この記事では「必要は発明の母」について解説する。

端的に言えば必要は発明の母の意味は「必要だと思うものは実現する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「必要は発明の母」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「必要は発明の母」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「必要は発明の母」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「必要は発明の母」の意味は?

「必要は発明の母」には、次のような意味があります。

発明は必要があるところから生まれるということ。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「必要は発明の母」

家事など毎日生活するうえで「これは不便だ」と思うことがあるでしょう。そんな時はいろいろ工夫して便利な道具を開発したいと考えるものです。そもそも発明とは、これまでなかった物や方法を新しく考え出すことで、特許を取得すればそれらの商品は法的にも守ることができます。

人間の歴史は、暮らしのなかで直面した問題を解決するために奮闘することの連続でした。便利な製品を考え出す必要性に迫られて、様々な工夫を重ねてきたのです。「必要は発明の母」とはこのように、多くの発明家によって問題を解決してきた事実を表現した言葉と言えるでしょう。

「必要は発明の母」の語源は?

次に「必要は発明の母」の語源を確認しておきましょう。発明と聞くと、多くの方々がアメリカの発明王トーマス・エジソンを思い浮かべるのではないでしょうか。今日の便利な生活を送っていくうえでエジソンの発明した数々の製品が役立っていることは誰もが認めざるを得ません。

「必要は発明の母」という言葉は、エジソンが言った言葉として一般に考えられていますが、実はアイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトによって著された『ガリバー旅行記』が由来となっています。そのなかに記された「必要は発明の母」という言葉をエジソンが拝借したため、エジソンの言葉だと誤って広まってしまいました。

『ガリバー旅行記』の正式なタイトルは『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリバーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』という非常に長いものです。この作品の第一篇「リリパット国渡航記」のなかに「必要は発明の母」という言葉が出てきます。『ガリバー旅行記』は子供向けの作品として認知されていますが、実際は当時のイギリス政府を痛烈に風刺したものです。

\次のページで「「必要は発明の母」の使い方・例文」を解説!/

「必要は発明の母」の使い方・例文

「必要は発明の母」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、例えば以下のように用いられます。

1.必要は発明の母と言うけれど、家事に関連した製品の発明が多いのはやはり主婦が不便と感じる場面が多かったからだろう。
2.最近は通常の生活を送っていればほとんど不便に思うことはない。これも必要は発明の母で、過去にいろいろと先人が考えて便利なグッズを完成させてくれたおかげだ。
3.パソコンのウィルス感染を防ぐためにいくつもワクチンソフトができている。パソコンを使う人を守るために、必要は発明の母と考えた人たちのおかげだ。

取材や講義をノートにいちいち書くのではなく、いつどこでも何度でも聞き直したいという要望から録音機が発明されました。また飛行機を安全に運行させたり、いざという時にいち早く救助できるようにするためにレーダーが発明されたのです。また英語を翻訳してくれたり辞典代わりに使える便利な機器もヒットして人気を集めています。

これらを誰も必要としなければ、こうした製品がつくられることはなかったでしょう。限りない人間の要求が、次々と便利な製品を生みだしました。文明の発達には「必要は発明の母」と言われる概念が必要不可欠だったのです。

「必要は発明の母」の類義語は?違いは?

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ここでは「必要は発明の母」の類義語を見ていきましょう。

その1「窮すれば通ず」

「窮(きゅう)すれば通ず」とは、行き詰まってどうしようもない状態になると、そのうちいい案が浮かんでなんとかなることを言ったものです。不便だと思って、なんとかしようと思うところから便利なものができるという意味の「必要は発明の母」によく似た言葉と言えます。

「窮すれば通ず」という言葉は古代中国の書『易経』が起源です。『易経』の本来の書名は単に『易』あるいは『周易』と言われています。古代中国の南宋以降、儒教で特に重視される文献の経書(けいしょ)に数えられるようになったことから『易経』と呼ばれるようになりました。

\次のページで「その2「陰極まりて陽生ず」」を解説!/

その2「陰極まりて陽生ず」

「陰極まりて陽生ず」は、なにをしてもうまくいかず進退窮まった最悪の状態になっても、それを境に運気が上昇し物事がどんどん好転していくことを意味しています。不便でなんとかしたいと困っているときに、ちょっとしたことからいいアイデアが生まれることから「必要は発明の母」の類義語の一つとしていいでしょう。

「陰極まりて陽生ず」は日本の戦国時代から江戸時代の僧侶・安楽庵策伝の著書『醒睡笑』が由来とも、中国宋代の禅僧・宏智正覚(わんししょうがく)の言葉が語源だとも言われています。いずれにしても冬至を陰極まる日とし、そこを過ぎてどんどん日が長くなって陽が生まれることを言ったものです。これを人生に例えれば、最悪の状態からあることをきっかけにどんどん運気が上昇していくことを表しています。

「必要は発明の母」の対義語は?

これまで「必要は発明の母」の類義語を解説してきました。それでは「必要は発明の母」の対義語はあるのでしょうか。アメリカのコラムニストであるデイル・ドーテンの著書『仕事は楽しいかね?』のなかで彼は「必要は発明の母かもしれないが、偶然は発明の父だ」と言っています。しかしこの言葉はデイル・ドーテンが著書のなかでちょっとした言葉遊びのように使っている言葉でしょう。歴史的に認知された言葉とは言えません。したがって「必要は発明の母」の対義語はないと言えるのではないでしょうか。

「必要は発明の母」の英訳は?

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最後に「必要は発明の母」の英訳を見ていきましょう。

「necessity is the mother of invention」

「necessity is the mother of invention」「必要は発明の母」の語源となったジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』のなかで使われた言葉で、そのまま「必要は発明の母」と訳すことができます。「need is the mother of invention」でも同じ意味になりますが、ここは『ガリバー旅行記』のように「necessity」という名詞を使った英語訳のほうがいいでしょう。

「必要は発明の母」を使いこなそう

この記事では「必要は発明の母」の意味・使い方・類語などを説明しました。現代は、いろいろな製品が世の中にあふれています。それをさらに便利なものにしようと改良を重ねて各社鎬(しのぎ)を削っている現状です。このようにして消費者にとってより使いやすいものにしようと切磋琢磨することから、一層暮らしやすい環境ができあがっていきます。あなたも世界を驚かせるような発明をする必要はないですが、身の回りを見渡して少しでも不便だなと思うものがあったら、なんとか改良できないかと考えることを習慣づけてはいかがでしょうか。

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【慣用句】「必要は発明の母」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「必要は発明の母」について解説する。

端的に言えば必要は発明の母の意味は「必要だと思うものは実現する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「必要は発明の母」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「必要は発明の母」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「必要は発明の母」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「必要は発明の母」の意味は?

「必要は発明の母」には、次のような意味があります。

発明は必要があるところから生まれるということ。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「必要は発明の母」

家事など毎日生活するうえで「これは不便だ」と思うことがあるでしょう。そんな時はいろいろ工夫して便利な道具を開発したいと考えるものです。そもそも発明とは、これまでなかった物や方法を新しく考え出すことで、特許を取得すればそれらの商品は法的にも守ることができます。

人間の歴史は、暮らしのなかで直面した問題を解決するために奮闘することの連続でした。便利な製品を考え出す必要性に迫られて、様々な工夫を重ねてきたのです。「必要は発明の母」とはこのように、多くの発明家によって問題を解決してきた事実を表現した言葉と言えるでしょう。

「必要は発明の母」の語源は?

次に「必要は発明の母」の語源を確認しておきましょう。発明と聞くと、多くの方々がアメリカの発明王トーマス・エジソンを思い浮かべるのではないでしょうか。今日の便利な生活を送っていくうえでエジソンの発明した数々の製品が役立っていることは誰もが認めざるを得ません。

「必要は発明の母」という言葉は、エジソンが言った言葉として一般に考えられていますが、実はアイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトによって著された『ガリバー旅行記』が由来となっています。そのなかに記された「必要は発明の母」という言葉をエジソンが拝借したため、エジソンの言葉だと誤って広まってしまいました。

『ガリバー旅行記』の正式なタイトルは『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリバーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』という非常に長いものです。この作品の第一篇「リリパット国渡航記」のなかに「必要は発明の母」という言葉が出てきます。『ガリバー旅行記』は子供向けの作品として認知されていますが、実際は当時のイギリス政府を痛烈に風刺したものです。

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