その3「おのおの」
「おのおの」はたくさんある同類のものの一つ一つの要素を表します。ややかたい文章語で、法律や通達など改まった文章中でよく用いられますよ。「おのおのが自分の責任をまっとうすることで組織は円滑にゆく」は名詞の用法、「一から三までのおのおのの項目を検討する」は名詞にかかる修飾語、「メンバーはおのおの弁当持参で参加した」は述語にかかる修飾語の用法です。人間について用いることが多いですが、物事について用いることも皆無ではありません。個々の要素を対等に均一に扱う暗示があります。
また、「おのおの」は「それぞれ」や「めいめい」に似ていますが、「それぞれ」は個々の要素にバラエティーのある暗示が、「めいめい」は個々の要素が一つ一つ独立している暗示がありますよ。そのため「生徒たちはおのおのばらばらの服装をしてきた」「切符はおのおのお持ちください」は誤用となり、正しくは「生徒たちはそれぞればらばらの服装をしてきた」「切符はめいめいお持ちください」となります。ちなみに「額を集める」との違いは、「おのおの」は個々の要素を対等に均一に扱う暗示があるという点です。
「額を集める」の対義語は?
「額を集める」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「てんでに」
「てんでに」は一人一人が独立している様子を表しますよ。例えば「みんながてんでに勝手なことを言うな」「園児たちは遊園地でてんでんに遊んでいる」などのように動作を表す述語にかかる修飾語になります。一人一人がそれぞれ異なることを独立して行う様子を困惑などの暗示を伴って表し、一人一人の間隔が物理的にも心理的にも離れている暗示がありますよ。なお、人間以外については用いられません。
また、「てんでに」は「めいめい」や「それぞれ」「おのおの」などに似ていますが、「めいめい」は独立した個々の要素が同等である暗示がありますし、「それぞれ」は個々の要素のバラエティーを暗示しますが、表現自体は客観的で特定の感情を暗示しません。そして、「おのおの」は個々の要素を対等に均一に扱う暗示があります。
そのため「てんでに遊ぶ」は「離れたところで違う遊びをする」、「それぞれ遊ぶ」は「違う遊びをする」というニュアンスになりますよ。個々の要素が完全に独立していて、共通点が見いだせないときには「てんでんばらばらに」を用います。
その2「ばらばら」
「ばらばら」は統一体が部分に分解される様子を表す表現。「桶はたがが外れてばらばら壊れた」は単独でまたは「と」が付いて、「大きな牛はバラバラに解体された」は「に」が付いて述語にかかる修飾語になります。
また、「(野球)この選手はフォームがばらばらですね」は「だ(です)」が付いて述語になりますし、「奥羽山中でバラバラ死体が発見された」は「バラバラ死体」の形で名詞を作りますよ。一個の統一体をなしている物が部分に分解される様子を表し、しばしば修復が不可能であるニュアンスで、不統一・破壊と話者の慨嘆の暗示があるでしょう。
「終戦の混乱で一家はてんでんばらばらになった」の「てんでんばらばら」は「ばらばら」の意味を強めた表現で、個々人が広範囲で個別に行動して合流しないという意味です。「バラバラ死体」は頭・手足・胴体などいくつかの部分に切断された死体という意味で、全体がまとまって一カ所にない暗示がありますよ。この「ばらばら」は「ぼろぼろ」に似ていますが、「ぼろぼろ」は破壊や損害の程度がはなはだしい様子を表し、不快・慨嘆・被害者意識・ダメージとしばしば修復不可能の暗示があります。
そのため「本がばらばらになった」は「表紙が取れ、本文もいくつかに分断された」、「本がぼろぼろになった」は「表紙がすりへり、ページが破れた」というニュアンスになりますよ。
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