この記事では「手を上げる」について解説する。

端的に言えば手を上げるの意味は「暴力を振るう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「手を上げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「手を上げる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「手を上げる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「手を上げる」の意味は?

「手を上げる」には、次のような意味があります。

1.殴ろうとして、手を振り上げる。
2.降参する。
3.腕前や技量が上達する。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「手を上げる」

一言で「手を上げる」と言っても、いろいろな意味があります。乱暴を働く試合相手に負けて降参する、仕事の方法を覚えて技術が向上するなどです。なお「手を挙げる」という表現もあります。「上げる」と「挙げる」の違いを解説しましょう。「上げる」の反対は「下げる」ですが、「挙げる」はっきりとわかるように意思表示をする場合に使われます。このあたりの使い方がはっきりせず曖昧なときは、仮名書きにするようにしましょう。

「手を上げる」の語源は?

次に「手を上げる」の語源を確認しておきましょう。とはいっても語源らしい語源はありません。その見たままの動作を表します。「手を挙げる」との使い分けに自信がない場合は、前後の文脈から判断してください。また腕前が上がることは動作では判断できませんから、毎日観察していて成績が向上したり、周囲と比べて明らかに進歩したりしていた場合には「手を上げた」と考えていいでしょう。

そのほか「挙げる」という漢字を使う場合は、その言葉を言い換えたときに「挙」という漢字で表せるかに注目してみてください。例えば「結婚式を挙げる」は「挙式」と言い換えられますし、犯人を逮捕することは「検挙」と表現できますから「犯人を挙げる」が正しいとわかります。

\次のページで「「手を上げる」の使い方・例文」を解説!/

「手を上げる」の使い方・例文

「手を上げる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.僕のお父さんは、自分を非難されるとすぐに手を上げるから困ったものだ。
2.部長の意見にはまったく非の打ち所がないから、手を上げるより仕方がない。
3.最近彼女のつくったサイトを見ているけど、貴重な情報がたくさん載っていてかなり手を上げたようだ。

実力がつく意味での「手を上げる」はあまり一般的に使われることはありません。むしろ「力量を上げる」とか「実力を上げる」と言ったほうが、気持ちがよく伝わるでしょう。また「降参する」という意味での「手を上げる」「お手上げ」と表現したほうが意味がよく伝わります。そう考えると、「手を上げる」を使って問題なく意味が通じるのは「暴力を振るう」だけになるでしょう。

このように意味が間違って伝わる恐れのある用語を使うときは、別に言い換える候補がないかを目安に、注意して使うようにしてください。

「手を上げる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ここでは「手を上げる」の類義語を見ていきましょう。意味の解説のところで3種類の意味を紹介しましたから、それぞれについて類義語を挙げておきます。

その1「暴力を振るう」

まず「手を上げる」の類義語として最も使われる言葉を紹介します。それが「暴力を振るう」です。実際に手を上げて殴ったりしなくても、今日では「言葉の暴力」が槍玉に挙げられることも多くなってきました。

「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」などの俗語が世間に認知され、「ハラスメント」なる言葉をキーワードとして「○○ハラ」という派生語が続々と誕生しています。上司をはじめとする一定の年代以上の人が、ついうっかり使ってしまう言葉も、若い世代の人たちはしっかりチェックしていますから神経を使わなければならない時代と言えるでしょう。

\次のページで「その2「降参する」」を解説!/

その2「降参する」

「降参する」「お手上げ」と表現したほうがよくわかるでしょう。いずれも「手を上げる」の類義語で、相手への抵抗をやめておとなしくすることです。スポーツにしても勉強にしても、全力で戦った結果負けを認めた場合は、潔く「降参する」しかないでしょう。同じ意味では「白旗を揚げる」という言葉もあります。

その3「腕を上げる」

「腕を上げる」とは物理的に下げていた腕を上に上げることではありません。この場合の「腕」「腕前」のことです。つまり技術が向上することを、このように表現します。

「手を上げる」の対義語は?

次に「手を上げる」の対義語を見ていきましょう。やはり3種類の対義語を紹介します。

その1「矛を収める」

「矛を収める」「手を上げる」のうち「暴力を振るう」の対義語です。矛は、日本では鎌倉時代に中国から伝わったものとされています。歩兵や騎兵にとっては強力な武器でした。防具である盾と対にして使われたものです。「矛を収める」とは、戦いをやめるという意味があります。誰かを殴ろうとして振り上げた拳を降ろすことを武器の矛を収めることに例えたものです。

その2「勝利を収める」

「勝利を収める」「降参する」という意味での「手を上げる」の対義語と言えます。野球や水泳などのスポーツに限らず、あらゆる事柄に励んだ成果として「勝利を収める」ことができれば、誰でも気持ちのいいものです。出版社に投稿した原稿が採用されて、晴れて作家になれたなら飛び上がるほど嬉しいでしょう。何事も簡単には諦めず、こつこつと努力することが大切です。

その3「力量が劣る」

「力量が劣る」「上達する」という意味での「手を上げる」の対義語と言えます。あることを成し遂げるための能力が、他と比べて劣っているという意味です。能力には、身体的能力や知的能力などが挙げられます。これらの能力が他人より圧倒的に優れていれば「天賦の才」の持ち主としてほめたたえられることでしょう。

\次のページで「「手を上げる」の英訳は?」を解説!/

「手を上げる」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に「手を上げる」の英訳を見ていきましょう。これも「暴力を振るう」「降参する」「技量を上げる」を意味する3種類の英語を紹介します。

その1「use violence」

まず最初に「暴力を振るう」を意味する英訳を紹介します。それは「use violence」です。「violence」という単語は「暴力」を意味します。最近では日本でも「domestic violence(家庭内暴力)」が問題になっているので、ご存じの方も多い単語でしょう。普通「家庭内暴力」を表すときは、「domestic violence」の頭文字を取ってDVと表現します。

その2「give in to」

次に「降参する」を意味する「手を上げる」の英訳を解説します。「~に屈する」という意味を持つ「give in to」を挙げておきましょう。そのほか日本でも、ボクシングで勝てないとわかったときはタオルを投げますが、これは英語の「throw in the towel」をそのまま日本語に訳したもので「降参する」という意味があります。

その3「increase skill」

最後は「技量を上げる」を意味する「手を上げる」です。これは英語で「increase skill」と言います。「increase」「増える」のほか「伸びる」という意味でも使われるのです。「skill」は半ば日本語化した英語としてご存じでしょう。「スキル」つまり「技量」「腕前」のことで、「increase skill」「技量を上げる」「腕前を上げる」となります。

「手を上げる」を使いこなそう

この記事では「手を上げる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「手を上げる」と「手を挙げる」では意味が違いますが、その使い分けは私たち日本人でも難しいものです。新聞社の校閲部の記者が書くコラムでも「手を上げる」と「手を挙げる」は間違えやすい言葉として取り上げています。文章を書くことを生業にしている人でさえ間違うのですから、私たち一般の人間はなおさらでしょう。それでも、できるだけ正しい日本語を覚えるよう努力したいものです。

" /> 【慣用句】「手を上げる」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説! – ページ 2 – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「手を上げる」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

「手を上げる」の使い方・例文

「手を上げる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.僕のお父さんは、自分を非難されるとすぐに手を上げるから困ったものだ。
2.部長の意見にはまったく非の打ち所がないから、手を上げるより仕方がない。
3.最近彼女のつくったサイトを見ているけど、貴重な情報がたくさん載っていてかなり手を上げたようだ。

実力がつく意味での「手を上げる」はあまり一般的に使われることはありません。むしろ「力量を上げる」とか「実力を上げる」と言ったほうが、気持ちがよく伝わるでしょう。また「降参する」という意味での「手を上げる」「お手上げ」と表現したほうが意味がよく伝わります。そう考えると、「手を上げる」を使って問題なく意味が通じるのは「暴力を振るう」だけになるでしょう。

このように意味が間違って伝わる恐れのある用語を使うときは、別に言い換える候補がないかを目安に、注意して使うようにしてください。

「手を上げる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ここでは「手を上げる」の類義語を見ていきましょう。意味の解説のところで3種類の意味を紹介しましたから、それぞれについて類義語を挙げておきます。

その1「暴力を振るう」

まず「手を上げる」の類義語として最も使われる言葉を紹介します。それが「暴力を振るう」です。実際に手を上げて殴ったりしなくても、今日では「言葉の暴力」が槍玉に挙げられることも多くなってきました。

「セクハラ」「パワハラ」「モラハラ」などの俗語が世間に認知され、「ハラスメント」なる言葉をキーワードとして「○○ハラ」という派生語が続々と誕生しています。上司をはじめとする一定の年代以上の人が、ついうっかり使ってしまう言葉も、若い世代の人たちはしっかりチェックしていますから神経を使わなければならない時代と言えるでしょう。

\次のページで「その2「降参する」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: