
端的に言えば露ほどもは「全く」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「露ほども」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/柊 雅子
イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。公園でよちよち歩きの子供を見て「このくらいの子は人を疑うことなんて露ほどもないんだろうなぁ」と思ったという。そんな彼女が「露ほども」について解説する。
「露ほども」の意味は?
「露ほども」には、次のような意味があります。
1.少しも。ちっとも。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「露ほども」
太陽の光を反射してキラキラと輝く露は極小さい水滴ですが、とても美しいものです。露は小さな宝石のように美しいのですが、直ぐに消えてなくなるはかないものでもありますね。そう思うのは私たちだけではありません。万葉の時代から「露」は「はかないもの」として歌に詠まれてきました。
朝露に 咲きすさびたる 月草の 日くたつなへに 消ぬべく思ほゆ
万葉集 詠人知らず
訳は「キラキラとした朝露を身にまとい咲き誇る月草(つゆくさ)が、日が傾くにつれて(時間が経つにつれて)しぼむように、私の心も消えてしまいそうだと自然と思えてしまいます」となります。恋しい人を待つ女心を詠んだ歌ですね。
そんなはかなくて美しい露はどうしてできるのでしょう。露は夜の温度差によって生まれます。地面の温度が急激に低くなると地表近くの空気が冷やされ、空気中の水蒸気が水滴に形を変えるのですね。その水滴が植物等についたものが露なのです。
「露ほども」の語源は?
次に「露ほども」の語源を確認しておきましょう。
「露」は空気中の水蒸気が水にその姿を変えたもの。「水」とはいっても、喉を潤したり、植物を育てるまでには至りませんね。温度差によって生まれる「露」はとても小さいもの。そして小さいために、すぐに蒸発して消えてなくなってしまうもの。その小ささ、はかなさから「少しも」「ちっとも」を表現する言葉になったのですね。
「露ほども」の使い方・例文
「露ほども」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.私の説明に疑問をもたれるのでは無いかと心配したが、彼女は私のことを露ほども疑わなかった。
2.彼は元々家事全般をそつなくこなすタイプだったので、周囲の人たちは奥さんが入院したことなど露ほども知らなかった。
3.彼は今迄自分に対する評価など露ほども気にしなかったが、今回は違っていた。
「露ほども」は「すこしも」「ちっとも」という意味でしたね。
例文1:「私」の説明には「疑問をもたれるような何か」が隠されていたのですが、「彼女」は全くそのことに気付かず「私」のことを少しも疑わなかったという状況を表した文章です。
例文2:諸事情により奥さんがその家からいなくなるとご近所さんたちの間で「あそこの奥さん、最近見ないわねぇ」と立ち話で話題になったりします。どうしてそうになるかというと、「買い物に行く」「洗濯物干す」「ゴミを出す」と家事をこなす奥さんを見かけなくなるからです。ところが旦那さんも日頃から家事全般をこなしていると、奥さんの姿が見えなくても不思議ではありません。なので周囲の人たちはおくさんが入院したことを全く知らないということになるのです。
例文3:「自分に対する評価など露ほども気にしなかった」ということは「自分の評価など、全く気にしなかった」ということですね。しかしそれは「今までの話」。今回は「評価を気にする何らかの理由が彼にはあった」ということですね。
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