この記事では「凝然」について解説する。

端的に言えば凝然の意味は「じっとして動かない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い、教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「凝然」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「凝然」の意味や語源・使い方まとめ

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「凝然」は「ぎょうぜん」と読みます。「凝」は「凝り性」という言葉で使いますし、「然」も日常生活でよく使う感じですね。しかしこの2文字がつながってできた「凝然」となると、初めて見たという方も多いのではないでしょうか。今回は「凝然」を詳しく解説していきます。やや古めかしい印象もある言葉ですが、改まった場面や文書で使うと表現の格が上がりますよ。豊かな語彙のためにも、知っていて損はない言葉です。

それでは早速「凝然」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「凝然」の意味は?

「凝然」には、次のような意味があります。

じっとして動かないさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「凝然」

「凝然」はじっと動かない、微動だにしないという意味です。何か気になることがあり、そちらに注意を向けたままじっとしているさまを表します。

「凝然」と検索すると「ぎょうねん」という読み方もヒットしますが、そちらは鎌倉後期のお坊さんの名前なので区別しましょう。「凝然」は東大寺・戒壇院の長老にもなった、徳の高いお坊さんです。「じっとして動かない」という意味なら「凝然」、お坊さんの名前なら「ぎょうねん」ですよ。

「凝然」の語源は?

次に「凝然」の語源を、漢字1文字ずつの意味を見ながら考えてみましょう。

「凝」は「ぎょう、こる、こらす」とさまざまな読みがある漢字です。「凝視する」「目を凝らす」というときに使いますね。この用法からもわかるように、「凝」には「じっとして動かない/心が一つのことに注がれて他に動かない」という意味があります。

「然」は「天然、自然」という熟語で使われる「その通り、そのまま」という意味のほか、他の言葉に添えられて物事の様子・状態を表す漢字です。他の語について形容する漢字を「助字」といい、「公然、断然、全然」といった熟語で使われている「然」が助字にあたります。

つまり「凝然」とは、「じっと動かない状態である」という意味になるわけですね。

\次のページで「「凝然」の使い方・例文」を解説!/

「凝然」の使い方・例文

「凝然」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.戦局を決する大事な参謀会議の場、総司令官は将軍たちが交わす意見を凝然と見守っていた。
2.優勝決定戦が試合終了間際、劇的な逆転劇で終了したのを目にし、私は凝然と佇むほかなかった。
3.「お前がやりたいようにやりなさい」、頑固一徹の父が初めて僕の希望に譲歩してくれた。僕は驚きのあまり、凝然と父の顔を見つめた。

例文を見て「凝然」の使い方がつかめたでしょうか。「じっと動かない様子」をイメージしながら読むと、よくわかりますよ。

例文1は総司令官は身動きせず、会議の成り行きを見守っているという意味ですね。総司令官は総責任者、大事な局面だからこそ意見を聞きながらじっと考えている緊張感が伝わります。

例文2は驚きのあまり、動けなくなった様子を「凝然」で表現しました。きっと優勝を確信していたのに、最後に大逆転が起きたのでしょう。観客席で呆然としている様子が目に浮かびますね。

例文3は父の反応が意外過ぎ、状況理解が追い付かなかったのかもしれません。じっと父の顔を見た、という意味になります。

「凝然」の類義語は?違いは?

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1つの言葉を学んだときに、同じ意味の他の表現も合わせて覚えてしまうことが語彙力アップの近道です。「凝然」の類義語を見てみましょう。

その1「身じろぎせずに」

身じろぎせずに」は、全く動かずにという意味です。まさに「凝然」と同じですね。ちなみに「身じろぎせず」は、「身じろぎする」という動詞からできています。「身じろぎする」の未然形「身じろぎし」に、打消の助動詞「ぬ」の連用形「ず」がついたものが「身じろぎせず」です。

\次のページで「その2「まじまじと見る」」を解説!/

その2「まじまじと見る」

「凝然と」をじっと動かずに相手を見つめる、というシチュエーションで使う場合は「まじまじ見る」とも言いかえられますね。「まじまじ」とは「じっと見る、目を離さずに一心に見つめる」という意味です。

その3「直立不動で」

やや説明的にはなりますが「直立不動で」という表現も使えますよ。「直立不動」とは緊張や畏敬の気持ちから、まっすぐに立って身動きしないという意味です。立った状態で「凝然」としているときに言いかえられますね。

「凝然」の対義語は?

「凝然」の辞書的な対義語はありませんが、「じっとして動かない様子」と対義になる言葉はたくさんありますね。代表的なものをご紹介します。

その1「そわそわ」

そわそわ」は気持ちや態度が落ち着かなかったり、せわしなく動いていたりする時に使いますね。同じ意味で「あくせく、せかせか」などもあります。

その2「きょろきょろ」

きょろきょろ」はあちこち視線を動かすさまを表しますね。「凝然」はどっしりと構え、じっと動かない様子ですから対義になる言葉だと言えます。

「凝然」の英訳は?

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「凝然」とした人というのは、世界中にいそうです。では英語で「凝然」と言いたいときは、どのように表現すれば良いのでしょうか。

\次のページで「その1「stock-still」」を解説!/

その1「stock-still」

「stock-still」は「まったく動かない、身じろぎしない、微動だにしない」と訳される慣用表現です。「凝然」に最も近いニュアンスを持っています。

He stood stock-still in the  meetingroom alone.
「彼は会議室で凝然と立ち尽くしていた」

その2「frozen in place」

驚きや恐怖で凍り付いたようにその場から動けない、というニュアンスを表現したいときに使えるのが「frozen in place」です。「frozen」は「凍る」、「in place」は「その場で」という意味になります。

He was so surprised that he frozen in place.
「彼は驚きのあまり、凍り付いたようにその場から動けなくなった」

「凝然」を使いこなそう

この記事では「凝然」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「蛇ににらまれた蛙」ということわざもありますが、何かの理由があって身じろぎしないことというのはよくあるものです。そんな時に、ぜひ「凝然」を使ってみてください。ただし、ぼんやりしていて身動きしないというときにはあまり使われません。場面を区別しながら使いこなしてみてくださいね。

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国語言葉の意味

「凝然」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「凝然」について解説する。

端的に言えば凝然の意味は「じっとして動かない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長い、教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「凝然」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「凝然」の意味や語源・使い方まとめ

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「凝然」は「ぎょうぜん」と読みます。「凝」は「凝り性」という言葉で使いますし、「然」も日常生活でよく使う感じですね。しかしこの2文字がつながってできた「凝然」となると、初めて見たという方も多いのではないでしょうか。今回は「凝然」を詳しく解説していきます。やや古めかしい印象もある言葉ですが、改まった場面や文書で使うと表現の格が上がりますよ。豊かな語彙のためにも、知っていて損はない言葉です。

それでは早速「凝然」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「凝然」の意味は?

「凝然」には、次のような意味があります。

じっとして動かないさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「凝然」

「凝然」はじっと動かない、微動だにしないという意味です。何か気になることがあり、そちらに注意を向けたままじっとしているさまを表します。

「凝然」と検索すると「ぎょうねん」という読み方もヒットしますが、そちらは鎌倉後期のお坊さんの名前なので区別しましょう。「凝然」は東大寺・戒壇院の長老にもなった、徳の高いお坊さんです。「じっとして動かない」という意味なら「凝然」、お坊さんの名前なら「ぎょうねん」ですよ。

「凝然」の語源は?

次に「凝然」の語源を、漢字1文字ずつの意味を見ながら考えてみましょう。

「凝」は「ぎょう、こる、こらす」とさまざまな読みがある漢字です。「凝視する」「目を凝らす」というときに使いますね。この用法からもわかるように、「凝」には「じっとして動かない/心が一つのことに注がれて他に動かない」という意味があります。

「然」は「天然、自然」という熟語で使われる「その通り、そのまま」という意味のほか、他の言葉に添えられて物事の様子・状態を表す漢字です。他の語について形容する漢字を「助字」といい、「公然、断然、全然」といった熟語で使われている「然」が助字にあたります。

つまり「凝然」とは、「じっと動かない状態である」という意味になるわけですね。

\次のページで「「凝然」の使い方・例文」を解説!/

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