この記事では「水魚の交わり」について解説する。

端的に言えば水魚の交わりの意味は「親密な間柄」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「水魚の交わり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「水魚の交わり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「水魚の交わり(すいぎょのまじわり)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「水魚の交わり」の意味は?

「水魚の交わり」には、次のような意味があります。

《「蜀志」諸葛亮伝から。劉備が諸葛孔明と自分との間柄をたとえた言葉》水と魚との切り離せない関係のような、非常に親密な交友。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「水魚の交わり」

「水魚の交わり」とは故事成語のひとつ。水があるからこそ魚は生きていけるという様子から「かけがえのない友の存在」をたとえた言葉で、“切っても切り離せない関係”“非常に親密な関係”をたとえて使います。また、友人だけでなく夫婦の関係や、深い主従関係で用いることも可能です。

なお漢文や四字熟語では「水魚之交(すいぎょのこう)」と訳す場合もありますが、意味は変わりません。

「水魚の交わり」の語源は?

次に「水魚の交わり」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の三国志に由来しており、『蜀(しょく)志・諸葛亮伝』に語源が見られます。

中国の三国時代、蜀の王となる劉備(りゅうび)諸葛孔明(しょかつこうめい)を軍師として臣下に迎えました。劉備はすぐれた際を持つ孔明を非常に気に入り、二人の仲は次第に深まり、親密になっていきます。ところがその様子は、関羽(かんう)と張飛(ちょうひ)といった劉備の古参の部下には面白くありません。

そうして不満をもらした部下に対し、なだめるように劉備が口にしたのが「孤の孔明あるは、猶魚の水有るがごとし」です。「私たちの間柄は水と魚のようなものだから切っても切り離せない」という意味を持って使われたこの言葉が「水魚の交わり」の由来と言われています。

なお、この言葉が用いられた三国時代は、乱世の生き残りをかけていた時代。つまりこの言葉は「孔明が居なければ私は死んでしまうだろう」という意味も強く含み、腹心の家臣も劉備がそこまで言うのならと納得したと言われています。事実、この後厚い信頼を受けた孔明は大活躍を見せ、劉備は蜀の地を収めることに成功しました。

\次のページで「「水魚の交わり」の使い方・例文」を解説!/

「水魚の交わり」の使い方・例文

「水魚の交わり」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.立場の違う二人だったが、彼らは水魚の交わりと言えるほどの親友になった。
2.水魚の交わりだと、僕は幼馴染に対して胸を張って言えるよ。
3.30年以上コンビとして連れ添った彼らは、水魚の交わりの関係だろう。
4.いつも仲良く、寄り添って暮らしているあの夫婦は、まさに水魚の交わりと言えそうだ。

「水魚の交わり」とは、切っても切れないような“非常に親密な間柄”に対して用いる言葉。友人同士に使うのをはじめ、例文3のようなパートナーや、例文4のように夫婦仲に対して使うことも可能です。

反対に、浅い関係の場合には「水魚の交わり」を用いるのは誤用なので注意しましょう。いくら意気投合したとしても、数日や数時間などの短い時間では「水と魚」ほど深い関係にもなれません。「水魚の交わり」を使う場合は、非常に深い関係性を指して使うようにしましょう。

「水魚の交わり」の類義語は?違いは?

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続いて「水魚の交わり」の類義語について説明します。

「管鮑の交わり」

「管鮑の交わり(かんぽうのまじわり)」とは、“互いに理解し合っていて、利害を超えた信頼の厚い友情”を表す言葉で、友人としての親密な交わりや仲睦まじい間柄を指して用います。「管」とは春秋時代の名宰相である管仲(かんちゅう)のことで、「「鮑」とはその親友の鮑叔牙(ほうしゅくが)という人物を指し、彼らの深い間柄をたとえたのが「管鮑の交わり」です。

互いに理解し、信頼し合った親密な関係を指す言葉で、「水魚の交わり」の類義語と言えるでしょう。

\次のページで「「刎頸の交わり」」を解説!/

「刎頸の交わり」

「刎頸の交わり(ふんけいのまじわり)」も、きわめて親密な付き合いをたとえた故事成語です。「刎頸(ふんけい)」とは首をはねることを意味し、その友人のためなら首をはねられても悔いはない、と思うほどの間柄を指して「刎頸の交わり」と言います。この言葉は中国の春秋時代の武将である廉頗(れんぱ)と、藺相如(りんしょうじょ)の仲を指した故事によって生まれました。

「刎頸の交わり」も親密な付き合いをたとえた言葉として、「水魚の交わり」の類義語表現のひとつと言えます。

「水魚の交わり」の対義語は?

次に「水魚の交わり」と反対の意味を持つ、対義語についても紹介します。

「犬猿の仲」

「犬猿の仲(けんえんのなか)」とは仲の悪いことのたとえで、“互いにいがみあう関係”を指した言葉。日本では古くから犬と猿の相性が悪いとされており、日本独特の言い回しです。

仲の良さや親密な関係である「水魚の交わり」に対し、いがみ合い敵対する「犬猿の仲」はまさに反対の表現といえるでしょう。

「水魚の交わり」の英訳は?

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最後に「水魚の交わり」の英語訳についても確認していきます。

「A Damon and Pythias friendship.」

「A Damon and Pythias friendship.」とは、デイモン(ダモン)とピュティアス(フィンティアス)という人物の友情をたとえた英語の慣用句で、固い友情で結ばれた親友を意味する言葉として用いられます。

英語では非常に有名なことわざです。「水魚の交わり」同様に深い二人の絆を表現する際に使う言葉のため、「水魚の交わり」を表現するのにもこの表現が良いでしょう。ただしこちらは「friendship」とあるように、「親友」というニュアンスが強いため、“無二の親友”という意味で使うのがおすすめです。

\次のページで「「水魚の交わり」を使いこなそう」を解説!/

「水魚の交わり」を使いこなそう

この記事では「水魚の交わり」の意味・使い方・類語などを説明しました。由来が三国志でもあるように、耳にしたことがあった人も多いかもしれません。

後世にまで伝えられる親密な関係性とは、羨ましいものでもありますね。自分にとっても大事な誰かと、縁を繋げることができるようにしたいものです。

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【故事成語】「水魚の交わり」の意味や使い方は?例文や類語を元広告会社勤務ライターがわかりやすく解説!

この記事では「水魚の交わり」について解説する。

端的に言えば水魚の交わりの意味は「親密な間柄」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広告会社で経験を積み、文章の基本と言葉の使い方を知るライターのHataを呼んです。一緒に「水魚の交わり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Hata

以前は広告会社に勤務しており、多くの企業の広告作成経験を持つ。相手に合わせた伝え方や言葉の使い方も学び、文章の作成や校正が得意。現在はその経験をいかし、ライターとして活動中。

「水魚の交わり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「水魚の交わり(すいぎょのまじわり)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「水魚の交わり」の意味は?

「水魚の交わり」には、次のような意味があります。

《「蜀志」諸葛亮伝から。劉備が諸葛孔明と自分との間柄をたとえた言葉》水と魚との切り離せない関係のような、非常に親密な交友。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「水魚の交わり」

「水魚の交わり」とは故事成語のひとつ。水があるからこそ魚は生きていけるという様子から「かけがえのない友の存在」をたとえた言葉で、“切っても切り離せない関係”“非常に親密な関係”をたとえて使います。また、友人だけでなく夫婦の関係や、深い主従関係で用いることも可能です。

なお漢文や四字熟語では「水魚之交(すいぎょのこう)」と訳す場合もありますが、意味は変わりません。

「水魚の交わり」の語源は?

次に「水魚の交わり」の語源を確認しておきましょう。この言葉は中国の三国志に由来しており、『蜀(しょく)志・諸葛亮伝』に語源が見られます。

中国の三国時代、蜀の王となる劉備(りゅうび)諸葛孔明(しょかつこうめい)を軍師として臣下に迎えました。劉備はすぐれた際を持つ孔明を非常に気に入り、二人の仲は次第に深まり、親密になっていきます。ところがその様子は、関羽(かんう)と張飛(ちょうひ)といった劉備の古参の部下には面白くありません。

そうして不満をもらした部下に対し、なだめるように劉備が口にしたのが「孤の孔明あるは、猶魚の水有るがごとし」です。「私たちの間柄は水と魚のようなものだから切っても切り離せない」という意味を持って使われたこの言葉が「水魚の交わり」の由来と言われています。

なお、この言葉が用いられた三国時代は、乱世の生き残りをかけていた時代。つまりこの言葉は「孔明が居なければ私は死んでしまうだろう」という意味も強く含み、腹心の家臣も劉備がそこまで言うのならと納得したと言われています。事実、この後厚い信頼を受けた孔明は大活躍を見せ、劉備は蜀の地を収めることに成功しました。

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