この記事では「そっちのけ」について解説する。

端的に言えばそっちのけの意味は「ほうっておくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「そっちのけ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「そっちのけ」の意味や語源・使い方まとめ

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「そっちのけ」という言葉をご存知ですか。「宿題もそっちのけにして遊びに行ってしまった」などと言いますね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「そっちのけ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「そっちのけ」の意味は?

まず初めに、「そっちのけ」の意味を国語辞典で確認してみましょう。「そっちのけ」には、次のような意味があります。

1.かまわずにほうっておくこと。また、そのさま。
2.本職をしのぐこと。また、そのさま。そこのけ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「そっちのけ」

「そっちのけ」は漢字で「其方退け」と書きます。しなければならないことがあるのに、別のことに心が移っているためにそのままにしておくことを表す言葉です。ある対象を、気に止めずにほうっておくことや、相手にしないことの意味で用いられます。また、本職の人に負けないほどすぐれているという意味でも使われる言葉なのですよ。

「そっちのけ」の語源は?

次に「そっちのけ」の語源を確認しておきましょう。

「其方(そっち)」は「そちら」のややくだけた感じの言葉です。自分より少し離れた方向のことや、聞き手側の人を指す、もしくは聞き手のすぐそばにいる人を指す言葉として用いられます。「退け(のけ)」は「他の場所へ移すこと」「取り除くこと」「のけものにすること」を意味する表現です。ですから「そっちのけ」は、「そちらの方へ移して置いておく」といったことを表す言葉なのですね。ちょっと離れた所へ退けておいたら、そのまま放っておくことになってしまいますね。そこから、本当は大事にしたり熱心に取り組んだりしなければならないことを、なおざりにして見向きもしないような状態を表す言葉となったのです。また、のけものにするという意味もありますから、そこから転じて専門家以上の腕前を持つことも表す言葉となったのですよ。

「そっちのけ」の使い方・例文

「そっちのけ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「そっちのけ」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.元日であるにも関わらず新機能のリリースがあったため、責任者としては、家族そっちのけで仕事をせざるを得なかった。
2.代理店の担当者と、広告内容はそっちのけにしてサービス概要について熱く語ってしまった。
3.検索結果一覧に表示されたキーワードを参考にせよとの指示そっちのけに、勝手なコメントをシェアしたことがわかった。
4.彼が有名シェフそっちのけの料理の腕前を持っていることは、私だけのひみつだ。

「そっちのけ」は、しなければならないことがあるのに、他のことに気持ちが移ってしまってそのまま放っておいてしまうことを表す時に使われます。「仕事などそっちのけで趣味に没頭する」「他の人はそっちのけで自分のことばかり主張する」といったように、本来するべきことを放置して別のことをしてしまうことを表すのです。また、「プロそっちのけの腕前」「先生そっちのけの上手さ」といったように、その道で知れ渡った人さえ脇に退けられてしまうような、はるかに優れていることを表す時にも用いられます。「そこのけそこのけお馬が通る」の「そこのけ」の意味も持っているのですよ。

「そっちのけ」の類義語は?違いは?

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「そっちのけ」の類義語を見ていきましょう。

その1「ほったらかし」

「ほったらかし」は「気をつけたり手を加えたりしないで、そのままに放置しておくこと」を表す言葉です。「そっちのけ」は別のことに心が移ってしまった結果、そのまま放置してくというニュアンスを含みますが、「ほったらかし」は、ただそのまま放置しておくことを表すのですよ。「約束をほったらかしにする」などと用います。

その2「二の次」

「二の次(にのつぎ)」は「2番目、そのつぎ、あとまわし」を意味する言葉です。それを第一の重点としないことを表します。「そっちのけ」と似た意味を持っていますね。「​話は二の次にして早く片付けなさい」 などと用いますよ。

その3「ないがしろ」

「ないがしろ」は漢字で「蔑ろ」と書きます。「あってもないもののように軽んじること」を意味する言葉です。侮り軽んずること、冷たくあしらうことなどを意味します。「親を蔑ろにする」などと用いますね。

\次のページで「その4「なおざり」」を解説!/

その4「なおざり」

「なおざり」は漢字で「等閑」と書きます。「いいかげんにしておくさま」を表す言葉です。本気でないこと、心がこもっていないこと、大事に思わないこと、おろそかにすることを表します。似た言葉に「おざなり」があるのをご存知ですか。両者ともに「いい加減な対応だ」という共通の意味がありますが、「おざなり」はいい加減であるにしろ何らかの対応をするのに対し、「なおざり」は何の対応もしないというところに違いがあるのですよ。

その5「そこのけ」

「そこのけ」は「それよりもはるかにすぐれていること、その道で知れわたった者をしのぐこと」を表す言葉です。「本職をしのぐこと」を意味する「そっちのけ」と同じ意味を持つ言葉なのですね。多くは名詞について接尾語的に用いられます。「本職そっちのけの腕前」などと言いますね。

「そっちのけ」の対義語は?

「そっちのけ」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

その1「尊ぶ」

「そっちのけ」の対義語は特にありません。強いてあげるとすれば「尊ぶ(とうとぶ)」があげられるでしょう。「尊ぶ」は「うやまって大切にする」「価値あるものとして重んじる」「尊重する」ことを意味する言葉です。かまわずに放っておくことを意味する「そっちのけ」とは反対の意味を持っていますね。

その2「箱入り」

もうひとつ「箱入り(はこいり)」もあげられるかと思います。「箱入り」は「箱に入れて秘蔵するように大切にすること」を意味する言葉です。「箱入り娘」などと言いますね。この言葉も「そっちのけ」とは反対の意味を持っていると言えるでしょう。

「そっちのけ」の英訳は?

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「そっちのけ」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

その1「ignore」

「ignore」は「無視する、知らないふりをする」ことを意味する単語です。ラテン語で「知らない」を意味する言葉に由来した言葉なのですよ。

\次のページで「その2「neglect」」を解説!/

その2「neglect」

「neglect」は「無視する、軽視する、見過ごす、怠る、おろそかにする、顧みない」ことを意味する単語です。ラテン語で「選ばない」を意味する言葉に由来しています。「ignore」よりも「放っておく」というニュアンスが強くなりますね。

「pay no attention」

「pay no attention」は「~に全く注意を払わない、~を気に留めない、~をおろそかにする、~を顧みない」といったことを意味します。このフレーズを「そっちのけ」を表現するのに使うことができますよ。

He ignores the facts and forms whimsical theories.
彼は事実をそっちのけにして勝手な説を立てる。

He neglects his studies and plays all the time.
彼は勉強をそっちのけにして遊んでばかりいる。

He always pays no attention to his appearance.
彼はいつも自分の服装はそっちのけだ。

「そっちのけ」を使いこなそう

この記事では「そっちのけ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「そっちのけ」は「構わずに放っておくこと」「本職をしのぐこと」を意味する言葉でしたね。宿題や勉強そっちのけで遊んでしまう。仕事そっちのけで趣味に走ってしまう。誰にでもそんな衝動にかられることはあるかと思います。いったんは「そっちのけ」にしてしまったとしても、ふと立ち止まって、退けたものに今一度目を向けられたらいいのかもしれないですね。そんなことを思いながら、「そっちのけ」という言葉、ぜひ使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

「そっちのけ」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「そっちのけ」について解説する。

端的に言えばそっちのけの意味は「ほうっておくこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「そっちのけ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「そっちのけ」の意味や語源・使い方まとめ

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「そっちのけ」という言葉をご存知ですか。「宿題もそっちのけにして遊びに行ってしまった」などと言いますね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「そっちのけ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「そっちのけ」の意味は?

まず初めに、「そっちのけ」の意味を国語辞典で確認してみましょう。「そっちのけ」には、次のような意味があります。

1.かまわずにほうっておくこと。また、そのさま。
2.本職をしのぐこと。また、そのさま。そこのけ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「そっちのけ」

「そっちのけ」は漢字で「其方退け」と書きます。しなければならないことがあるのに、別のことに心が移っているためにそのままにしておくことを表す言葉です。ある対象を、気に止めずにほうっておくことや、相手にしないことの意味で用いられます。また、本職の人に負けないほどすぐれているという意味でも使われる言葉なのですよ。

「そっちのけ」の語源は?

次に「そっちのけ」の語源を確認しておきましょう。

「其方(そっち)」は「そちら」のややくだけた感じの言葉です。自分より少し離れた方向のことや、聞き手側の人を指す、もしくは聞き手のすぐそばにいる人を指す言葉として用いられます。「退け(のけ)」は「他の場所へ移すこと」「取り除くこと」「のけものにすること」を意味する表現です。ですから「そっちのけ」は、「そちらの方へ移して置いておく」といったことを表す言葉なのですね。ちょっと離れた所へ退けておいたら、そのまま放っておくことになってしまいますね。そこから、本当は大事にしたり熱心に取り組んだりしなければならないことを、なおざりにして見向きもしないような状態を表す言葉となったのです。また、のけものにするという意味もありますから、そこから転じて専門家以上の腕前を持つことも表す言葉となったのですよ。

「そっちのけ」の使い方・例文

「そっちのけ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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