この記事では「肝を消す」について解説する。
端的に言えば「肝を消す」の意味は「心配・配慮などで落ち着かぬ気分になる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「肝を消す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「肝を消す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「肝を消す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肝を消す」の意味は?

「肝を消す」には、次のような意味があります。

1 「肝を潰(つぶ)す」に同じ。

「―・して周章(あわ)てて逃出そうとすると」〈魯庵・破垣〉

2 苦心する。心を尽くす。

「心をくだき、―・しけるところに」〈太平記・一一〉

出典:コトバンク

「肝を消す」は危険を感じてぞっとする、ひやっとするという意味の慣用句です

「肝を消す」の語源は?

次に「肝を消す」の語源を確認しておきましょう。それでは「肝」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「肝」は体を表す「月」とおおもとの意味の音を示す「干」とを合わせた字。体のおおもとであるところ、つまり「肝」「肝臓」を表します。

\次のページで「「肝を消す」の使い方・例文」を解説!/

「肝を消す」の使い方・例文

「肝を消す」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.酒に酔って注意力が低下してよろけて転倒しそうになり肝を消すようなことは、ビジネスマンにはよくあることだ。

2.食欲がなく神経が昂り感情的になっていた私は、生理による腹痛を我慢していた。しかし責任感の強い彼女はその状態で肝を消しながらワークを続けていた。

3.英会話教室の学習指導中に、下腹部に激痛が走り下痢と嘔吐の症状に見舞われ肝を消した。

例文1からはお酒に飲まれている様子が伺えますし、例文2からはやせ我慢は体によくないことが読み取れます。また、例文3からはとてもつらい状況であったことが伺えますね。

「肝を消す」の類義語は?違いは?

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「肝を消す」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「もの恐ろしい」

「もの恐ろしい」は「その話はものおそろしい雰囲気を漂わせていた」「人気のない盛り場はものおそろしい」などのように実体のつかめないものに恐怖や不安を感じる様子を表します「もの」は「なんとなく…の感じがする」という意味の接頭語「もの恐ろしい」は話者の主観的な恐怖を表しますが、実体が理性で認識できないものに対する恐怖であることがポイントで、具体物や理性で認知できるものについての恐怖を表す場合には用いられません

そのため「熱帯のジャングルにはもの恐ろしい毒蛇がいる」は誤用となり、正しくは「熱帯のジャングルには恐ろしい毒蛇がいる」となります。主観的な恐怖を表す意味では「もの恐ろしい」は「空恐ろしい」に似ていますが、「空恐ろしい」は恐怖や驚きの程度は非常に大きいですが、実体が明確であって不安の暗示は少ない点が「もの恐ろしい」と異なりますよ。したがって「その計画は聞いただけでもの恐ろしくなる」は誤用となり、正しくは「その計画は聞いただけで空恐ろしくなる」となります。ちなみに「肝を消す」との違いは、「もの恐ろしい」は実体のつかめないものに恐怖や不安を感じる様子を表すという点ですよ。

その2「おっかない」

「おっかない」は「子供の頃、よくおっかない話を聞かされた」や「そんなにおっかない顔をするなよ」など恐怖や不安を感じる様子を表します。日常会話中心に用いられかたい文章中には登場しません。「おそろしい」や「こわい」に多くの場合置き換えられますが、「おそろしい」「こわい」よりも俗語的で恐怖の程度は低いでしょう。また「おそろしい」より用法が限定されていて「警戒すべき」という意味では用いられません。

例えば「そんなおっかない商売には手を出せないな」は不安を感じるという意味であって「あぶない」に近いですが、「あぶない」よりは失敗に対する危機感に乏しく、漠然と怖がっていることが暗示される表現です。なお「肝を消す」との違いは、「おっかない」は日常会話中心に用いられかたい文章中には登場しないという点ですよ。

その3「ぞっ」

「ぞっ」は「風穴に下りるとぞっとする冷気が襲ってきた」「闇を切り裂く女の悲鳴に思わずぞっとして立ちすくんでしまった」などのように思わず身震いするような感覚が一瞬襲ってくる様子を表します身震いする原因としては、冷気・恐怖・美がありますが、特に言及しない場合は恐怖による身震いを表します。恐怖を実感する生々しさと不快・忌避感の暗示が強いでしょう。この「ぞっと」は「ぞくっと」に似ていますが、「ぞくっと」は震えが相対的に軽く、寒気や興奮が原因になることが多い。そのため「その話を聞いてぞっとした」は「恐ろしくて」、「その話を聞いてぞくっとした」は「興味がわいて」というニュアンスになります。ちなみに「肝を消す」との違いは、「ぞっ」は不快・忌避感の暗示が強いという点でしょう。

その4「びっくり」

「びっくり」は非常に驚く様子を表す表現で、不快・慨嘆などの暗示はありません。「劇場を間違えたのに気付いてびっくり仰天、あわてて駆けつけたが第一幕に間に合わなかった」は「びっくり仰天」の形で、述語にかかる修飾語なり、「(誕生日)君をびっくりさせる物があるんだ」は「させる」が、「その着物はびっくりするほど安かった」は「する」が付いて、名詞にかかる修飾語になります。

また、「入社したばかりの頃はびっくりの連続だった」は名詞の用法、「この小説はまるでびっくりばこのように何が出てくるかわからない面白さがある」は「びっくり箱」の形で名詞を作りますよ。主体の予測のつかないことが突然起こったときなどに非常に驚くことを誇張して表し、あまり深刻なことについては用いません。なお「びくり」の強調形ですが、現在では恐怖・危惧などのために体(の一部)が一瞬痙攣する場合には用いません

「肝を消す」の対義語は?

「肝を消す」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

「ぽー」

「ぽー」は上気する様子を表しますよ。例えば「卵酒を飲んだらぽーっとしてきた」は「ぽーっとする」の形で、「あいつ、美人を見るとすぐぽーっとなるんだ」は「ぽーっとなる」の形で述語になりますし、「酸素吸入をすると頬にぽーっと赤みがさした」は「ぽーっと」の形で、「彼女はぽーっとしてアイドルに見とれていた」は「ぽーっとして」の形で述語にかかる修飾語になります前者は血行がよくなって顔に赤みがさし熱くなる様子を表しますし、後者は上気して心を奪われている様子を表し、快感・恍惚の暗示がありますよ。

この「ぽーっと」も「ぼーっと」に似ていますが、「ぽーっと」は不明瞭である様子を一般的に表すマイナスイメージの語で、対象を明瞭に把握できない主体の不快と慨嘆の暗示があります。したがって「彼女はぽーっとして舞台を見つめていた」は「まあ、なんて素敵なのかしら」、「彼女はぼーっとして舞台を見つめていた」は「あたしはなんでこんな所にいるのかしら」というニュアンスになりますよ。

「肝を消す」の英訳は?

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「肝を消す」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「肝を消す」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「be frightened out of one's wits」

「be frightened out of one's wits」は「驚きあわてる、気が転倒する、肝をつぶす、震え上がる」という意味です。「I be frightened out of one's wits when I heard about it」で「私はそのことを聞いて肝を消した」、「His be frightened out of one's wits suddenly gone」で「彼は突然の出来事に肝を消した」と書き表すことができますよ。

「肝を消す」を使いこなそう

この記事では「肝を消す」の意味・使い方・類語などを説明しました。「肝を消す」は危険を感じてぞっとする、ひやっとするという意味だと解説しましたね。なお「肝を消す」と似たような意味の表現に「涼しい」が挙げられます。「涼しい」は温度に関する基本的な形容詞の一つで気温が適度に低い様子を表します。「涼しい」は気温についてのみ用いられ、気温以外のものの温度が低い場合には「冷たい」を用いますよ。ただし「冷たい」には快感の暗示はなく客観的な表現になっているでしょう。「涼しい」の示す気温は適度に低くて快いというところにポイントがあり、絶対的な温度には一定の幅があります。また、必ずしも気温が低くない場合でも風邪などの影響で快く感じる場合には「涼しい」を用いることができますよ。

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【慣用句】「肝を消す」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「肝を消す」について解説する。
端的に言えば「肝を消す」の意味は「心配・配慮などで落ち着かぬ気分になる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「肝を消す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「肝を消す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「肝を消す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「肝を消す」の意味は?

「肝を消す」には、次のような意味があります。

1 「肝を潰(つぶ)す」に同じ。

「―・して周章(あわ)てて逃出そうとすると」〈魯庵・破垣〉

2 苦心する。心を尽くす。

「心をくだき、―・しけるところに」〈太平記・一一〉

出典:コトバンク

「肝を消す」は危険を感じてぞっとする、ひやっとするという意味の慣用句です

「肝を消す」の語源は?

次に「肝を消す」の語源を確認しておきましょう。それでは「肝」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「肝」は体を表す「月」とおおもとの意味の音を示す「干」とを合わせた字。体のおおもとであるところ、つまり「肝」「肝臓」を表します。

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