この記事では「一寸の光陰軽んずべからず」について解説する。

端的に言えば一寸の光陰軽んずべからずの意味は「少しの時間も無駄にするな」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一寸の光陰軽んずべからず」の意味は?

「一寸の光陰軽んずべからず」には、次のような意味があります。

わずかな時間もむだにしてはならない。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「一寸の光陰軽んずべからず」

「一寸の光陰軽んずべからず」「一寸」とはほんのわずかということで、ごく短いことを表しています。「光陰」の読み方は「こういん」で、時間や年月のことです。「光」は昼または日、「陰」は夜、月とも例えることができるでしょう。つまり「一寸の光陰」で流れゆくわずかな時間のことをいい、「一寸の光陰軽んずべからず」という故事成語は、そのちょっとした時間も大切にしなければいけないという戒めの言葉なのです。

「一寸の光陰軽んずべからず」の語源は?

次に「一寸の光陰軽んずべからず」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国南宋の儒学者・朱熹(朱子)作の漢詩『偶成(ぐうせい)』が由来と言われています。しかし朱熹の詩文集にこの作品を見つけることはできません。

ところが明治時代になって日本の漢文教科書に掲載され、この言葉が朱熹の作として広く一般に知られるようになり、以後それが踏襲されるようになったとのことです。この言葉は「少年老いやすく学なり難し」の文章に続く言葉として有名で、人生訓の一つとされています。

「一寸の光陰軽んずべからず」の使い方・例文

「一寸の光陰軽んずべからず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

\次のページで「「一寸の光陰軽んずべからず」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.一寸の光陰軽んずべからずって言うだろう。ゲームばかりしていないで少しは勉強をしなさい。
2.彼は大学生時代に夜を日に継いで研究に打ちこんだ結果を論文に執筆した結果、学位を取得することができた。まさに一寸の光陰軽んずべからずだ。
3.近年国内でもスマホで暇つぶしをする中学生が増えてきた。一寸の光陰軽んずべからずと言うから、もっと学問に集中するよう注意しなさい。

最近はスマホゲームが人気で、それが勉強に悪影響を与えるようになってきました。人生の大事な時期に、このように生活の多くの時間をゲームに費やしていては、大切な時間を無駄に過ごすことになってしまいます。「一寸の光陰軽んずべからず」を座右の銘にして、一度しかない青春を有意義に過ごしてもらいたいものです。

「一寸の光陰軽んずべからず」の類義語は?違いは?

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ここでは「一寸の光陰軽んずべからず」の類義語を見ていきましょう。

その1「時は金なり」

「時は金なり」はアメリカ建国の父としても知られるベンジャミン・フランクリンの言葉として有名です。彼は気象学にも深い関心を持ち、台風や竜巻の発生原因についても貴重な解釈を残しています。

ベンジャミン・フランクリンの著書『自伝』には13の徳目が記され、そのなかの「5.自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ」「6.時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし」の二つから「時は金なり」の金言ができたのではないでしょうか。

その2「歳月人を待たず」

「歳月人を待たず」は中国の東晋末から南朝宋時代の文学者・陶淵明(とうえんめい)の『雑詩』からの言葉とされています。意味は「歳月は人の都合にかまわず、どんどん過ぎ去っていく。そのように時のたつのは早いから時間を無駄にしないで励みなさい」と解釈すればいいでしょう。

詩の文脈から「励む」「楽しみに励む」と考えられていますが、今日では「年月の過ぎ去るのが早い」の部分だけが強調されて、「楽しみに」という意味で使われることはまずありません。陶淵明は29歳頃から数回仕官しましたが、すぐに辞めて、以後故郷で隠棲生活を送ったとされています。

その3「少年老い易く学成り難し」

「少年老い易く学成り難し」「一寸の光陰軽んずべからず」の前にある文章で、「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」で一文になります。つまり「若いと思っていてもすぐに年老いてしまう。それに対して学問はなかなか思うようには進まない」との意味を受けて「一寸の光陰軽んずべからず」と語っているのです。従って「一寸の光陰軽んずべからず」を強調する言葉ですから「一寸の光陰軽んずべからず」の類義語と言えます。

\次のページで「その4「芸術は長く人生は短し」」を解説!/

その4「芸術は長く人生は短し」

「芸術は長く人生は短し」は、古代ギリシャの医師ヒポクラテスが、医術を志す人に対していった言葉と言われています。つまりもともとは「芸術」ではなく「医術」のことでした。「医術を身につけるには長い年月を必要とするが、人の一生は短いから怠けずに勉学に励め」と弟子を励ました言葉と考えられるのが一般的です。

「一寸の光陰軽んずべからず」の対義語は?

次に「一寸の光陰軽んずべからず」の対義語を見ていきましょう。

その1「馬齢を重ねる」

「馬齢を重ねる」とは、これといった実績も残さずいたずらに歳を重ねることで、自分のことを謙遜して使う言葉です。「馬齢」は「馬の年齢」のことですが、馬は農作業で人の役に立ったり競馬で多くの人を楽しませてくれます。それなのになぜ「馬齢を重ねる」などと、無駄に生きているような状態に形容させることになったのでしょうか。

それは「犬馬」という言葉にあるようです。犬や馬は人に使われるものであり、卑しいものとされています。そこから自分のことをへりくだって「馬齢」と言うようになりました。

その2「一日延ばしにする」

「一日延ばしにする」とは、するべきことがあるのになにやかやと理由をつけて、いたずらに期限を延ばすことです。まさに「一寸の光陰軽んずべからず」の対義語と言えるでしょう。明治時代の翻訳家・上田敏(びん)の言葉に「一日延ばしは時の盗人である」との言葉があります。物事を先送りすることはなんら問題の解決にならず、ただ時間を浪費しているだけという意味です。時間を浪費することを「時間泥棒」と表現したものと思われます。

その3「惰眠を貪る」

「惰眠(だみん)」とは「怠けて眠る」ことです。つまり「惰眠をむさぼる」は怠けて眠ることで、転じてなにもしないで怠けている様子を表しています。

「一寸の光陰軽んずべからず」の英訳は?

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最後に「一寸の光陰軽んずべからず」の英訳を見ていきましょう。

その1「every moment is precious」

「every moment is precious」「一瞬一瞬が貴重である」という意味です。「moment」「瞬間」「precious」「貴重」を表しています。この言葉は「時は金なり」の英語訳「Time is money」に通じるものがあるのではないでしょうか。

\次のページで「その2「make hay while the sun shines」」を解説!/

その2「make hay while the sun shines」

「make hay while the sun shines」とは「晴れているうちに干し草をつくれ」という意味で、「好機を逃すな」との英語のことわざです。牧草は秋に刈り取り、冬に備えます。しかしイギリスは天候が変わりやすいことから、晴れているうちにすぐに草を干さなければいけません。つまり、チャンスを逃すことなく早め早めに行動しなさいと言っているのです。

その3「nothing is more precious than time」

「nothing is more precious than time」「時間ほど貴重なものはない」という意味です。だからこそわずかの時間も無駄にすることなく、やるべきことに励みなさいと言っているのでしょう。これも「Time is money」とよく似た言葉です。

「一寸の光陰軽んずべからず」を使いこなそう

この記事では「一寸の光陰軽んずべからず」の意味・使い方・類語などを説明しました。似た言葉としてほかにも「時は金なり」「歳月人を待たず」などたくさんあります。このように時間が大切だとする考え方は、洋の東西を問わず表現の仕方は違えどいろいろと存在しているようです。昔から多くの人が時間を大切なものと考えていたことがわかります。特に若い人には無限の可能性が広がっていることでしょう。寸暇を惜しまず、何事にも熱心に打ちこんでもらいたいものです。

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【故事成語】「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「一寸の光陰軽んずべからず」について解説する。

端的に言えば一寸の光陰軽んずべからずの意味は「少しの時間も無駄にするな」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一寸の光陰軽んずべからず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一寸の光陰軽んずべからず」の意味は?

「一寸の光陰軽んずべからず」には、次のような意味があります。

わずかな時間もむだにしてはならない。

出典:明鏡国語辞典第三版(大修館書店)「一寸の光陰軽んずべからず」

「一寸の光陰軽んずべからず」「一寸」とはほんのわずかということで、ごく短いことを表しています。「光陰」の読み方は「こういん」で、時間や年月のことです。「光」は昼または日、「陰」は夜、月とも例えることができるでしょう。つまり「一寸の光陰」で流れゆくわずかな時間のことをいい、「一寸の光陰軽んずべからず」という故事成語は、そのちょっとした時間も大切にしなければいけないという戒めの言葉なのです。

「一寸の光陰軽んずべからず」の語源は?

次に「一寸の光陰軽んずべからず」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国南宋の儒学者・朱熹(朱子)作の漢詩『偶成(ぐうせい)』が由来と言われています。しかし朱熹の詩文集にこの作品を見つけることはできません。

ところが明治時代になって日本の漢文教科書に掲載され、この言葉が朱熹の作として広く一般に知られるようになり、以後それが踏襲されるようになったとのことです。この言葉は「少年老いやすく学なり難し」の文章に続く言葉として有名で、人生訓の一つとされています。

「一寸の光陰軽んずべからず」の使い方・例文

「一寸の光陰軽んずべからず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

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