この記事では「恬淡」の意味を解説する。
「かったん」と読んでしまいそうな「恬淡」、正しくは「てんたん」と読み、簡単に言えば「欲がない」という意味。「無欲恬淡」は座右の銘にもおすすめな四字熟語ですが、そんな簡単に「欲」から脱却できないのが人間……。意味や使い方をくわしく知って、使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「恬淡」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「恬淡」の意味・使い方

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日常会話では使わない聞かない、難読漢字の部類に入る「恬淡」。使われている文章の例を検索してみると、明治大正生まれの名だたる文豪の作品です。今の私たちにはなかなか馴染みはありませんが、案外使える「恬淡」のくわしい意味や使い方をみていきましょう。

「恬淡」の意味

ではまず辞書で意味を調べてみます。

欲がなく、物事に執着しないこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「恬淡・恬澹・恬惔」(てんーたん)より

難読語辞典では「無欲であっさりしていること」と掲載している「恬淡」は、人となりの表現だけでなく物事や味覚などにも適用。「恬淡な〇〇」「恬淡だ」と形容動詞として使うほか、「無欲恬淡:欲がなく執着しない」「恬淡寡欲(てんたんかよく):あっさりとして欲がない」など四字熟語がいくつもあります。

「恬淡」の語源

「恬淡」は故事成語や仏教用語ではないようですが、「虚静恬淡(きょせいてんたん):心静かでさっぱりしている様」が中国戦国時代の思想家「荘子」の弟子などが書いた「荘子(そうじ)・天道」からの出典です。

漢字として、「恬(てん)」はやすらか・平気でいる・しずか・うすい、などの意味。「淡」は「たん」や「あわ・い」と読み、色や味がうすい・気持ちがあっさりしているなどの意味があります。同じような意味の言葉を二つ重ねて強調、「欲がなく静かで落ち着いている」様の表現です。

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「恬淡」の使い方・例文

意味が分かったので、使って確認しましょう。

1.恬淡な彼は恋愛もあっさりで、またフラれたようだ。
2.真面目で勤勉な彼女は常に恬淡な態度だ。
3.祖父は恬淡な味付けの食事を好む。

1.と2.の例文は人柄の表現で使っています。1.の彼は感情表現は豊かでも、執着心がなければ未練もないのでしょう。お互い理解不足であれば、あっさりと離別かもしれません。2.の彼女はクールビューティーと言われそうですね。無欲では働く意味も薄そうです。3.の例文は味がさっぱりとの意味で使っています。粗食は長生きの秘訣でしょうね。

「恬淡」の類義語は

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次に、欲がなくあっさりしていることと同じ意味の言葉を紹介します。

「淡泊(たんぱく)」:あっさりしていること

味・色・感じ、また性格や態度がさっぱりあっさりしていること、しつこさがないことを「淡泊」と表現します。「泊」は宿に泊まる、停泊など、とまる・とめるの意味が一般的ですが、「あっさり」の意味もあるのです。ですからこちらも同じような意味の漢字を二つ重ねた表現で「あっさりさっぱり」となり、「彼は淡泊な性格だ」「白身魚は淡泊な味だから好き」と使います。

\次のページで「「雲心月性(うんしんげっせい)」:名誉や利益を求めないこと」を解説!/

「雲心月性(うんしんげっせい)」:名誉や利益を求めないこと

清らかな心を雲のように自由で月のように澄んでいると比ゆ的に表現した「雲心月性」は、名誉や利益を求めない淡々とした様のことです。「彼女は雲心月性でボランティアに励んでいる」「夢に向かってひたすら励む彼は雲心月性だ」と使います。

「無私無欲」:私心がなく利益を求めないこと

「無私無欲」は自分の感情にとらわれたり利益を求めたりしないことを表す四字熟語です。「無私無欲な父を私は尊敬している」「彼は無私無欲で働き、人々を助けた」と使います。

「恬淡」の対義語は?

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それでは欲のないことの反対語、欲深い意味の言葉をいくつか紹介します。

「貪欲(どんよく)」:欲深いこと

「貪欲」とは欲張り、手に入れたものに満足できずさらに欲しがることです。また知識や技能を積極的に取り入れようとする様もいいます。使い方は「貪欲な彼女は嫉妬深く、友人の彼氏も誘惑する」「天文学に夢中の彼は大学院に進学し貪欲に知識を求めた」などです。

「執着(しゅうちゃく)」:心がとらわれて離れないこと

「執着」とは一つのこと・ものに心がとらわれて離れられないことをいいます。使い方は「お金に執着する彼はケチでがめつい」「私は執着心が強くて物を捨てられない」などです。

\次のページで「「業突く張り(ごうつくばり)」:欲深く強情なこと」を解説!/

「業突く張り(ごうつくばり)」:欲深く強情なこと

「業突く張り」は欲張りで強情な人を悪く言った表現です。「もらい物のクッキーを独り占めする妹は業突く張りだ」「叔母は業突く張りで祖父の遺産を独り占めしようとした」と使われます。

「恬淡」を英訳してみよう!

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では「恬淡」を英語でどう表現するのでしょうか。直訳的な表現は難しいので類義語的な単語をみます。違う・異なるなどの意味を持つ「different」にnoやwhithoutの意味の接頭辞「in」を付けた「indifferent」は無関心な・冷淡な、という意味。「interested:興味」を「dis」で否定した「disinterested」は私心のない・無関心の意味となる英単語です。また、味や態度が淡泊という意味では「light:軽い」や「frank:あっさり」といった単語もあります。

ここでは恬淡無欲と訳される「unselfish」を詳しくご紹介しましょう。

「unselfish」:無欲な

「selfish」は自分勝手・自己中心的と訳される単語、それに反対や除去を表す接頭辞「un」を付けた「unselfish」、無私無欲の意味になります。副詞形は「unselfishly」名詞形は「unselfishness」。使って確認しましょう。

・She is an unselfish person.
(彼女は恬淡なヒトだ)
・My father has an unselfish heart.
(私の父は寡欲な心を持っている)
・His unselfishness is so great.
(彼の無欲な献身的姿勢はとても素晴らしい)

「恬淡」は中高年の境地?

この記事では「恬淡」の意味や使い方・類語などを説明しました。意味は欲がなくあっさりしていること、類義語は「淡泊」、対義語は「貪欲」、英語では「unselfish」と表現することが分かりましたね。

自分の労苦や利益を顧みずに他人に施す「無私無欲」と自分も他人も無関心な「恬」、「欲がない」は二つの面があるように思いました。年を取るにつれて枯れて欲は薄くなっていくもの、がっつり貪欲に経験を求めて動けるのが「若さ」でしょうか。

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国語言葉の意味

読み間違いにご注意!「恬淡」の意味や使い方・類語などを語学系主婦ライターが簡単にわかりやすく解説

この記事では「恬淡」の意味を解説する。
「かったん」と読んでしまいそうな「恬淡」、正しくは「てんたん」と読み、簡単に言えば「欲がない」という意味。「無欲恬淡」は座右の銘にもおすすめな四字熟語ですが、そんな簡単に「欲」から脱却できないのが人間……。意味や使い方をくわしく知って、使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「恬淡」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「恬淡」の意味・使い方

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日常会話では使わない聞かない、難読漢字の部類に入る「恬淡」。使われている文章の例を検索してみると、明治大正生まれの名だたる文豪の作品です。今の私たちにはなかなか馴染みはありませんが、案外使える「恬淡」のくわしい意味や使い方をみていきましょう。

「恬淡」の意味

ではまず辞書で意味を調べてみます。

欲がなく、物事に執着しないこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「恬淡・恬澹・恬惔」(てんーたん)より

難読語辞典では「無欲であっさりしていること」と掲載している「恬淡」は、人となりの表現だけでなく物事や味覚などにも適用。「恬淡な〇〇」「恬淡だ」と形容動詞として使うほか、「無欲恬淡:欲がなく執着しない」「恬淡寡欲(てんたんかよく):あっさりとして欲がない」など四字熟語がいくつもあります。

「恬淡」の語源

「恬淡」は故事成語や仏教用語ではないようですが、「虚静恬淡(きょせいてんたん):心静かでさっぱりしている様」が中国戦国時代の思想家「荘子」の弟子などが書いた「荘子(そうじ)・天道」からの出典です。

漢字として、「恬(てん)」はやすらか・平気でいる・しずか・うすい、などの意味。「淡」は「たん」や「あわ・い」と読み、色や味がうすい・気持ちがあっさりしているなどの意味があります。同じような意味の言葉を二つ重ねて強調、「欲がなく静かで落ち着いている」様の表現です。

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