特別進学クラスの生徒には、「たまにはハメを外して思いっきり休め!」って言ってるんです。受験勉強は長い時間のかかる勝負です。ずっとエンジンをかけたままだと疲れ切っちまう。ただ、アイツら馬鹿みたいに真面目だからなぁ。あんまりハメを外さないんだよなぁ。

ひょっとしたら「ハメを外す」の意味が分かっていないのかもな。ということで、今回はその「ハメを外す」の意味や語源、類義語などを院卒日本語教師の"むかいひろき"に解説してもらうぞ!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「ハメを外す」の意味や語源は?

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「ハメを外す」という言葉、見聞きしたり実際に使ったりしたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、詳しい意味や語源はあまり知られていない言葉かもしれません。まずは、その「ハメを外す」の意味と語源に迫っていきましょう。

「ハメを外す」の意味は「調子に乗って限度を超える」

最初に、「ハメを外す」の辞書での意味を確認していきましょう。「ハメを外す」は国語辞典には次のような意味が掲載されています。(辞書では「羽目を外す」と漢字表記で掲載されている場合が多いです。)

規律や束縛から抜け出して、思うように振る舞う。調子に乗って度を過ごす。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆羽目を外(はず)す」

「ハメを外す」は、規則や束縛から解放されて自分の思い通りに振る舞うことによって、「調子に乗って限度を超える」という意味を表す慣用表現です。宴会でお酒に乗って調子に乗りすぎた行動をしてしまった場合や、旅行先で普段であればしないような行動をとった時などに使用されます。

「ハメを外す」の語源は馬!

この「ハメを外す」の語源となっているのはです。「ハメ」という単語は漢字で表記すると「羽目」ですが、この「羽目」は元々は「馬銜(はめ)」だったと考えられています。

「馬銜」は馬を操る手綱をつけるために口にくわえさせる金具です。この「馬銜」が馬の口から外れると、手綱で馬を制御することが不可能になります。このことから、「限度を超える」という意味で「ハメを外す」が使われるようになったと考えられていますね。

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「ハメを外す」の使い方を例文とともに確認!

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次に、「ハメを外す」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「ハメを外す」は「調子に乗って限度を超える」という意味から、マイナスのニュアンスのみで使用されると考える人もいるかもしれませんが、他者に休息を促す時や解放感に浸ろうとするときなど、マイナスのニュアンス以外でも多く使用されます。

1.真面目に仕事に取り組むのは大切だが、それ以上にたまにはハメを外して思いっきり遊ぶのも大切だ。
2.今日は修学旅行の2日目。昨日の夜にハメを外して一睡もせずにカードゲームをしていたせいで、とても眠い。
3.明日から夏休みです。ハメを外しすぎないようにしてくださいね!

例文1では、「たまには仕事のことを忘れて何も考えずに思いっきり遊ぶのも大切」という文脈で「ハメを外す」が使用されています。普段真面目に頑張っている人は、どこかで少しくらい規則に縛られずに限度を超えた行動、「ハメを外した」行動が必要でしょう。

例文2では、「調子に乗りすぎて一睡もせずに」という文脈で「ハメを外す」が使用されています。修学旅行のような宿泊学習では、多少「ハメを外し」てしまってこそ、思い出に残ると言えますよね。

例文3では、「夏休みだからといって夜更かしなど、調子に乗りすぎないように」という文脈で「ハメを外す」が使用されています。「調子に乗りすぎるな」「限度を超えるな」という意味で使用する場合、「ハメを外すな」ではなく「ハメを外しすぎるな」という形になることが多いです。

「ハメを外す」の類義語は?

次に、「ハメを外す」の類義語を確認していきましょう。「ハメを外す」の類義語は「図に乗る」「はっちゃける」「タガを外す」です。意味を確認し、「ハメを外す」との比較を行っていきます。

「図に乗る」:調子に乗ってつけあがる

「図に乗る」は「調子に乗ってつけあがる」という意味の慣用表現です。調子に乗って限度を超えてしまうというニュアンスは、「ハメを外す」と同じですね。ただ、「図に乗る」はほぼ必ずマイナスのニュアンスで使用されます。「調子に乗っていい気になっている」「調子に乗りすぎるな」という文脈で使用されることが多いです。

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「はっちゃける」:いつもより騒いだりふざけたりする

「はっちゃける」は「いつもより騒いだりふざけたりする」という意味の慣用表現です。普段よりも解放的に行動することを意味する点では、「ハメを外す」と似ていますね。ただ「ハメを外す」と異なり、「はっちゃける」には「限度を超える」というニュアンスはありません

「タガを外す」:規律や束縛から抜け出して、奔放にふるまう

「タガを外す」は「規律や束縛から抜け出して、奔放にふるまう」という意味の慣用表現です。ここまで紹介した類義語の中で、最も「ハメを外す」と意味やニュアンスが近い表現ですね。「タガを外す」の方が「規律や束縛から逃れる」というニュアンスがやや強く出ます

この「タガ」は「箍」と書き、桶や樽などの外側にはめて締めるための輪のことです。これが外れると、桶や樽の中身が漏れやすくなってしまいます。このことから「行動を抑制していたものがなくなる」というニュアンスを持つようになったと考えられていますね。

「ハメを外す」の英語表現は?

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最後に、「ハメを外す」の英語表現を確認していきましょう。もちろん「ハメを外す」を頑張ってそのまま直訳しても通じません。「ハメを外す」の英語表現は「cut loose」です。意味と例文を確認していきます。

「cut loose」:解放されて思いっきり楽しむ

「cut loose」は「何かから解放されて思いっきり楽しむ」という意味を持った英語表現です。カジュアルな表現で、Twitterやその他のSNSでもよく使われている表現ですね。「ハメを外す」とは「限度を超える」というニュアンスがないところが違いとなりますが、英語で最も「ハメを外す」に近い意味を表すのはこの「cut loose」です。例文を見てみましょう。

1.I’m on vacation today. It’s time to cut loose.
今日は休日。ハメを外すための時間だ!

2.Don't cut loose because it's summer vacation.
夏休みだからといって、ハメを外さないでね!

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ハメの外しすぎには気をつけましょう!

今回は「ハメを外す」について解説しました。「ハメを外す」は、規則や束縛から解放されて自分の思い通りに振る舞うことによって、「調子に乗って限度を超える」という意味を表す慣用表現です。馬をコントロールするための手綱をつけるために口にくわえさせる道具「馬銜(はめ)」が元になってできた言葉だと考えられています。

時にはハメを外すことは大切です。ただ、外しすぎると後から面倒なことになるので、ほどほどにしましょう!

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国語言葉の意味

「ハメ」って何?馬が語源!?「ハメを外す」の意味や類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

特別進学クラスの生徒には、「たまにはハメを外して思いっきり休め!」って言ってるんです。受験勉強は長い時間のかかる勝負です。ずっとエンジンをかけたままだと疲れ切っちまう。ただ、アイツら馬鹿みたいに真面目だからなぁ。あんまりハメを外さないんだよなぁ。

ひょっとしたら「ハメを外す」の意味が分かっていないのかもな。ということで、今回はその「ハメを外す」の意味や語源、類義語などを院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうぞ!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「ハメを外す」の意味や語源は?

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「ハメを外す」という言葉、見聞きしたり実際に使ったりしたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、詳しい意味や語源はあまり知られていない言葉かもしれません。まずは、その「ハメを外す」の意味と語源に迫っていきましょう。

「ハメを外す」の意味は「調子に乗って限度を超える」

最初に、「ハメを外す」の辞書での意味を確認していきましょう。「ハメを外す」は国語辞典には次のような意味が掲載されています。(辞書では「羽目を外す」と漢字表記で掲載されている場合が多いです。)

規律や束縛から抜け出して、思うように振る舞う。調子に乗って度を過ごす。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆羽目を外(はず)す」

「ハメを外す」は、規則や束縛から解放されて自分の思い通りに振る舞うことによって、「調子に乗って限度を超える」という意味を表す慣用表現です。宴会でお酒に乗って調子に乗りすぎた行動をしてしまった場合や、旅行先で普段であればしないような行動をとった時などに使用されます。

「ハメを外す」の語源は馬!

この「ハメを外す」の語源となっているのはです。「ハメ」という単語は漢字で表記すると「羽目」ですが、この「羽目」は元々は「馬銜(はめ)」だったと考えられています。

「馬銜」は馬を操る手綱をつけるために口にくわえさせる金具です。この「馬銜」が馬の口から外れると、手綱で馬を制御することが不可能になります。このことから、「限度を超える」という意味で「ハメを外す」が使われるようになったと考えられていますね。

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