この記事では「一糸乱れず」について解説する。

端的に言えば一糸乱れずの意味は「整っていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員ライターのminを呼んです。一緒に「一糸乱れず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターとして活動中。

「一糸乱れず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一糸乱れず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一糸乱れず」の意味は?

「一糸乱れず」には、次のような意味があります。

一糸乱れぬ
読み方:いっしみだれぬ

寸分たりとも乱れやずれがなく、ぴったり揃っているさま。「一糸乱れず」とも言う。

出典:実用日本語表現辞典 「一糸乱れず」

いっしみだれぬ」と読み、「秩序が整って少しも乱れていないさま」や「少しも乱れず整然としているさま」を表します。

後ろに名詞を伴うときは「一糸乱れぬ動き」という言い方になり、「彼らの動きは一糸乱れず、きれいだ」など句読点の直前にくる場合は「一糸乱れず」を使うというように使い分けましょう。

「一糸乱れず」の語源は?

次に「一糸乱れず」の語源を確認しておきましょう。

「一糸」は文字通り「一筋の糸」という意味をもともと持っていました。そこから転じて、「きわめてわずかなな物事のたとえ」として使われたり、「糸」という単位として数える1つ分を意味したりするようになりました。

「一糸乱れぬ」は前者の意味が用いられ「わずかな乱れもない」という意味で使われているということですね。

\次のページで「「一糸乱れず」の使い方・例文」を解説!/

「一糸乱れず」の使い方・例文

「一糸乱れず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ダンスの全国大会では、どの学校も一糸乱れぬ演技を披露する。
2.運動会で一糸乱れぬ組体操に感動した。
3.軍事パレードの一糸乱れぬ行進にはいつも感心してしまう。

「一糸乱れず(ぬ)」は、主に集団行動に対してよく使われます。演技や行進、ダンスやパレードなどが挙げられるでしょう。それらの動きがピッタリそろって「すごい!」と思わず感じてしまったときは「一糸乱れず(ぬ)」という表現を使って、言葉にしてみてください。

「一糸乱れず」の類義語は?違いは?

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次に、「一糸乱れず」の類語について確認していきましょう。

その1「一心同体」

一心同体」は「異なったものが一つの心、同じ体のような強固な結合をすること」を指す四字熟語です。「ぴったりそろっているさま」を表す「一糸乱れず」と似たニュアンスの言葉として挙げられます。

違いとしては、「一糸乱れず」は行動を見て「そろっている」「ズレがない」様子を指しますが、「一心同体」は心理的にも「息ぴったり」な状態に対しても使えるというところにあるでしょう。

\次のページで「その2「一枚岩」」を解説!/

その2「一枚岩」

この「一枚岩」も「一糸乱れず」と似た意味の言葉です。

「一枚岩」も面白い表現で、もともとは「一枚つづきの板のような、裂け目のない大きな岩」を指す言葉でしたが、そこから転じて「組織などの強固な団結力」を表現する言葉としても使われるようになりました。ニュアンスの違いとしては「一枚岩」は「団結力」という抽象的なものを指すのに対し、「一糸乱れず」は「具体的な行動にズレがない状態を指す」という点です。

多少の意味の違いはありますが、類義語としてセットで覚えておきましょう。

「一糸乱れず」の対義語は?

次に「一糸乱れず」の対義語について考えてみましょう。「完璧に対となる表現を挙げるのは難しいですが、逆の意味である「ばらばら」にニュアンスが近いものを紹介します。

その1「支離滅裂」

統一もなくばらばらに乱れて、筋道が立たないさま」という四字熟語です。「論理に統一感がない」というニュアンスであるため、行動の一致を示す「一糸乱れず」とは異なる点もありますが、「ばらばら」というニュアンスを持つ言葉として紹介しました。

論理の統一感のなさ」を指す言葉である「支離滅裂」ですので、「意見」や「発言」に対して使われます。「彼の発言は支離滅裂で理解できなかった」のように使うことが可能です。

完璧な対義語ではありませんが、覚えておいてもらいたい表現として紹介しました。

その2「四分五裂」

完全な対義語ではありませんが「ばらばら」つながりでもう一つ紹介します。「四分五裂(しぶんごれつ)」は「ばらばらになること」「まとまりのあるものが秩序を失い、乱れること」という意味です。イメージとしては「もともとは一つだったものがばらばらになってしまうこと」を指す表現となります。

「一糸乱れず」の対義を指す「行動のばらばら」とは少しニュアンスが異なりますが、「ばらばらになること」を表す表現として紹介しました。

「一糸乱れず」の英訳は?

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最後に「一糸乱れず」の英訳について解説していきます。わかりやすい日本語に変換してから英訳を考えてみましょう。

一糸乱れずは英語で「in perfect order」

order」は英語では「秩序」や「整頓」を指す言葉です。「in perfect order」となれば「完璧な秩序で」という意味になり、まさに「一糸乱れず」という状態を表現することができます。

また、こうした表現を使わなくとも「完璧な」という意味の形容詞や副詞で修飾することで、「一糸乱れず」という表現をすることもできるでしょう。「完璧」「ズレがない」という状態は「thoroughly」や「perfect」という単語を補うことで示すことができます。これを「動き」「行動」の動詞と組み合わせれば、「一糸乱れず」の状態を英語で表現することが可能です。

以下に例文を用意していますので、ぜひチェックしてみてください。

\次のページで「「一糸乱れず」を使いこなそう」を解説!/

The soldiers marched down the street in perfect order.
兵隊は一糸乱れず、通りを行進した。

The dance team performed thoroughly.
そのダンスチームは一糸乱れぬダンスを披露した。

「一糸乱れず」を使いこなそう

この記事では「一糸乱れず」の意味・使い方・類語などを説明しました。

身近なものである「糸」を「ごくわずかなこと」の喩えとして用いるようになり、そこからさらに「一糸」という単位や今回紹介した「一糸乱れず」という表現ができたというのは面白いですよね。慣用句は語源を辿ると面白い発見があり、一気に親しみが湧いてくるのが特徴です。機会があれば他の言葉も詳しく調べてみてくださいね。

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【慣用句】「一糸乱れず」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員ライターがわかりやすく解説!

この記事では「一糸乱れず」について解説する。

端的に言えば一糸乱れずの意味は「整っていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元国語科教員ライターのminを呼んです。一緒に「一糸乱れず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターとして活動中。

「一糸乱れず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一糸乱れず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一糸乱れず」の意味は?

「一糸乱れず」には、次のような意味があります。

一糸乱れぬ
読み方:いっしみだれぬ

寸分たりとも乱れやずれがなく、ぴったり揃っているさま。「一糸乱れず」とも言う。

出典:実用日本語表現辞典 「一糸乱れず」

いっしみだれぬ」と読み、「秩序が整って少しも乱れていないさま」や「少しも乱れず整然としているさま」を表します。

後ろに名詞を伴うときは「一糸乱れぬ動き」という言い方になり、「彼らの動きは一糸乱れず、きれいだ」など句読点の直前にくる場合は「一糸乱れず」を使うというように使い分けましょう。

「一糸乱れず」の語源は?

次に「一糸乱れず」の語源を確認しておきましょう。

「一糸」は文字通り「一筋の糸」という意味をもともと持っていました。そこから転じて、「きわめてわずかなな物事のたとえ」として使われたり、「糸」という単位として数える1つ分を意味したりするようになりました。

「一糸乱れぬ」は前者の意味が用いられ「わずかな乱れもない」という意味で使われているということですね。

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