今回は「分裂組織」というキーワードについて学習していこう。

分裂組織は植物にみられる組織のひとつです。植物のからだの構造について学習するときに目にする言葉ですが、我々のような動物の身体と植物のつくりは大きく異なるため、苦手意識をもつやつも少なくない。実際の植物をイメージしながら理解を進めていこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

分裂組織

分裂組織(ぶんれつそしき)とは、名前の通り「分裂を盛んに行っている組織」のことを言います。一般的に、分裂組織という言葉は植物の組織について使われる用語です。

ここでいう”分裂”とは、もちろん細胞分裂のこと。”組織”というのは、同じような機能・形態をもった細胞の集まりを指します。

image by Study-Z編集部

分裂組織と反対に、細胞分裂を活発に行わない組織はまとめて永久組織とよばれます。

植物のからだを構成する細胞は、分裂組織と永久組織に大きく大別できるのです。

分裂組織の細胞の特徴

分裂組織の細胞は、十分に成長する間もなくどんどん細胞分裂を行っています。そのため、基本的にサイズは小さく、細胞壁も薄いままのものが多いです。また、内部は原形質で満たされ、物質の貯蔵する役目を果たす液胞はあまり発達していません。

一般に、分裂組織の細胞は未分化(みぶんか)な細胞である、と表現されます。

細胞の分化というのは、その細胞が特定の機能や構造をもった状態に変化することですね。

分裂組織と違い、永久組織の細胞はすでに分化した細胞からなります。例えば、液体の通り道となる道管や師管の細胞(通道組織)、葉緑体をたくさん含んだ葉の細胞(柔組織)…などがあげられるでしょう。それぞれが、機能を果たすために特別な構造や形に変化した細胞です。

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そうですね。分裂組織の細胞も、それぞれが成熟して特定の機能をもった細胞に分化し、永久組織となるのです。

分裂組織の種類

植物の分裂組織は、さらに大きく2つに分けて考えることができます。頂端分裂組織(ちょうたんぶんれつそしき)と形成層(けいせいそう)です。以下に詳しく解説していきましょう。

1.頂端分裂組織

頂端分裂組織は、植物の”頂”=”てっぺん”と、”端”=”はじっこ”に位置している分裂組織です。つまり、茎や根の先端に存在する分裂組織ということになります。

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より専門的な言葉では、茎の先端にある分裂組織は茎頂分裂組織(けいちょうぶんれつそしき)、もしくはシュート頂分裂組織といいます。根の先端にある分裂組織は根端分裂組織(こんたんぶんれつそしき)です。

シュートは、1本の茎と、その茎についている葉をひとまとめにしたときの呼び方です。

植物のからだを観察するときには、葉、茎、根といった器官ごとに考える場合もありますが、葉はほぼ必ず茎についているものですよね。葉と、その葉のついている茎を一つのまとまりとして考えた方が都合の良いことがたくさんあるので、植物学の世界ではよくこの”シュート”という用語を使います。

Shoot.png
Kingfisher - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

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頂端分裂組織は植物の伸長に関わる

頂端分裂組織で盛んに細胞分裂が行われると、茎や根の先端の細胞が増えていくため、植物のからだは上へ、もしくは地中へと伸びていくことになります。つまり、植物が伸長していくことになるのです。このため、頂端分裂組織のあるところは成長点(生長点)とも呼ばれます。

また、側枝や側根が生じるのも、頂端分裂組織があるおかげです。

2.形成層

形成層(維管束形成層)は、植物の茎や根にある維管束のうち、木部と師部(篩部)の間に存在している分裂組織です。

頂端分裂組織とちがい、形成層は植物の種類によって発達の度合いが異なります。

形成層がよく発達するのは、双子葉植物裸子植物です。これらの植物の茎の断面を観察すると、形成層がぐるりと円を描くように(環状に)配置し、ひとつの層になっていることが分かります。

反対に、形成層がほとんど発達しないのが単子葉植物シダ植物です。

形成層は茎や根の肥大に関わる

前述の頂端分裂組織が縦方向への慎重だったのに対し、形成層では横方向(側方)への細胞分裂が行われます。すると、形成層のある茎や根などはどんどん太くなっていく(肥大していく)のです。樹木の幹が太くなるのは、この形成層が存在しているためだといえます。

形成層と”樹木”

ここで、形成層の発達具合と”樹木”とよばれる植物の仲間について考えてみましょう。

樹木…いわゆる”木”と、”草”(草本類)の違いはなんでしょうか?

そうですね。樹木を特徴づける”太い幹”は、形成層があることでつくられます。一般的な樹木の幹は、その大部分が形成層の細胞分裂によってできた二次木部からなるのです。

二次木部とは、形成層の内側につくられる道管や繊維などがある部分。建築現場や木工などで使われる”木材(材木)”というのは、基本的にこの二次木部なんですよ。

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先ほどの話とつなげてみましょう。一般的に、単子葉植物やシダ植物のような形成層が発達しない植物は、”樹木”になることができないんです。樹木(木本植物)とよばれるものは、双子葉植物か、マツやイチョウなどの裸子植物なんですね。

沖縄などに生えているヘゴなんかはそうですね。シダ植物の仲間であるのに、まるで樹木のように大きく成長します。樹木のように生長するシダ植物は木性シダなどともよばれますが、これは一般的な”樹木”とはつくりが異なるのです。

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また、単子葉植物でも、ヤシのような例外があるのですが…こちらもやはり、双子葉植物や裸子植物とは異なるしくみで大きく生長します。

植物学的に、厳密な意味での”樹木(木本植物)”にはヘゴやヤシを含めないことが多いですが、樹木図鑑などには樹木の仲間として掲載されていることが少なくありません。

分裂組織のつぎは永久組織を知ろう!

大きな樹木から小さなお花まで、植物の見た目は様々です。ですが、そのからだのごく一部である分裂組織でしか細胞分裂が起きていないとなると、多様な植物に対する見方が変わってきませんか?

分裂組織について知識を得たならば、次は植物の永久組織についても調べてみましょう。植物のからだの全体像が把握できるようになってくるはずです。

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体の仕組み・器官理科生物

植物の「分裂組織」とは?頂端分裂組織って何?現役講師がわかりやすく解説します

今回は「分裂組織」というキーワードについて学習していこう。

分裂組織は植物にみられる組織のひとつです。植物のからだの構造について学習するときに目にする言葉ですが、我々のような動物の身体と植物のつくりは大きく異なるため、苦手意識をもつやつも少なくない。実際の植物をイメージしながら理解を進めていこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

分裂組織

分裂組織(ぶんれつそしき)とは、名前の通り「分裂を盛んに行っている組織」のことを言います。一般的に、分裂組織という言葉は植物の組織について使われる用語です。

ここでいう”分裂”とは、もちろん細胞分裂のこと。”組織”というのは、同じような機能・形態をもった細胞の集まりを指します。

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分裂組織と反対に、細胞分裂を活発に行わない組織はまとめて永久組織とよばれます。

植物のからだを構成する細胞は、分裂組織と永久組織に大きく大別できるのです。

分裂組織の細胞の特徴

分裂組織の細胞は、十分に成長する間もなくどんどん細胞分裂を行っています。そのため、基本的にサイズは小さく、細胞壁も薄いままのものが多いです。また、内部は原形質で満たされ、物質の貯蔵する役目を果たす液胞はあまり発達していません。

一般に、分裂組織の細胞は未分化(みぶんか)な細胞である、と表現されます。

細胞の分化というのは、その細胞が特定の機能や構造をもった状態に変化することですね。

分裂組織と違い、永久組織の細胞はすでに分化した細胞からなります。例えば、液体の通り道となる道管や師管の細胞(通道組織)、葉緑体をたくさん含んだ葉の細胞(柔組織)…などがあげられるでしょう。それぞれが、機能を果たすために特別な構造や形に変化した細胞です。

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