この記事では「質に入れる」について解説する。

端的に言えば質に入れるの意味は「お金を借りるために物品を保証として預けること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「質に入れる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。「どう考えてみても、質入れできるものは一つもない」という彼女が「質に入れる」について解説する。

「質に入れる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「質に入れる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「質に入れる」の意味は?

「質に入れる」という言葉はデジタル大辞泉に記載されていません。

そこで「質入れ」「質屋」という言葉から、「質に入れる」の意味をみていくことにします。

質入れ

1.借金の際、その担保として物品を質屋などに預けること。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「質入れ」

質屋

1.物品を質にとって金銭の貸し付けを行う業者。また、その店。江戸時代から庶民の金融機関として普及した。質店(しちみせ)。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「質屋」

「質入れ」と「質屋」、この二つの意味から「質に入れる」とは「物品をその保証として金銭の貸付を行う質屋に預け、その店から借金をすること」という意味であることがわかりますね。

今日、お金が必要になった際に利用するのは個人ローンやリサイクルショップ。しかし、このような方法がなかった頃、庶民がお金を工面するために利用したのが質屋です。

例えば急にお金が必要になった時、カメラを質屋に持って行き預けると、その価値に見合ったお金を貸してもらうことができます。返済日までに借りたお金と利息をその質屋に返せば、預けたカメラは戻ってくるという仕組み。

返済日までに借りたお金を返すことができなかった場合、カメラは戻ってきませんが、借りたお金とその利息を返す必要は無くなります。お金を貸した質屋は保証として預かっていたカメラを売却することができるので、損はしません。

\次のページで「「質に入れる」の語源は?」を解説!/

「質に入れる」の語源は?

次に「質に入れる」の語源を確認しておきましょう。

質は「値打ちが釣り合う」「貨幣と物品」という二つの意味からできている漢字。「貨幣と物品の値打ちが釣り合う」ということから「物品を介してお金を借りる」という「質に入れる」と言葉が生まれました。

「質に入れる」の使い方・例文

「質に入れる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

例文1.質屋を出てきたところで友達に会った。「また質屋通いか。今度の質草は何だい?」と訊かれ、「質に入れたんじゃない。質流れの時計を買ったんだ」と、答えた。

例文2.質に入れたあの小袖は母の形見。返済期限を何とかもう少し先に延ばしてもらえませんか。借りたお金は必ずお返しいたします」と彼女は質屋の主に頼み込んだ。

例文3.「『女房を質に入れても初鰹』と、言うけれど…そうまでしても食べたいって気持ちもわかるなぁ」。そう言いながら、夫は高知から送られてきたカツオのたたきを幸せそうに食べた。

例文1:「質草」とは「質物(しちもつ)」とも言い、質屋にお金を借りる保証として預ける品物のこと貸付金(元金と利息)の返済が期日までに履行されないと、その質草の所有権は質屋に移るのですが、この所有権が移ること、またその品物を「質流れ」といいます。

例文2:小袖は着物の仕立て方の一つ。江戸時代、一般的な女性は普段着として小袖を着ていました。現在ではブランド品等の高級品がリサイクルショップ等に持ち込まれますね。しかしこの時代、質草として質屋に預けられたのは高級品だけではありません。小袖のような普段着や日用品も預けられました。

例文3:女房を質に入れても初鰹」とは「女房を質に入れないと食べられないほど高価な初鰹だが、そこまでしても食べたいものだ」という意味です。鮮魚を運ぶ手段がなかった江戸時代、初鰹はとても高価な魚でした。しかし、そこは江戸っ子。「値段が高い等、ケチくさいことを言うな。江戸っ子なら女房を質にいれても初鰹を買うというくらいの気持ちを持て」ということですね。

「質に入れる」の類義語は?違いは?

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「質に入れる」の類義語をみていきましょう。

\次のページで「「担保」」を解説!/

「担保」

デジタル大辞泉によると、「担保」には次のような意味があります。

1.将来生じるかもしれない不利益に対して、それを補うことを保証すること、または保証するもの。抵当。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「担保」

銀行へ行って、ただ、「1000万円貸して下さい」と言っても貸してはくれません。当然ですよね。返してもらえない可能性もあるのに「はい。どうぞ」とは言えません。そこで「所有する土地を担保にしますから」と言えば話は変わってきます。

銀行は将来貸したお金が返済されなかったとしても(将来生じるかもしれない不利益)、担保としていた土地を売却することによって損失を出さずにすむ(それを補うことを保証する)訳です。実際に融資(お金を貸すこと)が行われるまでには担保にする土地の価値や返済条件等に関して銀行(貸す側)と顧客(借りる側)の間で細かなやり取りが行われます。

「質に入れる」の対義語は?

続いて対義語です。

「質受け」

「質に入れる」が「借金のために物品を質屋に預けること」であるのに対し、「質受け」とは「質屋に借金(借りたお金と利息)を返済し、質草として預けていた品物を返してもらうこと」です。

質屋のような形が登場したのは鎌倉時代。源氏が平氏を滅ぼし、源頼朝が鎌倉幕府を開いたのは諸説ありますが、1185年と言われています。質屋の原型ができたきっかけは物々交換から、貨幣経済へと変化したこと。江戸時代には今の質屋のシステムが概ね完成し、質屋は「手軽な金融機関」として大いに庶民に利用されました。

「質に入れる」の英訳は?

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「質に入れる」を英語で表現すると、どのようになるのでしょうか。

\次のページで「「質に入れる」を使いこなそう」を解説!/

英文1. The man who lost his job pawned his camera to earn a living.

職を失ったその男は生活費を得るためにカメラを質に入れた

英文2.  She put the jewel she got from the man into pawnbrokers and exchanged it for money, and said to him, "I lost that jewel, please buy it again."

彼女はその男からもらった宝石を質に入れて金に換え、その男に「あの宝石を無くしたから、又買ってちょうだい」と言った。

英文1「pawned his camera to earn a living」「生活費を得るためにカメラを質に入れた」という意味。「お金を得るためにカメラを質に入れる」を英語で表現する場合は「pawn his camera to get money」となります。

英文2. 「put the jewel she got from the man into pawnbrokers」は直訳すると「その男からもらった宝石を質屋に置いた」「pawnbrokers」が質屋という意味。日本語でも質に入れることを「質に置く」と表現します。世のお姉さま方の中には複数の男性に同じ品物をおねだりし、一つだけを残して他はリサイクルショップに売却したり質に入れたりする方もいるそうですよ。

「質に入れる」を使いこなそう

この記事では「質に入れる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「質に入れる」は「物品をその保証として金銭の貸付を行う質屋に預け、その店から借金をすること」という意味。類義語は「担保」、対義語は「質受け」、英語では「pawn A to get money」等と表現されることがわかりましたね。

物品を質草として預かり、お金を貸すというのが質屋のシステムでしたが、現在では預かるだけでは無く買い取りも行っています。時代に合わせて変わっていくのは長い歴史を持つ質屋でも例外ではありません。

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国語言葉の意味

【慣用句】「質に入れる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「質に入れる」について解説する。

端的に言えば質に入れるの意味は「お金を借りるために物品を保証として預けること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「質に入れる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。「どう考えてみても、質入れできるものは一つもない」という彼女が「質に入れる」について解説する。

「質に入れる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「質に入れる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「質に入れる」の意味は?

「質に入れる」という言葉はデジタル大辞泉に記載されていません。

そこで「質入れ」「質屋」という言葉から、「質に入れる」の意味をみていくことにします。

質入れ

1.借金の際、その担保として物品を質屋などに預けること。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「質入れ」

質屋

1.物品を質にとって金銭の貸し付けを行う業者。また、その店。江戸時代から庶民の金融機関として普及した。質店(しちみせ)。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「質屋」

「質入れ」と「質屋」、この二つの意味から「質に入れる」とは「物品をその保証として金銭の貸付を行う質屋に預け、その店から借金をすること」という意味であることがわかりますね。

今日、お金が必要になった際に利用するのは個人ローンやリサイクルショップ。しかし、このような方法がなかった頃、庶民がお金を工面するために利用したのが質屋です。

例えば急にお金が必要になった時、カメラを質屋に持って行き預けると、その価値に見合ったお金を貸してもらうことができます。返済日までに借りたお金と利息をその質屋に返せば、預けたカメラは戻ってくるという仕組み。

返済日までに借りたお金を返すことができなかった場合、カメラは戻ってきませんが、借りたお金とその利息を返す必要は無くなります。お金を貸した質屋は保証として預かっていたカメラを売却することができるので、損はしません。

\次のページで「「質に入れる」の語源は?」を解説!/

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