この記事では「後ろ手」について解説する。

端的に言えば後ろ手の意味は「後ろに手を回すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い、教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「後ろ手」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「後ろ手」の意味や語源・使い方まとめ

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「後ろ手」の読み方は「うしろで」です。漢字の雰囲気から、手が後ろにあることだという意味は想像しやすいでしょう。しかし、とくにビジネスシーンでは「後ろ手」が暗に意味すること、相手に与える印象を知っておく必要があります。

今回は「後ろ手」について詳しく見ていきましょう。姿勢を表す以上の意味を知っておくと、日常生活でもきっと役に立ちますよ!それでは早速「後ろ手」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「後ろ手」の意味は?

「後ろ手」には、次のような意味があります。

1.両手を背に回すこと。

2.《「で」は方向・状態などを示す》
(ア)後ろの方向。
(イ)後ろ姿。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「後ろ手」

「後ろ手」は両手を背後に回した姿勢のことを指します。「手が後ろにある状態」という意味ですね。

また助詞「で」や「手」には場所や方向を表す用法があります。よって「後ろ手」を「後ろの方向」とすることもありますが、こちらはあまり頻繁には使われません。「後ろ手」は基本的に手を背中の後ろに回した姿勢、と理解しましょう。

ちなみに「後ろ手」の「ろ」を抜いて「後手」と表記すると、「ごて」と読む別の言葉になります。使うときはよく確認してくださいね。

「後ろ手」は失礼にあたる?

「後ろ手」は人と接する際には控えた方が良い姿勢だということは、ご存知ですか?

実際に「後ろ手」をやってみるとわかりますが、後ろ手になると自然と胸が張りますよね。この姿勢が相手に「偉そう」「威張っている」という印象を与えるというので、とくにビジネスシーンでは「相手に大変失礼」だとされています。

オーナー社長や大企業の重役、地位の高い人にもなれば後ろ手をしていても咎める人はいないかもしれませんが、ビジネスではいつでも「謙虚さ」が大切ですよね。相手に不要なマイナスイメージを与える可能性がある「後ろ手」は避けた方が無難です。

もちろんビジネスシーンに限らず、どんな人間関係でもいえることですから注意しましょう。

\次のページで「「後ろ手」の由来を知ろう」を解説!/

「後ろ手」の由来を知ろう

「後ろ手」がとても失礼な態度である、という由来はヨーロッパの王侯・貴族社会にさかのぼると言われています。

王侯や貴族たちは命を狙われやすい立場だったため、自身の身の安全には格別の注意を払いました。ところが、もし身の回りの世話をしてくれる召使いが「後ろ手」になっていたらどうでしょうか? 召使いが武器を隠し持っていても発見できませんよね。よって王侯や貴族たちは「後ろ手」を嫌いました。

反対に手を前で組む姿勢は、礼儀正しいとされていますよね。これも同時代にルーツがあります。手を前に置いておくと武器を隠し持てないため、王侯や貴族が「良し」とした姿勢だというがはじまりだという説があるのですよ。

「後ろ手」の使い方・例文

「後ろ手」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.デートに遅刻した。駅前で見つけたとき、彼女は後ろ手を組んで手持無沙汰そうに待っていてくれた。
2.ひったくりの現行犯で逮捕された犯人は、駆け付けた警察官に後ろ手に手錠をかけられた。
3.連日の雨で敵軍は疲弊し、警備がおろそかになり始めている。明日は後ろ手に回り、急襲するぞ。

「後ろ手」は単独でも使える言葉ですが、「後ろ手を組む」という慣用表現でもよく使われます。例文1は「後ろ手を組んで」遅刻した恋人を待っている女性の様子を表現しました。相手がいる場所での「後ろ手」は尊大な印象を与えますが、後ろ手を組み、手持無沙汰な様子で彼が来るのを待っている姿は、もしかしたら可愛らしく見えるかもしれませんね。

また手錠は「後ろ手」に掛けられる場合もあるため、「後ろ手」という言葉に「逮捕」のイメージを重ねる人もいます(例文2)。日本では手錠を前でかけることが多いのですが、諸外国では「後ろ手」にかけられることが多いようです。

例文3は「後ろ手」を「後方」という意味で使ってみました。

「後ろ手」の類義語は?違いは?

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「後ろ手」を「自分の背後に手を回す」という意味で使う場合の類義語はありません。一方、「後方で」という意味で使う場合は、いくつか類義語があります。「後方で」という場合の類義語を見てみましょう。

\次のページで「その1「裏手」」を解説!/

その1「裏手」

裏手」は「建物などの後方にあたる場所」という意味です。相手にとっての後ろは、裏とも言えますよね。同じ意味で「背後、後部、背側」といった言葉もあります。

その2「ひっそり」

相手の「後ろ手」に回るときというのは、気付かれたくないという心理があるのではないでしょうか。そんな心理を表せるのが「ひっそり」です。「隠れて、見えないように、影のように」なども使えそうですね。

「後ろ手」の対義語は?

残念ながら「後ろ手」の辞書的な対義語はありません。「前に手を回す」など、説明的に表現することになります。「後方」という意味の対義語には「前方」が使えますよ。

「後ろ手」の英訳は?

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海外とビジネスを行う場合も多い昨今、「後ろ手」の英語表現も知っておいて損はないですよ。

その1「hold one's hand behind one's back」

「後ろ手を組む」姿勢を説明的に述べているのが「hold one's hand behind one's back」です。やや長いようにも感じますが、口語でも使える表現なので押さえておきましょう。 「clasp[ lock ] one's hands behind one's back」という表現も、同じように使うことができます。

Don’t  hold your hands behind your back !
「後ろ手を組むのはやめなさい!」

\次のページで「その2「behind」」を解説!/

その2「behind」

「後方」という意味を英語にすると「behind」となります。人や物、建物などの後ろ側にある空間を指す英単語です。

He says that he can see gohsts bihind people around him.
「彼は『周りにいる人の背後に霊が見えるんだ』って言うんだ。」

「後ろ手」を使いこなそう

この記事では「後ろ手」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「後ろ手」とは手を後ろに回す姿勢のことですが、相手にとても失礼な印象を与えることがわかりましたね。また「後方、背後」という意味があることもわかりました。

つい癖で「後ろ手」をやりがちだという人は、今日から意識してやめてみましょう。もしかしたらあなたに言えないだけで、気にしていた人が周りにいたかもしれません。癖をやめるだけで、人間関係も良くなるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

「後ろ手」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「後ろ手」について解説する。

端的に言えば後ろ手の意味は「後ろに手を回すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い、教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「後ろ手」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「後ろ手」の意味や語源・使い方まとめ

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「後ろ手」の読み方は「うしろで」です。漢字の雰囲気から、手が後ろにあることだという意味は想像しやすいでしょう。しかし、とくにビジネスシーンでは「後ろ手」が暗に意味すること、相手に与える印象を知っておく必要があります。

今回は「後ろ手」について詳しく見ていきましょう。姿勢を表す以上の意味を知っておくと、日常生活でもきっと役に立ちますよ!それでは早速「後ろ手」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「後ろ手」の意味は?

「後ろ手」には、次のような意味があります。

1.両手を背に回すこと。

2.《「で」は方向・状態などを示す》
(ア)後ろの方向。
(イ)後ろ姿。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「後ろ手」

「後ろ手」は両手を背後に回した姿勢のことを指します。「手が後ろにある状態」という意味ですね。

また助詞「で」や「手」には場所や方向を表す用法があります。よって「後ろ手」を「後ろの方向」とすることもありますが、こちらはあまり頻繁には使われません。「後ろ手」は基本的に手を背中の後ろに回した姿勢、と理解しましょう。

ちなみに「後ろ手」の「ろ」を抜いて「後手」と表記すると、「ごて」と読む別の言葉になります。使うときはよく確認してくださいね。

「後ろ手」は失礼にあたる?

「後ろ手」は人と接する際には控えた方が良い姿勢だということは、ご存知ですか?

実際に「後ろ手」をやってみるとわかりますが、後ろ手になると自然と胸が張りますよね。この姿勢が相手に「偉そう」「威張っている」という印象を与えるというので、とくにビジネスシーンでは「相手に大変失礼」だとされています。

オーナー社長や大企業の重役、地位の高い人にもなれば後ろ手をしていても咎める人はいないかもしれませんが、ビジネスではいつでも「謙虚さ」が大切ですよね。相手に不要なマイナスイメージを与える可能性がある「後ろ手」は避けた方が無難です。

もちろんビジネスシーンに限らず、どんな人間関係でもいえることですから注意しましょう。

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