この記事では「槍玉に挙げる」について解説する。

端的に言えば槍玉に挙げるの意味は「つるし上げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

多くの学術書を読み、豊富な知識をもつハヤカワを呼んです。一緒に「槍玉に挙げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハヤカワ

学術書を中心に毎年100冊以上の本を読む、無類の本好き。人にさまざまな影響を与える言語、それ自体に強い興味をもち、言葉の細やかな表現にも並々ならないこだわりをもっている。

「槍玉に挙げる」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 74502804

それでは早速「槍玉に挙げる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「槍玉に挙げる」の意味は?

「槍玉に挙げる」には、次のような意味があります。

1.槍の穂先で突きあげる。槍で突き刺す。
※会津陣物語(1680)二「小倉主膳を槍玉に挙たるに」
2.多くの中から選び出して犠牲にする。特に、非難、攻撃の目標などにして責める。
※俳諧・口真似草(1656)一「鑓玉にあぐるや梅の花の露〈喜雅〉」

出典:精選版 日本国語大辞典「槍玉に挙げる」

「槍玉に挙げる」には槍で突き刺すといった意味もありますが、現代では、あるグループのなかから特定の誰かを攻撃・非難する表現となっています。特に「大勢に責任があるなかで、その中の特定の誰かを攻撃・非難の対象として祭り上げる」といったニュアンスが大きい点に注意しましょう。

例えば企業が失態を犯してしまい、実際には社員の多くにも責任があったものの、なかでも顔が知られている企業の代表者に非難が集中するような場合。こうした場合にはこの代表者が「槍玉に挙げられた」ということになります。「槍玉に挙げる」とはこうした、集団の攻撃対象にする行為を指しているんですね。

「槍玉に挙げる」の語源は?

次に「槍玉に挙げる」の語源・由来を確認しておきましょう。「槍玉」という言葉は、もともとは扱いの難しい槍をお手玉のように軽々と扱う様子を表していました。しかしそれが転じて、合戦の際に敵の武将の体を槍の穂先に突き刺し高々と掲げ、それを味方に放り投げてお手玉のように扱うことを表すようになります。

「槍玉に挙げる」という言葉は、こうした残酷な場面から生まれた言葉なんですね。こうした背景から、現在では特定の誰かを集団が集中的に攻撃・非難し、さらし上げる様子を指すようになりました。最近ではSNSなどで炎上騒動を起こし、槍玉に挙げられ、さらし上げられている人も多くいますよね。

\次のページで「「槍玉に挙げる」の使い方・例文」を解説!/

「槍玉に挙げる」の使い方・例文

「槍玉に挙げる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.マスコミは、事件の首謀者のなかでも特に目立っていた彼を槍玉に挙げた。
2.先生はクラスの生徒のふたりを、いじめの原因として槍玉に挙げた。
3.経済不振の原因として槍玉に挙げられるのは、いつも首相だ。

「槍玉に挙げる」は、なにか不祥事・不都合があった際にその責任を誰かに押し付ける形で使われています。意味はかなり攻撃的なものとなっているため、使う際には注意が必要です。また用例の2番のように、「槍玉に挙げる」という言葉は対象が複数人の場合でも使われることがあります。

「槍玉に挙げる」という言葉はほかにも、受け手側の立場からの「槍玉に挙げられる」といった形でもよく使われています。「自分だけの責任ではないのに、集中的に周囲から攻撃・非難された」という状況は、まさに「槍玉に挙げられた」という状況になります。

「槍玉に挙げる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

続いて「槍玉に挙げる」の類義語・違いについて確認していきましょう。よく似た表現との違いを確認することで、「槍玉に挙げる」という言葉の意味をより深く理解することができます。

その1「つるし上げる」

「つるし上げる」という言葉の意味は、「大勢がある人を非難・糾弾すること」となっており、基本的な意味は「槍玉に挙げる」と同じです。しかしこちらは「槍玉に挙げる」にあった、責任がある大勢のなかから特定の誰かを選んで非難するというニュアンスはありません。

単にある人に対して大勢で非難・糾弾するといった場合には、「つるし上げる」といった表現がより適切になります。非常によく似た場面で使われる言葉のため、注意して使い分けていきましょう。

\次のページで「その2「矛先を向ける」」を解説!/

その2「矛先を向ける」

「矛先を向ける」とは、攻撃の方向を相手側に向けること、攻撃目標とすることです。「彼女の話しをぼんやり聞いていると、突然、私に怒りの矛先を向けてきた」といった形で使われることが多いですね。

こちらは大勢に非難されるといった場面に限定されていない点で、「槍玉に挙げる」と意味が違っています。こうした点に注意して使い分けていきましょう。

その3「つまはじきにする」

「つまはじきにする」とは、ある人を忌み嫌い集団から孤立させることを表します。こちらも大勢が特定の誰かを攻撃・非難する意味を含んでいますが、こちらは集団内の特定の誰かを、集団から孤立させ締め出すことが強調された表現です。

「槍玉に挙げる」の対義語は?

「槍玉に挙げる」には、明確に対義語とされている言葉はありません。「槍玉に挙げる」は、大勢が特定の誰かに責任を押し付け非難・攻撃するといった意味のため、反対の意味を定義することは難しくなっています。「槍玉に挙げる」の対義語はないと覚えておきましょう。

「槍玉に挙げる」の英訳は?

image by iStockphoto

つづいて「槍玉に挙げる」の英語訳についても確認していきましょう。

その1「criticize」

「criticize」には、人を非難する、人のあらを探すといった意味があります。この英単語を使ったフレーズ「single out someone for criticism」は特定の誰かを非難の対象にするという意味になり、「槍玉に挙げる」の意味をしっかり表現することができますよ。

その2「ridicule」

「ridicule」は、人をあざ笑う、笑いものにするといった意味をもっています。こちらの英単語を使ったフレーズ「to hold up somebody to ridicule」は、嘲笑の的にするという意味になり、こちらも「槍玉に挙げる」に近いニュアンスを表現することができますよ。

\次のページで「「槍玉に挙げる」を使いこなそう」を解説!/

「槍玉に挙げる」を使いこなそう

この記事では「槍玉に挙げる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「槍玉に挙げる」という言葉は、特定の人物に責任を押しつけ集団で非難・攻撃するという、かなり残酷な表現です。

よく似た表現である「つるし上げる」・「矛先を向ける」・「つまはじきにする」といった表現とは、その他大勢にも責任があるなか、特定の人物を選び出して攻撃するという点に違いがあります。

実際に「槍玉に挙げる」という表現を使うときには、こうした点に注意して使うようにしていきましょう。今回の記事が皆さんの参考になれば幸いです。

" /> 【ことわざ】「槍玉に挙げる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【ことわざ】「槍玉に挙げる」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「槍玉に挙げる」について解説する。

端的に言えば槍玉に挙げるの意味は「つるし上げる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

多くの学術書を読み、豊富な知識をもつハヤカワを呼んです。一緒に「槍玉に挙げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハヤカワ

学術書を中心に毎年100冊以上の本を読む、無類の本好き。人にさまざまな影響を与える言語、それ自体に強い興味をもち、言葉の細やかな表現にも並々ならないこだわりをもっている。

「槍玉に挙げる」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 74502804

それでは早速「槍玉に挙げる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「槍玉に挙げる」の意味は?

「槍玉に挙げる」には、次のような意味があります。

1.槍の穂先で突きあげる。槍で突き刺す。
※会津陣物語(1680)二「小倉主膳を槍玉に挙たるに」
2.多くの中から選び出して犠牲にする。特に、非難、攻撃の目標などにして責める。
※俳諧・口真似草(1656)一「鑓玉にあぐるや梅の花の露〈喜雅〉」

出典:精選版 日本国語大辞典「槍玉に挙げる」

「槍玉に挙げる」には槍で突き刺すといった意味もありますが、現代では、あるグループのなかから特定の誰かを攻撃・非難する表現となっています。特に「大勢に責任があるなかで、その中の特定の誰かを攻撃・非難の対象として祭り上げる」といったニュアンスが大きい点に注意しましょう。

例えば企業が失態を犯してしまい、実際には社員の多くにも責任があったものの、なかでも顔が知られている企業の代表者に非難が集中するような場合。こうした場合にはこの代表者が「槍玉に挙げられた」ということになります。「槍玉に挙げる」とはこうした、集団の攻撃対象にする行為を指しているんですね。

「槍玉に挙げる」の語源は?

次に「槍玉に挙げる」の語源・由来を確認しておきましょう。「槍玉」という言葉は、もともとは扱いの難しい槍をお手玉のように軽々と扱う様子を表していました。しかしそれが転じて、合戦の際に敵の武将の体を槍の穂先に突き刺し高々と掲げ、それを味方に放り投げてお手玉のように扱うことを表すようになります。

「槍玉に挙げる」という言葉は、こうした残酷な場面から生まれた言葉なんですね。こうした背景から、現在では特定の誰かを集団が集中的に攻撃・非難し、さらし上げる様子を指すようになりました。最近ではSNSなどで炎上騒動を起こし、槍玉に挙げられ、さらし上げられている人も多くいますよね。

\次のページで「「槍玉に挙げる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: