
1.健太は国会議員の先生の威光を笠に着て、協会でも偉そうに仕事をしている。
2.バブル時代に銀行員だった彼は銀行の権力を笠に着て、外部の社員にまで命令していたのでかなり恨みを買っていたようだ。
3.私は彼に結婚の相談をされて女性を紹介してあげたし、その結果彼らは婚約したけれども、それを笠に着るようなつもりはないよ。
上の3つの例文について、一つずつ見ていきましょう。
例文1では国会議員という「権勢のある後援者」を頼みにして周囲に偉そうな態度を取っている、という意味で「笠に着る」が使われています。権力は健太にではなく、国会議員の先生にあるのに、それを借りて健太が威張っているという状況です。例文2では「バブル時代の銀行」という自分の地位や立場を利用して威張っているさまが「笠に着る」で表されています。「彼」は銀行という大きな権力を持った組織の一員ですので、自分の側の権威を利用して威張っているというわけです。例文3では「彼に女性を紹介してあげた」という自分が施した行為について、ことさらに恩を着せて威張りはしない、という意味で使われています。紹介した女性とめでたく婚約したのであれば、かなりの恩恵を与えたといえますよね。
「笠に着る」の類義語は?違いは?

ここまで、「笠に着る」という慣用句の意味や語源について紹介してきました。
「権力や権威、施しを根拠に他者に威張る」といった意味の言葉ですが、似た言葉や言い換えはあるのでしょうか?
その1「虎の威を借る狐」
「笠に着る」の類義語には「虎の威を借る狐」が挙げられます。
これは漢の時代に編纂された「戦国策」という書物から生まれた古事成語です。虎に食べられそうになった狐が、「私は動物たちの王だから、食べてはいけない。ついてきなさい」と虎を後ろに従えて歩くと、動物たちは確かに逃げていきます。でもそれは狐が王として恐れられているからではなく、後ろを歩く虎を恐れてのことです。そこから、「力のある者を頼みにして威張る小者」という意味になりました。「笠に着る」との違いは本人に力があったり、誰かに施した恩恵についていう場合には使えないという点になります。
その2「恩に着せる」
「恩に着せる」とは、「恩を施したことについて、ことさらにありがたく思わせようとする」ことを表す言葉です。誰かにしてあげたことについて威張ることを言いたいときにはこちらを使うのもよいでしょう。
「恩に着る」は「笠に着る」と似た語感の言葉ですが、こちらの「着る」は「相手の行為をありがたく受ける」という意味になります。
「笠に着る」の対義語は?
それでは、「笠に着る」の対義語はあるのでしょうか。
ぴったり対になるような慣用句はないのですが、大きい意味で言うと「威張る」の反対ですから、「謙虚」という意味の言葉が当てはまるといえます。
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