この記事では「額を集める」について解説する。
端的に言えば「額を集める」の意味は「多人数が集まって相談する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「額を集める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「額を集める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「額を集める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「額を集める」の意味は?

「額を集める」には、次のような意味があります。

顔を寄せ合って相談する。集まって相談する。鳩首(きゅうしゅ)する。

出典:コトバンク

「額を集める」は複数の人が寄り集まって相談する、知恵を出し合うという意味の慣用句です

「額を集める」の語源は?

次に「額を集める」の語源を確認しておきましょう。それでは「額」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「額」は頭を表す「頁」と、毛を剃り落とす意味の音を示す「客」とを合わせた字。頭の髪の毛を剃り落として生え際を広くしたところ、つまり「ひたい」を表します。

「額を集める」の使い方・例文

「額を集める」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

\次のページで「「額を集める」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.各国の多数の研究者が額を集めて協議したが、解決策は容易に見つからなかった。

2.運営者達は人目を忍んで額を集めて互いに情報交換を行った。皆一つ穴の貉でも貧乏くじは引きたくないと、機能やサービスについて美辞麗句を並べ半ば人聞き良く語った。

3.健太は氷山の一角であることを百も承知だったが、グループの活性化のために独り相撲を演じた。

4.額を集めた不特定人の前で、引かれ者の小唄とばかりに実際は火の車でも一見左うちわのふりで、彼は独り舞台を極めた。

例文1からは知恵を出し合っても解決しないほどの難しい問題であることが読み取れますし、例文2からは騙し合い合戦が繰り広げられている様子が伺えます。また、例文3は仲間のために一肌脱ごうとしている様子が伝わってきますね。例文4は武士は食わねど高楊枝とはこのこと。

「額を集める」の類義語は?違いは?

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「額を集める」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「ことさら」

「ことさら」は意図的に行動する様子を表しますよ。「中学生は注意するとことさら悪いことをするものだ」は述語にかかる修飾語になりますし、「ことさらな言い訳はかえって逆効果だぞ」は名詞にかかる修飾語の用法です。その必要のないのに故意に行動を起こす点にポイントがあり、不必要と意図の暗示があるでしょう。「ことさら」は「わざわざ」や「あえて」に似ていますが、「わざわざ」は意図的に行う行為に大きな労力を伴うことを話者が推測するニュアンスがありますし、「あえて」は意図的に行う行為に好ましい結果を期待する暗示があります

そのため「俺がことさら就職を世話してやったのに、あいつは断りやがった」「作品の価値を知りつつことさら苦言を呈する」は誤用となり、正しくは「俺がわざわざ就職を世話してやったのに、あいつは断りやがった」「作品の価値を知りつつあえて苦言を呈する」となりますよ。ちなみに「額を集める」との違いは、「ことさら」は不必要と意図の暗示があるという点です。

その2「口々に」

「口々に」は複数の人が同じことをそれぞれ言う様子を表します。「団地の主婦たちはくちぐちに彼女の悪口を言った」「人々は少年の絵をくちぐちにほめそやした」などのように述語にかかる修飾語として用いられますよ。複数の人間が同一内容をそれぞれ言う点にポイントがあり、一人の人間が何度も言ったり、複数の人間が異なることを言ったり、また声をそろえて同時に言ったりする場合にはふつう用いられません

したがって「委員たちは口々に意見を言った」「学生たちは機動隊に帰れ、帰れと口々に怒鳴った」は誤用となり、正しくは「委員たちはめいめい(それぞれ)意見を言った」「学生たちは機動隊に帰れ、帰れと声を揃えて怒鳴った」となりますよ。なお「額を集める」との違いは、「口々に」は複数の人間が同一内容をそれぞれ言うという点です。

\次のページで「その3「おのおの」」を解説!/

その3「おのおの」

「おのおの」はたくさんある同類のものの一つ一つの要素を表しますややかたい文章語で、法律や通達など改まった文章中でよく用いられますよ。「おのおのが自分の責任をまっとうすることで組織は円滑にゆく」は名詞の用法、「一から三までのおのおのの項目を検討する」は名詞にかかる修飾語、「メンバーはおのおの弁当持参で参加した」は述語にかかる修飾語の用法です。人間について用いることが多いですが、物事について用いることも皆無ではありません個々の要素を対等に均一に扱う暗示があります

また、「おのおの」は「それぞれ」や「めいめい」に似ていますが、「それぞれ」は個々の要素にバラエティーのある暗示が、「めいめい」は個々の要素が一つ一つ独立している暗示がありますよ。そのため「生徒たちはおのおのばらばらの服装をしてきた」「切符はおのおのお持ちください」は誤用となり、正しくは「生徒たちはそれぞればらばらの服装をしてきた」「切符はめいめいお持ちください」となります。ちなみに「額を集める」との違いは、「おのおの」は個々の要素を対等に均一に扱う暗示があるという点です。

「額を集める」の対義語は?

「額を集める」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「てんでに」

「てんでに」は一人一人が独立している様子を表しますよ。例えば「みんながてんでに勝手なことを言うな」「園児たちは遊園地でてんでんに遊んでいる」などのように動作を表す述語にかかる修飾語になります。一人一人がそれぞれ異なることを独立して行う様子を困惑などの暗示を伴って表し、一人一人の間隔が物理的にも心理的にも離れている暗示がありますよ。なお、人間以外については用いられません

また、「てんでに」は「めいめい」や「それぞれ」「おのおの」などに似ていますが、「めいめい」は独立した個々の要素が同等である暗示がありますし、「それぞれ」は個々の要素のバラエティーを暗示しますが、表現自体は客観的で特定の感情を暗示しません。そして、「おのおの」は個々の要素を対等に均一に扱う暗示があります

そのため「てんでに遊ぶ」は「離れたところで違う遊びをする」、「それぞれ遊ぶ」は「違う遊びをする」というニュアンスになりますよ。個々の要素が完全に独立していて、共通点が見いだせないときには「てんでんばらばらに」を用います。

その2「ばらばら」

「ばらばら」は統一体が部分に分解される様子を表す表現。「桶はたがが外れてばらばら壊れた」は単独でまたは「と」が付いて、「大きな牛はバラバラに解体された」は「に」が付いて述語にかかる修飾語になります。

また、「(野球)この選手はフォームがばらばらですね」は「だ(です)」が付いて述語になりますし、「奥羽山中でバラバラ死体が発見された」は「バラバラ死体」の形で名詞を作りますよ。一個の統一体をなしている物が部分に分解される様子を表し、しばしば修復が不可能であるニュアンスで、不統一・破壊と話者の慨嘆の暗示があるでしょう。

「終戦の混乱で一家はてんでんばらばらになった」の「てんでんばらばら」は「ばらばら」の意味を強めた表現で、個々人が広範囲で個別に行動して合流しないという意味です。「バラバラ死体」は頭・手足・胴体などいくつかの部分に切断された死体という意味で、全体がまとまって一カ所にない暗示がありますよ。この「ばらばら」は「ぼろぼろ」に似ていますが、「ぼろぼろ」は破壊や損害の程度がはなはだしい様子を表し、不快・慨嘆・被害者意識・ダメージとしばしば修復不可能の暗示があります

そのため「本がばらばらになった」は「表紙が取れ、本文もいくつかに分断された」、「本がぼろぼろになった」は「表紙がすりへり、ページが破れた」というニュアンスになりますよ。

\次のページで「「額を集める」の英訳は?」を解説!/

「額を集める」の英訳は?

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「額を集める」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「額を集める」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「go into a huddle」

「go into a huddle」は「身を寄せ合う、額を寄せ合う、額を集める、鳩首協議」という意味です。「go into a huddle people and whisper to each other」で「額を集めてヒソヒソ相談する」、「go into a huddle and discussed the future」で「額を集めて今後について話し合った」と訳すことができますよ。

「額を集める」を使いこなそう

この記事では「額を集める」の意味・使い方・類語などを説明しました。「額を集める」は複数の人が寄り集まって相談する、知恵を出し合うという意味だと解説しましたね。また、多人数が集まって相談することから想像される、心情の程度・度合いが大きい様子を表す言葉に「厚い」があります。例えば「彼はキリスト教をあつく信仰している」「君への信任はあついよ」などのようにもちいられるややプラスイメージの語ですよ。参考にしてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「額を集める」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「額を集める」について解説する。
端的に言えば「額を集める」の意味は「多人数が集まって相談する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「額を集める」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「額を集める」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「額を集める」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「額を集める」の意味は?

「額を集める」には、次のような意味があります。

顔を寄せ合って相談する。集まって相談する。鳩首(きゅうしゅ)する。

出典:コトバンク

「額を集める」は複数の人が寄り集まって相談する、知恵を出し合うという意味の慣用句です

「額を集める」の語源は?

次に「額を集める」の語源を確認しておきましょう。それでは「額」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「額」は頭を表す「頁」と、毛を剃り落とす意味の音を示す「客」とを合わせた字。頭の髪の毛を剃り落として生え際を広くしたところ、つまり「ひたい」を表します。

「額を集める」の使い方・例文

「額を集める」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

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