端的に言えば人後に落ちないの意味は「他人に負けない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「人後に落ちない」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/八嶋弘毅
自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。
「人後に落ちない」の意味は?
「人後に落ちない」には、次のような意味があります。
他人に先を越されない。ひけをとらない。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「人後に落ちない」
「人後に落ちない」の「人後」の読み方は「じんご」で、他人の後ろあるいは他人と比較して立場が下位の位置にあることを表しています。ですから「人後に落ちない」は、他者と比べて自分が引けを取っていないことを意味しているのです。
誰でも自分の能力が誰か人より劣っていることを認めるのはイヤなことでしょう。それが例え仲のいい友人でもです。そうならないよう日常から努力を続けていれば、最後にはどのようなところでもトップになることは夢ではないでしょう。
「人後に落ちない」の語源は?
次に「人後に落ちない」の語源を確認しておきましょう。「人後に落ちない」は、中国・唐の時代の詩人・李白(りはく)が詠んだ「夜郎に流され辛判官(しんはんがん)に贈る」と題された詩が由来とされています。辛判官は、李白が若い頃一緒に過ごした辛という名の判官です。
この詩のなかで李白は「気岸(きがん)遥かに凌ぐ豪士(ごうし)の前風流肯(あ)へて落ちんや他人の後」と詠んでいます。意味のわからない言葉がいくつか出てきましたので、少し解説しましょう。「夜郎」とは中国大陸の西南にあった未開部族の国の名前です。判官はこの場合、唐王朝の地方官を指します。日本では九郎判官(くろうほうがん)と言えば源義経で有名ですね。「気岸」は気持ちがしっかりしていることをいい、また「豪士」は豪傑のことを意味しています。
李白が詠んだ詩をわかりやすく解説すれば「私の心意気は、勇ましい豪士をはるかに超え、風流を楽しむことも人後に落ちないのに」と、才能ある自らが、冤罪によって地方に左遷されてしまった悲哀を、友達の辛に訴えたものです。
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