意味。相手の立場に立ち、笑顔で温かい言葉をかけることが大切という仏教の教えですね。

「身になる」の対義語は?

「身になる」の対義語にはどんなものがあるでしょうか。主に「役に立つ」「相手の立場になる」の2つの意味について対義語を挙げていきましょう。

その1「無用の長物」

「無用の長物」とは、「あっても役に立たないどころかかえって邪魔になるもの」という意味の慣用句です。「身になる」が自分のために役に立つという意味ですから逆ですね。「身になる」には自分にとって、というニュアンスがありますが、無用の長物には取り立ててそういったニュアンスはありません。

主体が自分でなくとも、あくまで役に立つかどうかのみについていうときに使う表現になります。

その2「我関せず」

「自分には関係がないという態度や自分は関与しないという態度を取る様子」を表した言葉です。「我関せず焉」ともいいます。相手がどのような状態であっても相手の立場に立ったりせず、自分は自分、と超然としているわけですから、「身になる」の反対といえるでしょう。

「身になる」の英訳は?

image by PIXTA / 47855782

「身になる」を英語にするとどういった表現になるのでしょうか。こちらも2つの意味について紹介していきます。

\次のページで「その1「acquire」」を解説!/

その1「acquire」

知識や学問などを努力して得る、習得する」という意味の動詞です。また、「習慣などを身につける」「財産や権利などを取得する、獲得する」という意味もあります。

She acquired an English two years ago.
(彼女は2年前に英語を習得した。)

Emily has acquired a habit of working out  when she was a student.
(エミリーは学生時代に運動の習慣を身につけました。)

その2「put oneself in somebody’s place」

直訳すると「(誰かの)場所に(別の誰か自身)を置く」となります。誰かが立っている場所に自分も立つと、同じものが見えますよね。そこから転じて「誰かの立場に立って考える」という意味になりました。例えば「put yourself in him place」で「彼の立場に立って」ということができます。

You should put yourself in Kenji’s place if you want to help him.
(健二を助けたいなら、彼の立場に立たなくては。)

「身になる」を使いこなそう

この記事では「身になる」の意味・使い方・類語などを説明しました。2つの違う意味を持つ慣用句でしたね。また、「実になる」との混同がみられる言葉でもあります。使い分けは難しいところですが、都度相応しい方を選択できるよう、知識を持っておきたいですね。

" /> 【慣用句】「身になる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「身になる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「身になる」について解説する。

端的に言えば身になるの意味は「役に立つ・相手の立場に立つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大学の国文科を卒業したあおやぎを呼んです。一緒に「身になる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/あおやぎ

幼い頃から本を数えきれないほど読んできた活字中毒。国立大学の文学部国文科に入学し、日本語について学ぶ。2人の子育て経験を生かし、分かりやすく言葉の使い方について解説する。

「身になる」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 62717854

「身になる」という慣用句をご存知でしょうか?日常でも良く使われる表現ですよね。「実になる」と書いてあることもありますが、同じ意味なのでしょうか?使い分けがあるのか気になりますね。それでは早速「身になる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「身になる」の意味は?

「身になる」を国語辞典で調べてみると、次のような意味が記載されています。

身(み)にな・る

1 からだや心のためになる。その人の役に立つ。「食べたものが―・る」「知識が―・る」

2 その人の立ち場に立って考える。「親の―・って心配する」

3 心からその人のことを思う。和歌では多く草木の実にかける。

「花すすき穂に出でやすき草なれば―・らむとは頼まれなくに」〈後撰・秋下〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「身になる」

1つめの意味は、何かがその人にとって役に立つということです。モノだけでなく、知識や技術、お金のことなどにも使うことがあります。2つめの意味は、その人の立場で考えたり発言すること。「親身になる」とも言いますよね。3つめの意味では現代で使うことは少ないですが、味方になる・真心を込めるといった意味合いになるようです。

「身になる」の語源は?

次に「身になる」の語源を確認しておきましょう。「身になる」に直接の起源となる古事や出典はありませんが、古くから使われている表現のようです。

身」というのは、身体(からだ)という意味だけでなく、転じて「自分・わが身」「身の上・境遇・身分」などもあらわします。そのため、何かが身体の一部となったように役に立つことや、誰かの身の上になったかのように考えること、さらに関連して心からその人のことを思うことを「身になる」というようになったのですね。

\次のページで「「身になる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: