この記事では「胸がつまる」について解説する。
端的に言えば「胸がつまる」の意味は「心配や悲しみ・感動などがこみあげてきて苦しくなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「胸がつまる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「胸がつまる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「胸がつまる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「胸がつまる」の意味は?

「胸がつまる」には、次のような意味があります。

心配や悲しみごとなどで感情が高ぶり、胸が苦しくなる。

出典:コトバンク

「胸がつまる」は悲哀・恥ずかしさ・喜び・感動などが胸にこみあげてきていっぱいになる、物も言えなくなるという意味の慣用句です

「胸がつまる」の語源は?

次に「胸がつまる」の語源を確認しておきましょう。漢字で「胸がつまる」は「胸が詰まる」と書きます。それでは「詰」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「詰」は言葉を表す「言」と厳しく質問して困らせる意味の音を示す「吉」とを合わせた字。言葉で責めたてて逃れられないようにすること、つまり「なじる」意味を表します

\次のページで「「胸がつまる」の使い方・例文」を解説!/

「胸がつまる」の使い方・例文

「胸がつまる」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.表情豊かで繊細な彼女はむねがつまって物が言えなくなった。

2.興奮した彼はむねがつまり涙ぐんでしまった。

3.文学好きのあなたがおすすめの新潮文庫の小説を読んでいたらむねにつまる情景描写があった。日本語って素敵ね、あの作品によって感覚が刺激され満ち足りた気分になれたわ。

例文1からはとても辛い出来事にあった様子が読み取れますし、例文2からは感極まっている様子が伺えます。また、例文3からは記憶に残る名作に出会えた喜びが伝わってきますね。

「胸がつまる」の類義語は?違いは?

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「胸がつまる」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「悲しい」

「悲しい」は「別れた彼のことを思うとかなしくやるせない」「赴任間もない彼にかなしい知らせが届いた」などのように心が痛んで泣きたいような様子を表します主体の感情として「悲しい」場合と、物事が「悲しい」感情を起こさせる場合とがありますよ。「友人が信じられないなんてかなしい話だ」はしばしば「悲しい話」という名詞を修飾する用法で用いられ、「嘆かわしい事態」という意味になります。精神的な苦痛を表す意味で「悲しい」は「つらい」に似ていますが、「つらい」は意味の範囲が広く、さまざまな感情において耐えがたいという意味を表すのに対して、「悲しい」は悲哀に限定される点が異なりますよ。

\次のページで「「悲しい」を使用する際のポイント」を解説!/

「悲しい」を使用する際のポイント

そのため「悲しい体験」は「泣きたくなるようだ」、「つらい体験」は「いろいろな面で精神的に苦痛だ」というニュアンスになります。また「つらい」は「つらい気持ちを起こさせる□□」という意味で使われることは少なく、その場合は「この曲のメロディーは聞くのがつらい」などのように言うことが多い。なお「胸がつまる」との違いは、「悲しい」は主体の感情として「悲しい」場合と、物事が「悲しい」感情を起こさせる場合とがある点です。

その2「つらい」

「つらい」は精神的に苦痛を感じる様子を表し、「炎天下セールスに歩くのはつらい仕事だ」「かわいがって育てた子を手放すのはつらい」などのように名詞にかかる修飾語または述語として用いられることが多く、述語にかかる修飾語として用いられることは少ない

「つらい」の表す苦痛はとても主観的で、苦痛を受ける被害者の耐えがたさを暗示します。したがって「つらい」と感じるかどうかは人によって異なりますよ。「君もつらいだろうが、我慢してほしい」は苦痛を受ける相手の立場に立って「苦痛に感じるだろうが、我慢してほしい」という同情の気持ちを暗示する例です。

「つらい」を使用する際のポイント

「借金の話を持ち出されるとつらいんだなあ」は「…するとつらい」の形で条件に呼応する述語として用いられ「…すると困る」という意味を表しますよ。この場合には苦痛の程度は大きくはありません

この「つらい」は「いたい」に似ていますが、「いたい」の表す苦痛は「つらい」よりももっと直接的・肉体的である点が異なります「いたい」はまた精神的な苦痛をも表せますが、その場合には被害を受けたことをやや客観的に表す意味になり、被害がどの程度のものかまでは言及しないのに対して、「つらい」では受けた被害が主観的に耐えがたいものであるということを暗示しますよ。

「つらい」を使用する際のポイント2

したがって「辛い注射」は「注射される者が耐えがたい」、「痛い注射」は「やや客観的な苦痛」というニュアンスになります

また、「つらい」は「苦しい」にも似ていますが、「苦しい」が苦痛の状態そのものを暗示するのに対して、「つらい」は苦痛を感じている不快な心理を暗示し、体の一部分の苦痛については用いない点が異なりますよ。そのため「食べ過ぎて胃が辛い」は誤用となり、正しくは「食べ過ぎて胃が苦しい」となります。ちなみに「胸がつまる」との違いは、「つらい」は苦痛を受ける被害者の耐えがたさを暗示するという点でしょう。

「胸がつまる」の対義語は?

「胸がつまる」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「ばっさり」

「ばっさり」は一度に大量に切断する様子を表す表現。「玲子は腰まであった髪をばっさりと切った」「大木の大枝をばっさりと落とす」は基本的な用法で、具体物を決断して一度に大量に切断する場合、「この原稿は後半をばっさり削らないと入らない」「予算がばっさり削られてしまった」は大量に削除する場合、「悪いしがらみはばっさり切って捨てる覚悟だ」は乱暴に断絶させる場合、「強打者をばっさり三振に切って取った」「その評論家は相手かまわずばっさり斬る」は相手を乱暴・無造作に退ける場合です。

また、切断したあとの状態に視点があり、乱暴・無造作・唐突の暗示をもち、爽快の暗示を伴う場合もありますよ。この「ばっさり」は「すっぱり」に似ていますが、「すっぱり」は鋭利な刃物で一気に切断する様子を表し、切り口は平滑で切断された物が完全に本体から分離するニュアンスで、思い切りのよさの暗示があります

\次のページで「その2「すっぱり」」を解説!/

その2「すっぱり」

「すっぱり」は完全に囲碁の関係をなくす様子を表し、「父は母の死後、酒をすっぱりとやめた」「あの人のことはすっぱりとあきらめます」などのように単独でまたは「と」が付いて述語にかかる修飾語になります。主体が強い意志を持つ対象との以後の関係を断絶させるという意味で、断絶したあとの潔さの暗示がありますよ。この「すっぱり」は「きっぱり」に似ていますが、「きっぱり」は態度が決然としている様子を表し、関係を断絶する以外にも用いられます。したがって「その女優は離婚のうわさをすっぱり否定した」は誤用となり、正しくは「その女優は離婚のうわさをきっぱり否定した」となりますよ。

「胸がつまる」の英訳は?

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「胸がつまる」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「胸がつまる」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「have a stuffy feeling in one's chest」

「have a stuffy feeling in one's chest」は「胸が詰まっている」という意味です。「have a stuffy feeling in one's chest I can hardly speak」で「胸がつまって言葉にならない」、「I had a heartbreaking encounter have a stuffy feeling in one's chest」で「胸がつまるほどの出来事に遭遇した」と書き表すことができますよ。

「胸がつまる」を使いこなそう

この記事では「胸がつまる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「胸がつまる」は悲哀・恥ずかしさ・喜び・感動などが胸にこみあげてきていっぱいになる、物も言えなくなる意味だと解説しましたね。なお「胸がつまる」と反義語の言葉に「えぐい」が挙げられます。「えぐい」は物事が非常に刺激的である様子を表す現代語用法刺激的である対象としては目で見て強烈な刺激を受けるものについて用いられることが多く、聴覚によるものについて用いられることはありません。「えぐい」は「気持ち悪い」に近い意味を表しますが、「気持ち悪い」がどんなものについても用いられるのに対して、「えぐい」は刺激的な光景など、視覚的な刺激に限って用いられる点が異なります

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国語言葉の意味

【慣用句】「胸がつまる」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「胸がつまる」について解説する。
端的に言えば「胸がつまる」の意味は「心配や悲しみ・感動などがこみあげてきて苦しくなる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「胸がつまる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「胸がつまる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「胸がつまる」の意味は?

「胸がつまる」には、次のような意味があります。

心配や悲しみごとなどで感情が高ぶり、胸が苦しくなる。

出典:コトバンク

「胸がつまる」は悲哀・恥ずかしさ・喜び・感動などが胸にこみあげてきていっぱいになる、物も言えなくなるという意味の慣用句です

「胸がつまる」の語源は?

次に「胸がつまる」の語源を確認しておきましょう。漢字で「胸がつまる」は「胸が詰まる」と書きます。それでは「詰」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「詰」は言葉を表す「言」と厳しく質問して困らせる意味の音を示す「吉」とを合わせた字。言葉で責めたてて逃れられないようにすること、つまり「なじる」意味を表します

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