この記事では「懐に入る」について解説する。

端的に言えば懐に入るの意味は「取り入ること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大手企業に35年以上勤務し仕事でたくさんの文章を扱ってきたベテランのKAIKAIを紹介する。一緒に「懐に入る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/KAIKAI

東京の大手企業に35年以上勤務し、仕事でたくさんの文章を扱ってきた経験を持つ。学生時代から国語が得意で言葉の意味には自信あり。

「懐に入る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「懐に入る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「懐に入る」の意味は?

「懐に入る」には、次のような意味があります。

1.相手に気に入られてつながるを持つこと、取り入ること。
2.金銭を自分のものとすること、私すること。
3.相撲や柔道などの格闘技において相手の胸元に体を寄せ入れること、相手の隙を突いて飛び込むこと。

出典:実用日本語表現辞典「懐に入る」

「懐(ふところ)に入る」とは「相手に好意を持たれることによってつながりを強める」ことです。よって懐に入るのがうまい人とは相手に気に入られる人のことを言います。褒め言葉で使われることが多いのですが「自分の利益だけのために力のある人に働きかけるテクニックを持つ」といった皮肉の意味合いもあるのです。

「懐に入る」の語源は?

次に「懐に入る」の語源を確認しておきましょう。

中国の故事成語に「窮鳥懐に入る」という言葉があります。この意味は、「争い事には力を貸さなくてもよいが、追い詰められて逃げ場を失った鳥が人に懐に飛び込んできた時は、心ある人間なら同情するのが当然で、見捨ててはならない」ということです。その意味から「追い詰められたものが、どうしようもなくなって救いを求めること、あるいはそうした者には力を貸してやるべきだ」という意味で使われるようになりました。この故事成語から他人に取り入るのがうまいことを「懐に入る」と言うようになったのです。

\次のページで「「懐に入る」の使い方・例文」を解説!/

「懐に入る」の使い方・例文

「懐に入る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.女性はどの部署に異動しても距離を置かずに男性の上司の懐に入るのが上手だ。
2.彼女は少しプライドが高いタイプの女性の管理者なのでまわりの人の懐に入るのが苦手なのが弱点だ。
3.妻といると義父はいるも機嫌がいい。いつのまにか義父の懐に入ってしまうからなあ。

例文1は相手に取り入るのが上手だということを称賛しています。例文2はプライドが邪魔してなかなかまわりの人と溶け込むことができないということを言っていますね。例文3は自分だけ得をするように得意先に働きかけるのがうまいという皮肉の意味を込めて使われています。

「懐に入る」の類義語は?違いは?

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「懐に入る」の類義語は何でしょうか。

その1「心を開かせる」

「心を開かせる」とは「警戒心を持たせることなく相手がありのままの心で接することができるように仕向ける」ことの意味です。相手が嘘をついたり自分の気持ちを偽ったりすることなく素直な気持ちを伝えてくれることができるわけですね。「心を開かせる」ことができればビジネスにおけるコミュニケーションもはかれ、商談も円滑に進むし、男女の恋愛も成就するというわけです。「なんとか得意先のキーマンにあたる役員の心を開かせ、気に入られるようにしたい」などと使われます。

\次のページで「その2「取り入る」」を解説!/

その2「取り入る」

「取り入る」(とりいる)とは「自分の利益になるように目上の人や影響力のある人に取り計らう」ことです。わかりやすく言うと「偉い人などに気をつかって好かれるよう努力する」ことになります。「上司に取り入って希望していた部署に配置換えをしてもらうことができた」などと言うのです。

その3「関係を深める」

「関係を深める」とは「個人や団体などの距離感を縮めて関係を緊密に結びつける」という意味と「人と人との距離感を縮めて関係を親密に深める」という意味があります。後者の意味で「懐に入る」の類義語と言えるのです。「御社と弊社の関係を深めるために懇親会を開催したい」などと使われます。

「懐に入る」の対義語は?

「懐に入る」の対義語は何でしょうか。

その1「天邪鬼」

「天邪鬼」(あまのじゃく)とは「人に言うことと別の意見を言ったり、人が行うことと反対の行動を取ったり、本心はうれしいのに嫌だというそぶりをするといったへそ曲がりな性格の人」のことを言います。「懐に入る」のが人に取り入ることであるのに対して、「天邪鬼」はすすんで人から嫌われることをするのです。従って対義語と言えます。語源は、「天邪鬼」はもともと民話で語られている妖怪のことです。あるいは仏教において四天王に踏みつぶされている小鬼のことを言うという説もあります。

これらの妖怪や鬼の意味が転じて「片意地を通す」という意味で使われるようになったというわけです。「彼は天邪鬼なところがあるので上司の言うことをなかなか聞かない」などと使われます。

その2「斜に構える」

「斜に構える」「しゃにかまえる」であり「ななめにかまえる」とは読みません。「斜に構える」とは「何事にも正面から向き合って対応しないでからかったり皮肉ったりした態度で対応する」ことです。もともとは剣術で敵に対して刀を斜めに下げて構えることから、あらたまった様子や態度という意味になりました。それが転じて皮肉な態度をとると言った意味で使われるようになったのです。

「斜に構えないで、まじめに校長先生の言うことを聞きなさい」などと使われます。

「懐に入る」の英訳は?

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「懐に入る」は英語では何と言うのでしょうか。

\次のページで「「to get in someone's pocket」」を解説!/

「to get in someone's pocket」

「懐に入る」は英語では「to get in someone's pocket」と言います。あるいは「to help oneself to someone's wallet」と言いうのです。また、上流社会に取り入ろうとする人のことを「social climber」、上司の取り入ろうとすることを「flatter one's boss」、「flatter one's superior」と言います。

「懐に入る」を使いこなそう

この記事では「懐に入る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

相手の「懐に入る」ことはビジネスシーンにおいても恋愛シーンにおいても大切なことですね。自分の利益だけを考えて「懐に入る」のはおすすめできません。周囲からもひんしゅくを買うだけで、「あいつは懐に入るのがうまいからなあ」などと皮肉を言われかねないでしょう。しかし、真摯な気持ちで素直に自分をさらけ出して一生懸命に相手の「懐に入る」ことはきっと相手に好感を持たれて、よいビジネスの成果や恋愛相手を獲得できます。そんな時はきっと周囲も称賛してくれるものです。

人生、ここぞと言った時は思い切って相手の懐に飛び込んでみましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「懐に入る」の意味や使い方は?例文や類語をたくさんの文章を扱ってきたライターがわかりやすく解説!

「懐に入る」の使い方・例文

「懐に入る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.女性はどの部署に異動しても距離を置かずに男性の上司の懐に入るのが上手だ。
2.彼女は少しプライドが高いタイプの女性の管理者なのでまわりの人の懐に入るのが苦手なのが弱点だ。
3.妻といると義父はいるも機嫌がいい。いつのまにか義父の懐に入ってしまうからなあ。

例文1は相手に取り入るのが上手だということを称賛しています。例文2はプライドが邪魔してなかなかまわりの人と溶け込むことができないということを言っていますね。例文3は自分だけ得をするように得意先に働きかけるのがうまいという皮肉の意味を込めて使われています。

「懐に入る」の類義語は?違いは?

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「懐に入る」の類義語は何でしょうか。

その1「心を開かせる」

「心を開かせる」とは「警戒心を持たせることなく相手がありのままの心で接することができるように仕向ける」ことの意味です。相手が嘘をついたり自分の気持ちを偽ったりすることなく素直な気持ちを伝えてくれることができるわけですね。「心を開かせる」ことができればビジネスにおけるコミュニケーションもはかれ、商談も円滑に進むし、男女の恋愛も成就するというわけです。「なんとか得意先のキーマンにあたる役員の心を開かせ、気に入られるようにしたい」などと使われます。

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