理科生物細胞・生殖・遺伝

「ブルース効果」って知ってる?生殖にかかわる現象を現役講師が解説します

それがですね、つい最近、ブルース効果を引き起こす原因と考えられる物質の一つが見つかったのです!せっかくですので、簡単に内容を紹介させていただきたいと思います。

2017年に発表された、東京大学や麻布大学がつくる研究グループの成果です。以下にご紹介する研究成果・情報は、次の論文を参考にしています。

Hattori T., Osakada T., Masaoka T., Ooyama R., Horio N., Mogi K., Nagasawa M., Haga-Yamanaka S., Touhara K., Kikusui T. Exocrine Gland-Secreting Peptide 1 Is a Key Chemosensory Signal Responsible for the Bruce Effect in Mice. Current Biology. 2017;27:3197–3201.e3. doi: 10.1016/j.cub.2017.09.013.

ブルース効果を引き起こす原因の一つは”フェロモン”

結論からいうと、ブルース効果を引き起こす原因物質として特定されたのはESP1とよばれる分子でした。

ESP1はオスのマウスが体から分泌する物質。はじめに出会ったオスと交尾を終えていたメスのマウスが、はじめのオスとはESP1の分泌量が異なるオス(異なる系統のオスマウス)と出会うと、ブルース効果が引き起こされるということが分かったのです。

image by iStockphoto

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なるほどな。ESP1という物質が、妊娠したマウスの身体に何らかの影響を与えたということになるんだろうか?

妊娠したマウスをESP1に曝露すると、そのマウスの体内ではプロラクチンというホルモンの分泌量増加が抑えられるということも分かったのです。

プロラクチンは、受精卵の着床が起きるときに分泌量が増加するホルモンで、妊娠から出産の過程に重要な役割を担っています。この変化が、マウスの妊娠中断に影響しているのでしょう。

ただし、ESP1以外の要因がブルース効果に関わっている可能性も考えられます。あくまでESP1は「原因の”一つ”」と言及されているようです。

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ちなみに、このESP1のように生物の体から分泌され、同種の別個体に何らかの影響を与えるような物質はフェロモンとよばれます。

フェロモンは色々な動物で発見されており、特に昆虫などの分野で研究が盛んです。仲間を集めたり、助けを求めるなど、仲間同士での情報伝達にも使われています。哺乳類でも多様なフェロモンが見つかっていますが、「相手を流産させる」という劇的な効果を発揮するESP1は、かなり特殊な存在といってよいでしょう。

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ブルース効果やESP1などの研究がさらに進み、より詳しいメカニズムが分かるようになれば、また新たな発見があるかもしれないな。妊娠・出産・流産といった生命現象は、生物の根幹にかかわる重要なものだ。さらなる研究の発展を期待したい。

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yu_onozuka