端的に言えば槍玉に挙げるの意味は「つるし上げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
多くの学術書を読み、豊富な知識をもつハヤカワを呼んです。一緒に「槍玉に挙げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ハヤカワ
学術書を中心に毎年100冊以上の本を読む、無類の本好き。人にさまざまな影響を与える言語、それ自体に強い興味をもち、言葉の細やかな表現にも並々ならないこだわりをもっている。
「槍玉に挙げる」の意味は?
「槍玉に挙げる」には、次のような意味があります。
1.槍の穂先で突きあげる。槍で突き刺す。
※会津陣物語(1680)二「小倉主膳を槍玉に挙たるに」
2.多くの中から選び出して犠牲にする。特に、非難、攻撃の目標などにして責める。
※俳諧・口真似草(1656)一「鑓玉にあぐるや梅の花の露〈喜雅〉」
出典:精選版 日本国語大辞典「槍玉に挙げる」
「槍玉に挙げる」には槍で突き刺すといった意味もありますが、現代では、あるグループのなかから特定の誰かを攻撃・非難する表現となっています。特に「大勢に責任があるなかで、その中の特定の誰かを攻撃・非難の対象として祭り上げる」といったニュアンスが大きい点に注意しましょう。
例えば企業が失態を犯してしまい、実際には社員の多くにも責任があったものの、なかでも顔が知られている企業の代表者に非難が集中するような場合。こうした場合にはこの代表者が「槍玉に挙げられた」ということになります。「槍玉に挙げる」とはこうした、集団の攻撃対象にする行為を指しているんですね。
「槍玉に挙げる」の語源は?
次に「槍玉に挙げる」の語源・由来を確認しておきましょう。「槍玉」という言葉は、もともとは扱いの難しい槍をお手玉のように軽々と扱う様子を表していました。しかしそれが転じて、合戦の際に敵の武将の体を槍の穂先に突き刺し高々と掲げ、それを味方に放り投げてお手玉のように扱うことを表すようになります。
「槍玉に挙げる」という言葉は、こうした残酷な場面から生まれた言葉なんですね。こうした背景から、現在では特定の誰かを集団が集中的に攻撃・非難し、さらし上げる様子を指すようになりました。最近ではSNSなどで炎上騒動を起こし、槍玉に挙げられ、さらし上げられている人も多くいますよね。
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