端的に言えば風の吹き回しは「その時次第」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「風の吹き回し」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/柊 雅子
イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。「どうした風の吹き回しか…」ということも起こらない単調な毎日を送っているという彼女が「風の吹き回し」について解説する。
「風の吹き回し」の意味は?
「風の吹き回し」には、次のような意味があります。
1.その時々の模様しだいで一定しないことにいう。その時々の加減。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「風の吹き回し」
風はどうして吹くのでしょう。
風は空気が動くことによって生まれます。温められた空気は軽くなって上昇し、上昇した空気は冷やされ重くなって下降するのです。この空気の動きが風。そして風は地形やその時の気圧配置、海水温等の影響を受け変化します。天気予報で風向きを示す矢印が刻々と変化していくのを見ても「風とは定まらないもの」ということがわかるでしょう。何者にも縛られず吹き渡る風。風は自由の象徴です。
聞くやいかに 上の空なる 風だにも 松に音する ならひありとは
宮内卿
これは古今和歌集に収められている歌。「(あなたは)お聞きになっていますか、どうですか。上空を吹く気まぐれな風でも(待っている)松を訪れて音をたてることが世の常なのですよ」…「気まぐれな風でも松を訪れるのに、あなたはいらっしゃらない」…いくら待っても自分に逢いに来てくれない恋人を恨めしく思って詠んだ歌ですね。つれない恋人をどんな風に吹いてくるかわからない気まぐれな風に重ねて表現していますね。
「風の吹き回し」の語源は?
次に「風の吹き回し」の語源を確認しておきましょう。
「風の吹き回し」は主に「どうした風の吹き回しで」という慣用句として用いられます。
一般的に勝手気ままに吹くのが風。家の前に「これって…どこから飛ばされて来たんだろう」と思うような物が落ちていることがありますが、これが「風の吹き回し」によって起こることです。つまり「どうしてこうなったのかはわからないが、とにかくこうなっている」ということですね。
「風の吹き回し」の使い方・例文
「風の吹き回し」の使い方を例文を参考にして見ていくのですが、「風の吹き回し」は主に「どうした風の吹き回し」という表現で用いられます。そこでここでは「どうした風の吹き回し」という慣用句についてみていくことにしましょう。
1.「絵画に全く興味のないあなたが『琳派展へ行こう』って…どうした風の吹き回し?」と彼女は言った。
2.妻の誕生日に花束を買って帰ったら、「こんなこと、してくれたことがなかったのにどうした風の吹き回し?…何か…怪しい…」と言われてしまった。
3.普段は難しい顔をして歩いている老人が、どうした風の吹き回しかニッコリ笑って挨拶してくれたのでびっくりした。
例文1:「琳派」とは安土桃山時代に始まり、江戸中期に尾形光琳等が大成した絵画の一流派。尾形光琳は「紅白梅図屏風」「燕子花図屏風」等、教科書に掲載されているような有名な作品が沢山ありますね。「絵画に全く興味がなかったあなたが、美術展へ行こうなんて、どうしてそんなことを言い出すようになったのか」ということを表している文章ですね。
例文2:普段しないことをすると言われるのが「どうした風の吹き回し」という慣用句。日本人が女性に花束をプレゼントすることはあまりありませんね。私でも夫に花束をもらったりしたら、それが誕生日プレゼントだったとしても「何かやらかしたのか…」と疑ってしまいます。
例文3:「当然こうなるだろう」という予測がはずれたら、驚きますよね。「不機嫌な顔をして絶対挨拶してくれない」と思っていた人がニッコリ笑って、向こうから挨拶してくれたら不意打ちをくらったように、「どうしてこうなったんだ、何が起こったんだ」と思ってしまいますね。
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