この記事では「知る権利」について解説する。

端的に言えば知る権利の意味は「情報公開を請求する権利」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「知る権利」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。大学卒業後は資格取得のために法律の勉強もしたため、このテーマのライターとして適しているだろう。

「知る権利」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「知る権利」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「知る権利」の意味は?

「知る権利」には、次のような意味があります。

国民が国の政治や行政についての情報を知ることのできる権利。民主主義国家での国民の基本的権利として、言論・報道の自由や情報公開法制化の基盤となるもの。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「知る権利」

知る権利」(しるけんり)とは、国民が国や地方公共団体などの情報を知ることのできる権利のことです。「知る権利」により、国民は国や地方公共団体に情報公開を請求することができます。

日本の場合、「知る権利」の根拠となっているものは、日本国憲法第21条にある「表現の自由」です。正確に言えば、憲法は「知る権利」について明文化していません。しかし、これまで行われた最高裁の判例により、憲法で「知る権利」は保障されているとするのが通説となっています。

「知る権利」の語源は?

次に「知る権利」の語源を確認しておきましょう。

「知る権利」という概念は第二次大戦後に生まれましたが、法的に認められるきっかけとされるのが、アメリカで起きたベトナム秘密報告書事件(またはペンタゴン・ペーパーズ暴露事件)とされます。

1971(昭和46)年、アメリカの大手新聞ニューヨーク・タイムズが、ベトナム戦争などに関するアメリカ政府の公文書についての記事を掲載しました。その公文書こそが「ペンタゴン・ペーパーズ」(ベトナム秘密報告書)です。連邦政府は、重要文書の漏洩は国益を損なうとして、ニューヨーク・タイムズに記事の差し止めを求める訴訟を起こしました。しかし、連邦最高裁はこの訴えを却下。そして、その判決以降は情報公開のあり方について大きく見直されることとなったのです。

\次のページで「「知る権利」の使い方・例文」を解説!/

「知る権利」の使い方・例文

「知る権利」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.私にだって知る権利くらいあるから聞いてたっていいよね。
2.消費者には、生産者が適切な方法で商品を製造しているのかを知る権利があるのではないだろうか。
3.我々は知る権利を行使して、町と建設会社が恒常的に癒着していたのかなどの真相を解明していき、談合の再発を阻止しなければならない。

「知る権利」を、本来の意味で使っているものが例文3です。町と建設会社による談合について、「知る権利」に基づいて情報公開を求め、事件の全容を明かしていこうといった内容を表現しています。

しかし、「知る権利」という言葉自体は、国や地方公共団体に対するものに限って使われているわけではないというのが現状です。例文1や2を見てもらえば分かるでしょう。例文2で対象とするものは生産者ですから、ほぼ民間の事業者に対する「知る権利」について述べたものと言えるはずです。例文1にいたっては、個人的なことで「知る権利」という言葉を使っています。

よって、言葉の上での「知る権利」は、憲法で保障されたものと一概には言えません。単に「私もそのことを知っていても良いはずだ」などと考えることを、「知る権利」という言葉で表しているのです。

「知る権利」の類義語は?違いは?

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ところで、「知る権利」に類義語はあるのでしょうか。あるとすれば、「知る権利」との違いも見ていきましょう。

「アクセス権」

「知る権利」の類義語とは言いがたいですが、似たもので「アクセス権」というものがあります。同じく日本国憲法第21条が保障すると考えられているものです。

「アクセス権」という言葉にも、「公の情報を入手して利用する権利」という意味があります。しかし、「アクセス権」という言葉の意味は、それだけにはとどまりません。「マスメディアに対して個人が情報を送る権利」も「アクセス権」ですし、「コンピューターのネットワークやファイルなどを利用する権利」も「アクセス権」です。つまり、国や地方公共団体対して行使する「アクセス権」は、「知る権利」とほぼ同義ですが、マスメディアやコンピューターの分野でも「アクセス権」という言葉が用いられることに留意しなければなりません。

\次のページで「「知る権利」の対義語は?」を解説!/

「知る権利」の対義語は?

では、「知る権利」の対義語は何でしょうか。

「知らされない権利」

「知る権利」とは反対に、「知らされない権利」というものも存在します。ただし、「知らされない権利」は行政などで使われているものではありません。

医療の現場では、いわゆる「リスボン宣言」というものが尊重されています。これは、1981年にポルトガルのリスボンで採択された、特に患者の権利に関する医療倫理をうたったものです。その中で、「患者は、他人の生命の保護に必要とされていない場合に限り、その明確な要求に基づき情報を知らされない権利を有する」とあります。たとえば、命を脅かすような病に冒されていた場合、そのことを宣告すればショックを受ける患者は少なからずいるのではないでしょうか。そういった人にはあえて病の詳細を知らせずに、治療に専念させることで病の進行を遅らせる方が良い場合もあるのです。

「知らされない権利」があることで、患者本人が取りうる選択肢が1つ増えることになります。取り扱いに細心の注意を要することですので、少しでも患者一人一人に合う方法を探っていかなければなりません。

「知る権利」の英訳は?

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さらに「知る権利」の英訳も見てみましょう。

「right to know」

「right」と聞いて、迷うことなく「右」と頭の中で翻訳する人は多いのではないでしょうか。しかし、「right」には「右」という意味だけでなく、「正しい」や「権利」といった意味もあります。

「知る権利」を英訳する際にも、この「right」を使えば簡単です。「知る」も「know」とすぐに訳せるでしょう。あとはto+不定詞を使って名詞形にするだけです。「right to know」で「知る権利」となります。

「知る権利」を使いこなそう

この記事では「知る権利」の意味・使い方・類語などを説明しました。

本来の「知る権利」は、市民が国などに対して情報開示請求などを行える、日本国憲法で保障されている権利のことです。しかし、言葉の上での「知る権利」は、それほど堅苦しいものではありません。「私だって知っててもいい」ぐらいの感覚で「知る権利」という言葉は使われています。やはり言葉は常に変化するものですので、「知る権利」という言葉が広く使われるようになったのは自然な流れかもしれません。それでも、本来の「知る権利」の意味は覚えておいた方が好ましいでしょう。

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国語言葉の意味

「知る権利」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「知る権利」について解説する。

端的に言えば知る権利の意味は「情報公開を請求する権利」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「知る権利」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。大学卒業後は資格取得のために法律の勉強もしたため、このテーマのライターとして適しているだろう。

「知る権利」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「知る権利」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「知る権利」の意味は?

「知る権利」には、次のような意味があります。

国民が国の政治や行政についての情報を知ることのできる権利。民主主義国家での国民の基本的権利として、言論・報道の自由や情報公開法制化の基盤となるもの。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「知る権利」

知る権利」(しるけんり)とは、国民が国や地方公共団体などの情報を知ることのできる権利のことです。「知る権利」により、国民は国や地方公共団体に情報公開を請求することができます。

日本の場合、「知る権利」の根拠となっているものは、日本国憲法第21条にある「表現の自由」です。正確に言えば、憲法は「知る権利」について明文化していません。しかし、これまで行われた最高裁の判例により、憲法で「知る権利」は保障されているとするのが通説となっています。

「知る権利」の語源は?

次に「知る権利」の語源を確認しておきましょう。

「知る権利」という概念は第二次大戦後に生まれましたが、法的に認められるきっかけとされるのが、アメリカで起きたベトナム秘密報告書事件(またはペンタゴン・ペーパーズ暴露事件)とされます。

1971(昭和46)年、アメリカの大手新聞ニューヨーク・タイムズが、ベトナム戦争などに関するアメリカ政府の公文書についての記事を掲載しました。その公文書こそが「ペンタゴン・ペーパーズ」(ベトナム秘密報告書)です。連邦政府は、重要文書の漏洩は国益を損なうとして、ニューヨーク・タイムズに記事の差し止めを求める訴訟を起こしました。しかし、連邦最高裁はこの訴えを却下。そして、その判決以降は情報公開のあり方について大きく見直されることとなったのです。

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