「虎に翼」ってことわざを知っているか?頭の中でドラゴンの虎バージョンのようなカッコいい生物を妄想した奴もいるんじゃないか?ですが残念ながらそうじゃなのです。

この「虎に翼」っていうのは、簡単に言えば「勢力のある者にさらに勢いを…」という意味です。「何だ、悪くないじゃん」そう思った奴もいるかもしれませんね。まぁ、その辺はこれから"むかい"に解説してもらおう。

院卒日本語教師の"むかいひろき"!「虎に翼」の解説を任せたぜ!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「虎に翼」の意味や語源は?

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「虎に翼」、漢字だけ見るととてもカッコ良さそうですよね。しかし実はそうでもなくて…。まずは初めに、その「虎に翼」の意味や語源について、辞書の記述を参考に確認していきましょう。

「虎に翼」の意味は「勢力のある者にさらに勢いを…」

最初に「虎に翼」の辞書での記述を確認しましょう。「虎に翼」は、ことわざ辞典では次のような意味が掲載されています。

勢力のある者にさらに勢力を加えることのたとえ。

出典:明鏡 ことわざ成句使い方辞典(大修館書店)「とらにつばさ【虎に翼】」

「虎に翼」は「勢力のある者にさらに勢力を加える」という意味のことわざです。そして、通常は好ましくない勢いに対して使用します。例えば、横暴な人物が勢いを得て更に横暴になる場合などです。この辺りは語源のコーナーと例文のコーナーで詳しく見ていきましょう。

「虎に翼」の語源は中国の古典!

「虎に翼」ということわざの由来となっているのは、古代中国の『韓非子』という書物の「難勢」というお話です。このお話の中に「虎の為に翼を傅(つ)くること毋(な)かれ」という一節があります。この一節は、凶悪な勢力を持つ者を鋭い爪と牙をもった虎にたとえ、「その虎に君主の地位を与えるということは、ただでさえ凶暴である虎に自由自在に空を飛べる翼をつけるようなものである」といった意味を表しているのです。

この『韓非子』は古くから日本に流入しており、その過程でこの一節とともに「虎に翼」という言葉も流入し、定着したのだと考えられます。

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「虎に翼」の使い方を例文とともに確認!

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続いて「虎に翼」の使い方を例文とともに確認していきましょう。意味のコーナーでも述べましたが、「虎に翼」は通常は好ましくない勢いに対して使用します。このことを前提に、例文をご覧ください。

1.田中先生の部活での指導は行き過ぎているが、先日の県大会で優勝したことによって、田中先生は虎に翼となっている。
2.今回の選挙であの排外主義的な政党が多くの議席を獲得すれば、排外主義者にとって虎に翼になってしまう。
3.あの横暴な振る舞いが目立った専務が社長に昇進とは、まさに虎に翼だよ…。

「虎に翼」は「勢力のあるにさらに勢力を加える」通り、ある人物や集団の悪い勢いがさらに加速することを表します

例文1では、元々行き過ぎた指導を行っていた田中先生が、県大会で優勝したことによりさらに勢いが加速してしまった…つまり、「行き過ぎた指導が更に行き過ぎるようになった」というニュアンスで「虎に翼」が使用されていますね。

例文2では、排外主義的な政党が多くの議席を獲得することで、「排外主義者にとって、自分たちの排外的な主張が更に主張しやすくなってしまう」というニュアンスで「虎に翼」が使用されています。

例文3では、横暴な振る舞いが目立つ専務が社長になることで、「更に横暴な振る舞いが増すのでないか」という不安を表すニュアンスで「虎に翼」が使用されていますね。

「虎に翼」の類義語は?

次に、「虎に翼」の類義語を見ていきましょう。「虎に翼」の類義語は「鬼に金棒」「弁慶に薙刀」「火に油を注ぐ」です。意味を確認し、「虎に翼」との比較をここでは行っていきましょう。

「鬼に金棒」:強いものがますます強くなる

「鬼に金棒(おににかなぼう)」は「それを手に入れることによって、強いものがますます強くなること」を意味することわざです。鬼は素手であっても強い存在ですが、鉄製の棒(金棒)を手にしたらさらに強くなってしまうでしょう。

「虎に翼」との違いは、基本的に良い意味で使われるという点です。例えば、プロ野球で首位を快調に走るチームに、ケガで戦列を離れていた主力が復帰するような場合などに使用します。

\次のページで「「弁慶に薙刀」:強いものがますます強くなる」を解説!/

「弁慶に薙刀」:強いものがますます強くなる

「弁慶に薙刀(べんけいになぎなた)」は「それを手に入れることによって、強いものがますます強くなること」を意味することわざです。弁慶は源義経に仕えたとされる怪力の僧。その弁慶が薙刀を持ったら無敵であること間違いなしですね。

先述の「鬼に金棒」と意味やニュアンスにおいて違いはありません。よって、「虎に翼」との違いは、基本的に良い意味で使われるという点になります。

「火に油を注ぐ」勢いの激しい物事にさらに勢いが…

「火に油を注ぐ」は「勢いの激しい物事に、さらに勢いを加えること」という意味のことわざです。燃えている火に油をかけると、さらに大きく燃え上がりますよね。

「火に油を注ぐ」は「望ましくない物事が更に悪化する」というニュアンスで使われることがほとんどです。「虎に翼」とよく似ていますが、「虎に翼」では勢いの増す対象が人物や団体であるのに対し、「火に油を注ぐ」は物事であるという違いがあります

「虎に翼」の英語表現は?

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続いて「虎に翼」の英語表現を確認していきましょう。もちろんことわざですので、そのまま訳しても英語では意味が通じません。「虎に翼」の意味から考えていくのが良いでしょう。

「doubly strong」:2倍の強さに

「虎に翼」の英語表現は「doubly strong」です。直訳すると「2倍の強さ」になります。「勢いの強いものがさらに強くなる」というニュアンスは示せていますね。

ただ、「ある人物や団体の好ましくない勢いについて用いる」というニュアンスはこの言葉では出せません。よって、好ましい場合に用いる「鬼に金棒」を用いたほうが良い例もあります。どちらも例文で確認してみましょう。

1.If a Catherine government is formed, the exclusionists will be doubly strong.
キャサリン政権が成立すれば、排外主義者にとって虎に翼だ。

2.If Mr. Smith joined our team, we would be doubly strong.
スミス氏が我がチームに加われば、鬼に金棒なのだが。

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頼もしいのではなく恐ろしい。それが「虎に翼」

今回は「虎に翼」について解説しました。「虎に翼」は「勢力のある者にさらに勢力を加える」という意味のことわざです。そしてその勢いは、好ましくないものであるのが「虎に翼」の特徴でしたね。虎を恐ろしい動物として、このことわざではとらえているのです。好ましい勢いについては、「鬼に金棒」や「弁慶に薙刀」を使いましょう。

" /> もし翼が生えた虎が襲ってきたら…「虎に翼」の意味や使い方、類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説 – Study-Z
国語言葉の意味

もし翼が生えた虎が襲ってきたら…「虎に翼」の意味や使い方、類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

「虎に翼」ってことわざを知っているか?頭の中でドラゴンの虎バージョンのようなカッコいい生物を妄想した奴もいるんじゃないか?ですが残念ながらそうじゃなのです。

この「虎に翼」っていうのは、簡単に言えば「勢力のある者にさらに勢いを…」という意味です。「何だ、悪くないじゃん」そう思った奴もいるかもしれませんね。まぁ、その辺はこれから”むかい”に解説してもらおう。

院卒日本語教師の”むかいひろき”!「虎に翼」の解説を任せたぜ!

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「虎に翼」の意味や語源は?

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「虎に翼」、漢字だけ見るととてもカッコ良さそうですよね。しかし実はそうでもなくて…。まずは初めに、その「虎に翼」の意味や語源について、辞書の記述を参考に確認していきましょう。

「虎に翼」の意味は「勢力のある者にさらに勢いを…」

最初に「虎に翼」の辞書での記述を確認しましょう。「虎に翼」は、ことわざ辞典では次のような意味が掲載されています。

勢力のある者にさらに勢力を加えることのたとえ。

出典:明鏡 ことわざ成句使い方辞典(大修館書店)「とらにつばさ【虎に翼】」

「虎に翼」は「勢力のある者にさらに勢力を加える」という意味のことわざです。そして、通常は好ましくない勢いに対して使用します。例えば、横暴な人物が勢いを得て更に横暴になる場合などです。この辺りは語源のコーナーと例文のコーナーで詳しく見ていきましょう。

「虎に翼」の語源は中国の古典!

「虎に翼」ということわざの由来となっているのは、古代中国の『韓非子』という書物の「難勢」というお話です。このお話の中に「虎の為に翼を傅(つ)くること毋(な)かれ」という一節があります。この一節は、凶悪な勢力を持つ者を鋭い爪と牙をもった虎にたとえ、「その虎に君主の地位を与えるということは、ただでさえ凶暴である虎に自由自在に空を飛べる翼をつけるようなものである」といった意味を表しているのです。

この『韓非子』は古くから日本に流入しており、その過程でこの一節とともに「虎に翼」という言葉も流入し、定着したのだと考えられます。

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