この記事では「呷る」について解説する。

端的に言えば呷るの意味は「一気に飲む」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「呷る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。かつては若気の至りで友達と夜通しでお酒を呷るなんてこともあった。今はドクターストップがかかっているため、アルコールは1滴も口にしていない。

「呷る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「呷る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「呷る」の意味は?

まず、「呷る」は「あおる」と読みます。「うなる」と間違える人も多いですが、「うなる」は「呻る」または「唸る」なので注意しなければなりません。「呷」のつくりは「甲」、「呻」は「申」です。

その「あおる」を辞書で引いてみると、いくつにも分かれた意味が記載されています。まずはどんな具合か見てみましょう。

1.うちわなどで風を起こす。また、風が火の勢いを強める。「うちわで—・って火をおこす」
2.例文を風が物を揺り動かす。また、風を受けて物が動く。「強風にテントが—・られる」「通路の扉(ひらき)が—・っているので」〈紅葉・多情多恨〉
3.おだてたりして、相手がある行動をするように仕向ける。たきつける。扇動する。「競争心を—・る」

(中略)

8.自動車の運転で、前を走る車の後ろにぴったり付いて走行する。→煽り運転
9.鐙(あぶみ)で障泥(あおり)をけって馬を急がせる。「馬をいたく—・りければ、馬くるひて落ちぬ」〈宇治拾遺・一三〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「あお・る」

上記の通り、「あおる」については多くの意味が掲載されています。「うちわで風を起こす」や「たきつける」から、近年問題化している「あおり運転をする」まで、普段の生活で身近なことばかりではないでしょうか。しかし、これらの「あおる」をすべて漢字で書けば「煽る」となります。「呷る」ではありません。

では、「呷る」は辞書に載っていないのでしょうか。もちろんそんなことはなく、実は前掲した辞書の5番にだけ「(『呷る』と書く)」と添えられているのです。つまり、数ある「あおる」の意味の中でも、ある限られた意味だけが「呷る」という漢字を当てること示しています。ならば、その「呷る」について書かれた部分のみを見てみることにしましょう。

5.(「呷る」と書く)酒などをひと息に飲む。「毒を—・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「あお・る」

呷る」(あおる)とは、「飲み物や薬などを一気に飲む」という意味です。

ところで、なぜ「あおる」の中に1つだけ「呷る」の項目があるのでしょうか。その点については、次の語源の項目で一緒に説明することにしましょう。

「呷る」の語源は?

次に「呷る」の語源を確認しておきましょう。同時に「呷る」と「煽る」の関係についても説明していきます。

「あおる」のもとの意味は、前掲した辞書の9番目、つまり最後に記載されている「あぶみを蹴って馬を急がせる」です。それが「勢いをつける」「うちわなどで風を起こす」「おだてたりしてたきつける」などと意味が多く枝分かれしました。そのうちの1つが「ひと息に飲む」です。すべて勢いを強めるという共通点があることに注目しましょう。しかし、ほとんどの「あおる」が「煽る」という漢字を当てたのに対して、「ひと息に飲む」という意味の「あおる」だけは「呷る」という漢字を当てるようになりました。つまり、「呷る」と「煽る」は由来が同じで、時代とともに意味と漢字が別々になったということです。

「呷る」の使い方・例文

「呷る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.こんなに暑くては水でも呷らないとやってられない。
2.ソクラテスは法に殉ずる道を選び、自ら進んで毒薬を呷った。
3.彼女に振られた気持ちは分かるけど、毎晩何杯も酒を呷ってばかりでは体にも悪いから、そろそろ立ち直らないとどうしようもないよ。

「呷る」は「ひと息に飲む」という意味を持つと前述しました。よって、単なる「飲む」とは区別が必要です。

たとえば、スープなどの熱いものを少しずつ飲むことを「呷(あお)る」とは言えません。「呷る」の語源にもあったように、勢いをつけて飲むという動作が大事です。例文3のような、次から次へとグラスを空けていく様子を描写する場合にも「呷る」を使うと良いでしょう。

\次のページで「「呷る」の類義語は?違いは?」を解説!/

「呷る」の類義語は?違いは?

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ところで、「呷る」に類義語はあるのでしょうか。「呷る」との違いも同時に見ていきましょう。

「飲み干す」

「ひと息に飲む」といえば、「呷る」以外にも「飲み干す」(のみほす)があります。しかし、2つの言葉はまったくもって意味が同じというわけではありません。

「呷る」という言葉で表現しているのは、勢いをつけて飲むという動作です。一方の「飲み干す」ですが、「干す」とあるように、器にある飲み物を一滴も残さず飲み切るということが重要になります。確かに、ジョッキに入った生ビールを「呷れ」ばジョッキは空くのかもしれません。しかし、ジョッキに入った生ビールを「飲み干す」ために「呷る」という飲み方は必要ないはずです。少しずつでもビールを飲んでいけば、いつかはジョッキが空になります。

「呷る」の対義語は?

では、「呷る」の対義語は何でしょうか。

「啜る」

「呷る」の対義語となる言葉の意味は、「少しずつ飲む」となるはずです。ならば、同じ口へんのあの動詞が当てはまるでしょう。

それは「啜る」です。「すする」と読みます。念のため辞書で意味を確認しておきましょう。「液状のものを吸い込むようにして飲む」とあります。これだけでは納得いかない人もいるのかもしれません。ならば、「啜る」の用例を見てみましょう。「お茶を啜る」や「そばを啜る」などと書かれているはずです。お茶もそばも、よほど大食漢でもない限りはどちらも少しずつ口へ運ぶものではないでしょうか。よって、「啜る」は「呷る」の対義語としてふさわしいと言えます。

「呷る」の英訳は?

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さらに「呷る」の英訳も見てみましょう。

「gulp down」

gulp」という動詞には、「ガツガツ食べる」や「息を飲む」などの意味もありますが、「ごくごく飲む」という意味があります。これだけでも「呷る」の英訳としてはふさわしいのかもしれません。

しかし、「呷る」にある「一気に飲み下す」というイメージを大切にするのであれば、「down」を付けることでよりそのイメージが伝わるでしょう。たとえば、「gulp down glasses of whisky」で「ウイスキーを何杯も呷る」となります。

\次のページで「「呷る」を使いこなそう」を解説!/

「呷る」を使いこなそう

この記事では「呷る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「呷る」はあまり上品な言葉とは言えません。お酒で言えば、「たしなむ」というよりは「酔い潰れるまで飲む」というイメージになるでしょう。しかし、あなたにも一生のうちにお酒でも「呷り」たくなるような時は訪れるはずです。仮にそうしたとしても、その気持ちを少しは理解してもらえるでしょう。ただし、お酒を「呷っ」て他人に迷惑を掛けたり、自分の体を壊すことは避けなければなりません。何事も節度が大事です。

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国語言葉の意味

「呷る」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「呷る」について解説する。

端的に言えば呷るの意味は「一気に飲む」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「呷る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻。かつては若気の至りで友達と夜通しでお酒を呷るなんてこともあった。今はドクターストップがかかっているため、アルコールは1滴も口にしていない。

「呷る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「呷る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「呷る」の意味は?

まず、「呷る」は「あおる」と読みます。「うなる」と間違える人も多いですが、「うなる」は「呻る」または「唸る」なので注意しなければなりません。「呷」のつくりは「甲」、「呻」は「申」です。

その「あおる」を辞書で引いてみると、いくつにも分かれた意味が記載されています。まずはどんな具合か見てみましょう。

1.うちわなどで風を起こす。また、風が火の勢いを強める。「うちわで—・って火をおこす」
2.例文を風が物を揺り動かす。また、風を受けて物が動く。「強風にテントが—・られる」「通路の扉(ひらき)が—・っているので」〈紅葉・多情多恨〉
3.おだてたりして、相手がある行動をするように仕向ける。たきつける。扇動する。「競争心を—・る」

(中略)

8.自動車の運転で、前を走る車の後ろにぴったり付いて走行する。→煽り運転
9.鐙(あぶみ)で障泥(あおり)をけって馬を急がせる。「馬をいたく—・りければ、馬くるひて落ちぬ」〈宇治拾遺・一三〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「あお・る」

上記の通り、「あおる」については多くの意味が掲載されています。「うちわで風を起こす」や「たきつける」から、近年問題化している「あおり運転をする」まで、普段の生活で身近なことばかりではないでしょうか。しかし、これらの「あおる」をすべて漢字で書けば「煽る」となります。「呷る」ではありません。

では、「呷る」は辞書に載っていないのでしょうか。もちろんそんなことはなく、実は前掲した辞書の5番にだけ「(『呷る』と書く)」と添えられているのです。つまり、数ある「あおる」の意味の中でも、ある限られた意味だけが「呷る」という漢字を当てること示しています。ならば、その「呷る」について書かれた部分のみを見てみることにしましょう。

5.(「呷る」と書く)酒などをひと息に飲む。「毒を—・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「あお・る」

呷る」(あおる)とは、「飲み物や薬などを一気に飲む」という意味です。

ところで、なぜ「あおる」の中に1つだけ「呷る」の項目があるのでしょうか。その点については、次の語源の項目で一緒に説明することにしましょう。

「呷る」の語源は?

次に「呷る」の語源を確認しておきましょう。同時に「呷る」と「煽る」の関係についても説明していきます。

「あおる」のもとの意味は、前掲した辞書の9番目、つまり最後に記載されている「あぶみを蹴って馬を急がせる」です。それが「勢いをつける」「うちわなどで風を起こす」「おだてたりしてたきつける」などと意味が多く枝分かれしました。そのうちの1つが「ひと息に飲む」です。すべて勢いを強めるという共通点があることに注目しましょう。しかし、ほとんどの「あおる」が「煽る」という漢字を当てたのに対して、「ひと息に飲む」という意味の「あおる」だけは「呷る」という漢字を当てるようになりました。つまり、「呷る」と「煽る」は由来が同じで、時代とともに意味と漢字が別々になったということです。

「呷る」の使い方・例文

「呷る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.こんなに暑くては水でも呷らないとやってられない。
2.ソクラテスは法に殉ずる道を選び、自ら進んで毒薬を呷った。
3.彼女に振られた気持ちは分かるけど、毎晩何杯も酒を呷ってばかりでは体にも悪いから、そろそろ立ち直らないとどうしようもないよ。

「呷る」は「ひと息に飲む」という意味を持つと前述しました。よって、単なる「飲む」とは区別が必要です。

たとえば、スープなどの熱いものを少しずつ飲むことを「呷(あお)る」とは言えません。「呷る」の語源にもあったように、勢いをつけて飲むという動作が大事です。例文3のような、次から次へとグラスを空けていく様子を描写する場合にも「呷る」を使うと良いでしょう。

\次のページで「「呷る」の類義語は?違いは?」を解説!/

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