この記事では「足蹴にする」について解説する。

端的に言えば足蹴にするの意味は「相手の価値を認めずひどい扱いをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

広告や書籍で13年の経験を積んだ現役校正者の朱月を呼んです。一緒に「足蹴にする」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/朱月

誤字脱字と日々格闘する、文学部出身の校正者。13年の校正経験を生かし、丁寧に解説する。

「足蹴にする」の意味や語源・使い方まとめ

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「足蹴にする」という言葉を聞いたことはありますか?中には、意味をよく知らないという人や「蹴るという字が入っているし、あまり良い意味ではないのかも?」と思う人もいるかもしれませんね。

それでは早速「足蹴にする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「足蹴にする」の意味は?

「足蹴にする」には、次のような意味があります。

1.〔人や動物を〕足でける。あしげをかける。「腹をー」
2.〔価値を認めず〕ひどいあつかいをする。「これまでの業績をー」

出典:三省堂国語辞典(三省堂)「足蹴にする」

1は文字通りの意味が載っていますね。人や動物(動物を蹴るのはあまり穏やかではありませんが)、ボールなどを蹴る時の「足蹴にする」です。慣用句としての「足蹴にする」は2の意味が強くなります。

古文の授業で「け・け・ける・ける・けれ・けよ」と、下一段動詞「蹴る」の活用を暗記したことはありませんか?「足蹴にする」で使われている「蹴」は、その「蹴る」の連用形「け」です。「足蹴りにする」と言いたくなる人もいるかもしれませんが、ここでの「蹴る」は五段活用の現代語「蹴る」ではありませんので、注意しましょう。

「足蹴にする」の語源は?

次に「足蹴にする」の語源を確認しておきましょう。

「足蹴」とは「足で蹴ること」であると、先ほど取り上げた辞書には載っています。「足蹴にする」は、もともとは人や動物、ボールや石などを蹴ることをさす言葉でした。そこから慣用表現の「ひどいあつかいをする」の意味に転じていったと考えられます。

「足蹴にする」の使い方・例文

「足蹴にする」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「足蹴にする」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.公園で子どもたちが野良犬を殴打したり足蹴にしたりしているのを見つけ、やめるように注意した。
2.せっかくの提案を仕事の取引相手に足蹴にされて、上司の面目は丸潰れだ。
3.就職活動で名門大学を出たことやこれまでの経験、資格などを懸命にアピールしたが、志望先の会社から足蹴にされた

例文1は「足蹴にする」のもとの意味から取り上げました。単に「足で蹴る」と言うよりも「足蹴にする」と言ったほうが、暴力の激しさ・むごさが伝わってくるようです。

例文2は、取引先に相手にしてもらえず上司のプライドがぼろぼろになってしまった、という悔しさが滲み出ています。例文3も同様に、こちらが必死にアピールしたにもかかわらずひどいあしらいを受けた、という残念な気持ちがうかがえますね。

「足蹴にする」の類義語は?違いは?

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ここからは、「足蹴にする」の類義語を見ていきましょう。

「足で蹴る」

「足蹴にする」をわかりやすく言い換えた言葉としては、まずこの言葉が挙げられるのではないでしょうか。文字通り、「足で蹴る」という意味ですね。先ほど取り上げた例文1を言い換えてみましょう。

公園で子どもたちが野良犬を殴ったり足で蹴ったりしているのを見つけ、やめるように注意した。

「足蹴にする」を「足で蹴る」に言い換えたため、「殴打する」も「殴る」に置き換えました。漢語的な表現である「殴打」「足蹴」を言い換えたことで、殴る蹴るの強さやニュアンスが若干異なって感じられるのではないでしょうか。

\次のページで「「鼻であしらう」」を解説!/

「鼻であしらう」

「鼻であしらう」は「鼻先であしらう」ともいいます。「相手にまともに取り合わず、冷たく扱う」という意味です。

次回の特集記事の企画案を提出したが、編集長に鼻であしらわれた

「足蹴にする」と同様、「鼻であしらう」も「相手を冷たく扱う・つれなくする・ひどい仕打ちをする」というニュアンスで用いられる言葉です。「足蹴にする」の例文2でも挙げましたが、こちらが必死に準備して提案すればするほど、相手にすげなくされた時のショックやダメージは大きくなります。

「足蹴にする」の対義語は?

それでは、「足蹴にする」の対義語にはどのような言葉があるのでしょうか。早速見ていきましょう。

「厚遇する」

「厚遇(こうぐう)する」とは、「相手を手厚くもてなすこと」という意味です。また、「地位や給料など十分な待遇をする」という意味もあります。「足蹴にする」は相手を冷たく遇すること(=冷遇)ですから、その反対は「厚遇」となるわけですね。

1.若手の中でトップの営業成績をあげている女性社員は、訪問した取引先で厚遇された
2.自分のスキルが通用するか不安だったが、志望先の会社から思いもかけない厚遇を受けた

例文1では、訪問した社員を相手が手厚くもてなすという意味で使っています。

例文2は、転職活動などで聞かれるフレーズかもしれませんね。自分で思っていた以上の待遇で迎えてもらえることになり、嬉しそうな様子が伝わってきます。

\次のページで「「足蹴にする」の英訳は?」を解説!/

「足蹴にする」の英訳は?

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ここからは、「足蹴にする」の英訳を見ていきましょう。どのような言葉があるのでしょうか。

その1「give a kick」

「give a kick」は「足で蹴る」「足蹴にする」という意味です。「kick」一語でも同様の意味で使われます。

その2「treat … roughly」

「roughly」は「乱暴に、手荒に、粗雑に」という意味です。「treat … roughly」で「…を雑に扱う」という意味になります。

その3「treat … coldly」

「coldly」は、「冷たく、冷ややかに」という意味です。「treat … coldly」で直訳すると「…を冷たく扱う」となり、「…を冷遇する」という意味になります。

「足蹴にする」を使いこなそう

この記事では「足蹴にする」の意味・使い方・類語などを説明しました。ここで取り上げた類義語以外にも、「冷たくあしらう」「つれなくする」「袖にする」など、同様の意味や似たニュアンスを持つ言葉は意外と多くあります。興味のある方はぜひ辞書などで調べてみてください。対義語もあわせて覚えておくと、語彙力を上げることができるのでおすすめですよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「足蹴にする」の意味や使い方は?例文や類語を校正者がわかりやすく解説!

この記事では「足蹴にする」について解説する。

端的に言えば足蹴にするの意味は「相手の価値を認めずひどい扱いをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

広告や書籍で13年の経験を積んだ現役校正者の朱月を呼んです。一緒に「足蹴にする」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/朱月

誤字脱字と日々格闘する、文学部出身の校正者。13年の校正経験を生かし、丁寧に解説する。

「足蹴にする」の意味や語源・使い方まとめ

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「足蹴にする」という言葉を聞いたことはありますか?中には、意味をよく知らないという人や「蹴るという字が入っているし、あまり良い意味ではないのかも?」と思う人もいるかもしれませんね。

それでは早速「足蹴にする」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「足蹴にする」の意味は?

「足蹴にする」には、次のような意味があります。

1.〔人や動物を〕足でける。あしげをかける。「腹をー」
2.〔価値を認めず〕ひどいあつかいをする。「これまでの業績をー」

出典:三省堂国語辞典(三省堂)「足蹴にする」

1は文字通りの意味が載っていますね。人や動物(動物を蹴るのはあまり穏やかではありませんが)、ボールなどを蹴る時の「足蹴にする」です。慣用句としての「足蹴にする」は2の意味が強くなります。

古文の授業で「け・け・ける・ける・けれ・けよ」と、下一段動詞「蹴る」の活用を暗記したことはありませんか?「足蹴にする」で使われている「蹴」は、その「蹴る」の連用形「け」です。「足蹴りにする」と言いたくなる人もいるかもしれませんが、ここでの「蹴る」は五段活用の現代語「蹴る」ではありませんので、注意しましょう。

「足蹴にする」の語源は?

次に「足蹴にする」の語源を確認しておきましょう。

「足蹴」とは「足で蹴ること」であると、先ほど取り上げた辞書には載っています。「足蹴にする」は、もともとは人や動物、ボールや石などを蹴ることをさす言葉でした。そこから慣用表現の「ひどいあつかいをする」の意味に転じていったと考えられます。

「足蹴にする」の使い方・例文

「足蹴にする」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「足蹴にする」の類義語は?違いは?」を解説!/

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