この記事では「口を切る」について解説する。

端的に言えば口を切るの意味は「話始める」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員ライターのminを呼んです。一緒に「口を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターとして活動中。

「口を切る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「口を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「口を切る」の意味は?

「口を切る」には、次のような意味があります。

口(くち)を切・る
1 話を始める。最初に発言する。
2 開けたことのないふたや栓、封などを開ける。
3 馬を歩かせはじめるために、手綱を緩める。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「口を切る」

体の一部である「口」を使った慣用句です。「口を切る」は「話を始める」「開けたことのないふたや栓、封などを開ける」「馬を歩かせ始めるために手綱を緩める」の3つの意味があり、主に現代語で使われる場合は、「話始める」「ふたを開ける」の意味で使われます。

ここからの説明はその2つの意味を中心に解説していきますが、3つ目の意味まで覚えておくようにしましょう。

「口を切る」の語源は?

次に「口を切る」の語源を確認しておきましょう。

「口」は話をしたり、ものを食べたりするときに使う体の一部を指すだけではなく「入り口」「端、はじめ」といった意味も持っています。「話始める」はこうした意味が基となって生まれたということはわかりやすいですね。また、「ふた・栓・封」というのは物の入り口にあたるので、「口」と言い換えられることがあります。そこからもう一つの「ふたを開ける」という意味を持つようになりました。

ちなみに3つ目の意味である「馬を歩かせ始める」も「口」の「はじめ」という意味が語源となって生まれた言葉だと言えるでしょう。

\次のページで「「口を切る」の使い方・例文」を解説!/

「口を切る」の使い方・例文

「口を切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「それではまず私が…」と校長先生が口を切って、討論会が始まった。
2.なかなか意見が出ない研究会の様子を見かね、教授自らが口を切って意見を述べた。
3.瓶の口を切って、中身をコップに注ぐ。

1、2のような「話始める」の意味で用いられる頻度が高いです。例えば会議や話し合いの場で、第一声を発した場合や、重たい沈黙を破る発言をしたような状況で使われます。3については「未開封のものを開ける」という場合に用いることが可能です。

「口を切る」の類義語は?違いは?

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次に、類義語や関連する言葉について解説していきます。

その1「口火を切る」

「くちびをきる」という読み方で、「口を切る」の類義語として挙げられる表現です。「真っ先に始める」「きっかけをつくる」「話始める」という意味を持っています。

意味は似ていますが、語源が異なるところが面白いです。「口火」は爆薬などに火をつけるのにつかう火のことを指し、その火をつけるところから「口火を切る」という慣用句が生まれたと言われています。

違いとしては「口火を切る」には「口を切る」のような「ふたを開ける」の意味がないという点がありますので、注意しておきましょう。

その2「切り出す」

「口を切る」と似ている意味の言葉で「切り出す」という表現もあります。「切り出す」には「話や相談ごとを言い出す」という意味があり、この意味の場合は「口を切る」と言い換えることができるでしょう。

注意点は「切り出す」には他の意味もあるという点です。「切って運び出す」「火打ち石を打って火を出す」といった意味が「切り出す」にはありますので、前後の文脈によって意味を判断するようにする必要があります。

「口を切る」の対義語は?

「話始める」「ふたを開ける」という意味の慣用句「口を切る」は対義語の定義が難しい表現です。その代わり、「口」を使った慣用句をいくつか紹介しますので、こちらをぜひ覚えていくようにしましょう。

「口」を使った慣用句

「口」を使った慣用句は数多く存在しています。今回はその中から厳選して3つ紹介しますので、合わせて確認してみてください。

その1「口が軽い」

言ってはいけないこと、秘密にすべきことを、簡単にぺらぺら話してしまうこと」という意味の慣用句です。耳にする機会も多いかもしれませんね。

この慣用句に関連して、覚えておいてほしい話があります。「口が軽い」の反対の表現は?と聞かれると「口が重い」と答える方が多いですが、これは実は間違いです。「口が重い」は「無口」「しゃべりたがらない」という意味で、厳密にいうと「口が軽い」の対義語にはなりません。

では正解は何かというと「秘密を口にしない」という意味の「口が堅い」という慣用句が「口が軽い」の対義語にふさわしい表現になります。勘違いされやすいので、注意しましょう。

その2「口車に乗る」

「口車に乗る」は「うまく言いくるめられ、騙されること」や「おだてられて何かさせられる」という場合に使われる慣用句です。こちらも「口」を使った代表的な慣用句になります。

「口車」とは、上手い話を車にたとえた言葉です。「口車に乗せられるといいことがない」ということから「石車に乗っても口車には乗るな」と昔から言われています。

その3「口が減らない」

次から次へとへりくつを並べたり、負け惜しみを言ったりすること」という意味の慣用句です。「減らず口をたたく」といった言い方をすることもあります。

「口が減らない」というと「おしゃべりな人」のことだと思っている方も多いですが、これは間違った言い方です。ただ単に饒舌なことではなく、「へりくつ」「負け惜しみ」といった言い訳が止まらない人のことを指す慣用句ですので、使う場面を間違えないようにしましょう。

\次のページで「「口を切る」の英訳は?」を解説!/

「口を切る」の英訳は?

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最後に「口を切る」の英語表現について考えていきましょう。

口を切るは「be the first to speak」「open」

「口を切る」には主に「話始める」と「ふたを開ける」という意味があるので、それぞれの英訳を考えていきます。

まずは「話始める」ですが、be動詞を使って「1人目の話者になる」という言い回しを英訳するとわかりやすいです。この場合は「be the first to speak」と英訳することができ、「口を切る」と訳しても問題ないでしょう。

次に「ふたを開ける」の場合ですが、これはシンプルに「open」という単語を使って表現できます。注意点としては「未開封のものを開ける」という場合しか「口を切る」という表現が使えないので、「open」を和訳する場合は前後の文脈に注意するようにしましょう。

以下に例文を用意しているので、合わせて参考にしてみてください。

In the debate, she was the first to speak.
論争の口を切ったのは彼女だった。

He opened the new bottle of brandy.
彼はブランデーの口を切った。

「口を切る」を使いこなそう

この記事では「口を切る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

慣用句の世界で「口」は話すことのたとえだけではなく、「ふた」「入り口」など、連想できる様々な意味をたとえて幅広く使われます。辞書で「口を」と検索すると、その数の多さに驚くと思いますよ。もっと深く知りたいという方は、ぜひ辞書を引いて調べてみてください。

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国語言葉の意味

【慣用句】「口を切る」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員ライターがわかりやすく解説!

この記事では「口を切る」について解説する。

端的に言えば口を切るの意味は「話始める」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員ライターのminを呼んです。一緒に「口を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターとして活動中。

「口を切る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「口を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「口を切る」の意味は?

「口を切る」には、次のような意味があります。

口(くち)を切・る
1 話を始める。最初に発言する。
2 開けたことのないふたや栓、封などを開ける。
3 馬を歩かせはじめるために、手綱を緩める。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「口を切る」

体の一部である「口」を使った慣用句です。「口を切る」は「話を始める」「開けたことのないふたや栓、封などを開ける」「馬を歩かせ始めるために手綱を緩める」の3つの意味があり、主に現代語で使われる場合は、「話始める」「ふたを開ける」の意味で使われます。

ここからの説明はその2つの意味を中心に解説していきますが、3つ目の意味まで覚えておくようにしましょう。

「口を切る」の語源は?

次に「口を切る」の語源を確認しておきましょう。

「口」は話をしたり、ものを食べたりするときに使う体の一部を指すだけではなく「入り口」「端、はじめ」といった意味も持っています。「話始める」はこうした意味が基となって生まれたということはわかりやすいですね。また、「ふた・栓・封」というのは物の入り口にあたるので、「口」と言い換えられることがあります。そこからもう一つの「ふたを開ける」という意味を持つようになりました。

ちなみに3つ目の意味である「馬を歩かせ始める」も「口」の「はじめ」という意味が語源となって生まれた言葉だと言えるでしょう。

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