
「悲しい」を使用する際のポイント
そのため「悲しい体験」は「泣きたくなるようだ」、「つらい体験」は「いろいろな面で精神的に苦痛だ」というニュアンスになります。また「つらい」は「つらい気持ちを起こさせる□□」という意味で使われることは少なく、その場合は「この曲のメロディーは聞くのがつらい」などのように言うことが多い。なお「胸がつまる」との違いは、「悲しい」は主体の感情として「悲しい」場合と、物事が「悲しい」感情を起こさせる場合とがある点です。
その2「つらい」
「つらい」は精神的に苦痛を感じる様子を表し、「炎天下セールスに歩くのはつらい仕事だ」「かわいがって育てた子を手放すのはつらい」などのように名詞にかかる修飾語または述語として用いられることが多く、述語にかかる修飾語として用いられることは少ない。
「つらい」の表す苦痛はとても主観的で、苦痛を受ける被害者の耐えがたさを暗示します。したがって「つらい」と感じるかどうかは人によって異なりますよ。「君もつらいだろうが、我慢してほしい」は苦痛を受ける相手の立場に立って「苦痛に感じるだろうが、我慢してほしい」という同情の気持ちを暗示する例です。
「つらい」を使用する際のポイント
「借金の話を持ち出されるとつらいんだなあ」は「…するとつらい」の形で条件に呼応する述語として用いられ、「…すると困る」という意味を表しますよ。この場合には苦痛の程度は大きくはありません。
この「つらい」は「いたい」に似ていますが、「いたい」の表す苦痛は「つらい」よりももっと直接的・肉体的である点が異なります。「いたい」はまた精神的な苦痛をも表せますが、その場合には被害を受けたことをやや客観的に表す意味になり、被害がどの程度のものかまでは言及しないのに対して、「つらい」では受けた被害が主観的に耐えがたいものであるということを暗示しますよ。
「つらい」を使用する際のポイント2
したがって「辛い注射」は「注射される者が耐えがたい」、「痛い注射」は「やや客観的な苦痛」というニュアンスになります。
また、「つらい」は「苦しい」にも似ていますが、「苦しい」が苦痛の状態そのものを暗示するのに対して、「つらい」は苦痛を感じている不快な心理を暗示し、体の一部分の苦痛については用いない点が異なりますよ。そのため「食べ過ぎて胃が辛い」は誤用となり、正しくは「食べ過ぎて胃が苦しい」となります。ちなみに「胸がつまる」との違いは、「つらい」は苦痛を受ける被害者の耐えがたさを暗示するという点でしょう。
「胸がつまる」の対義語は?
「胸がつまる」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「ばっさり」
「ばっさり」は一度に大量に切断する様子を表す表現。「玲子は腰まであった髪をばっさりと切った」「大木の大枝をばっさりと落とす」は基本的な用法で、具体物を決断して一度に大量に切断する場合、「この原稿は後半をばっさり削らないと入らない」「予算がばっさり削られてしまった」は大量に削除する場合、「悪いしがらみはばっさり切って捨てる覚悟だ」は乱暴に断絶させる場合、「強打者をばっさり三振に切って取った」「その評論家は相手かまわずばっさり斬る」は相手を乱暴・無造作に退ける場合です。
また、切断したあとの状態に視点があり、乱暴・無造作・唐突の暗示をもち、爽快の暗示を伴う場合もありますよ。この「ばっさり」は「すっぱり」に似ていますが、「すっぱり」は鋭利な刃物で一気に切断する様子を表し、切り口は平滑で切断された物が完全に本体から分離するニュアンスで、思い切りのよさの暗示があります。
\次のページで「その2「すっぱり」」を解説!/