

端的に言えば「滅相もない」の意味は「とんでもないということ」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んだ。一緒に「滅相もない」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「滅相もない」の意味は?
「滅相もない」には、次のような意味があります。
とんでもない。あるべきことではない。相手の言を否定するときにも用いる。「―・い話」「―・い、私の出る幕ではありません」
出典:デジタル大辞泉(小学館)「滅相もない」
この言葉は「とんでもない・あるべきことではない」と否定の意見を述べる際に使う言葉です。言葉で説明すると何やら難しい感じですが、使用シーンを思い浮かべればすぐにわかるはず。誰かが褒められた時に「滅相もないです」と謙遜して言うのを聞いたことがないでしょうか。
これは、相手からの褒め言葉を否定しているのですね。もちろん、この場合の「滅相もない」は謙遜するためであり、否定が目的ではありません。一種の定型表現として定着しているものです。
ただあまりに定着している言い方である為、「滅相もない」と聞くと「謙遜するための言葉かな?」と思ってしまう可能性もあるかもしれません。正しい意味を知らないと、場合によっては失礼になってしまうことも。本来の意味を理解したうえで、適切に使いましょう。
「滅相もない」の語源は?
次に「滅相もない」の語源を確認しておきましょう。「滅相」はもともと仏教用語で、「四相(しそう=万物の在り方を示すもの)」の一つ。「四相」とは物事が「生まれ」「存在し」「変化し」「滅する」の四段階のことで、「滅相」はこの一番最後に当たります。
全て消滅する「滅相」は、生きている人々にとっては「あってはならない」「とんでもない」こととして考えられ、「滅相もない」という言い方がされるようになったのです。物事が終わってしまうほどですから、「程度が甚だしい=普通をはるかに超えている」という意味も含んでいます。
このため、「滅相もない」を褒め言葉に対して使う場合、「その言葉は私にはもったいなさすぎます」や「そんなことを言って頂くことなんてありえません」と、大げさな意味合いを含むことにも。軽々しく連発すると、謙遜しすぎやわざとらしすぎると感じさせてしまうかもしれません。
表現として定着しているからこそ、実は注意して使いたい言葉とも言えるのではないでしょうか。
\次のページで「「滅相もない」の使い方・例文」を解説!/