
「たぶん」を使用する際のポイント
この「たぶん」は「おそらく」や「きっと」「どうやら」などに似ていますが、「おそらく」はややかたい文章語であらたまった発言などによく用いられ、ふつうあまり好ましくない事柄について「たぶん」よりも高い可能性での推量を表し、結果に対する危惧や疑問の暗示を伴いますし、「きっと」は話者が実現の可能性について確信をもっている様子を暗示し、「どうやら」は客観的な根拠に基づく判断を暗示します。
したがって「明日はたぶん雪だろう」は「そんな気がする」、「明日は恐らく雪だろう」は「電車が止まると困るな」、「明日はきっと雪だろう」は「だいぶ冷え込むから」というニュアンスになりますよ。なお「目星を付ける」との違いは、「たぶん」は客観的な根拠は暗示されないという点です。
その2「さては」
「さては」は真相を推量する様子を表し、「車まで用意して。さては逃げるつもりなんだろう」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。物事の原因や結果、相手の真意など、物事の真相について主観的に確信をもって推量する様子を表しますよ。「この辺が臭うけど、さては犯人はお前だな」は放屁の犯人を確信をもって推理しています。確信の程度はとても高いので、しばしば断定の表現と呼応しますよ。
「さては」は「たぶん」や「きっと」などに似ていますが、「たぶん」「きっと」は推量一般について用いられ、真相を推量する場合とは限りません。そのため「夕焼けがきれいだから、さては明日は晴れだな」は誤用となり、正しくは「夕焼けがきれいだから、たぶん(きっと)明日は晴れだな」となりますよ。ちなみに「目星を付ける」との違いは、「さては」はしばしば断定の表現と呼応するという点です。
その3「恐らく」
「恐らく」は可能性の高いことを推量する様子を表し、「神経痛の膝が痛いから明日はおそらく雨だろう」「来るなと言っても彼はおそらく来るだろう」などのように述語にかかる修飾語として用いられますが、「パパ、今日も遅いの?おそらくね」のように述語部分を省略することもあります。
また、述語部分には推量の表現を伴うことが多い。ややかたい文章語で、あらたまった会話などでは「たぶん」のかわりに用いられることも多いです。また、実現があまり好ましくない事柄について危惧の暗示を伴って推量する様子を表すことが多く、好ましい事柄の可能性を推量する場合には、ふつう「たぶん」「きっと」などを用います。
「恐らく」を使用する際のポイント
したがって「英語がいちばんできるのはおそらく藤井さんだ」は誤用となり、正しくは「英語がいちばんできるのはたぶん藤井さんだ」となりますよ。ただし、「たぶん」は「おそらく」より実現の可能性が低く、「きっと」は実現の可能性について確信をもっている様子が暗示されます。また、「おそらく」の表す可能性はとても幅があり、ほとんど確実なもの、十中六七のものなどがありますが、いずれも主観的な根拠に基づく可能性の推量であって、客観的な根拠を暗示しません。
この点で、客観的な根拠に基づいて判断する「どうやら」と異なります。そのため「天気予報によると明日はおそらく雪だろう」は誤用となり、正しくは「天気予報によると明日はどうやら雪らしい」となりますよ。なお「目星を付ける」との違いは、「恐らく」は危惧の暗示を伴って推量する様子を表す表現だという点です。
「目星を付ける」の対義語は?
「目星を付ける」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
「てんで」
「てんで」は考慮の及ぶ範囲外にある様子を表し、「彼女はてんで付き合ってくれなかった」「ママは僕の気持ちなんかてんでわかってない」などのように後ろに打消しの表現を伴う述語にかかる修飾語になります。くだけた表現で日常会話中心に用いられ、かたい文章中には登場しません。対象が最初から考慮の及ぶ範囲外にあってまったく問題にならないというニュアンスで、慨嘆・侮蔑などの暗示を伴います。
\次のページで「「てんで」を使用する際のポイント」を解説!/