みんなはいざという時の「最後の切り札」は持っているか?まぁ状況や場面にもよるが、「最後の切り札」は何か持っていたほうが良い。

この「最後の切り札」の意味は、簡単に言えば「とっておきの最後の手段」です。ただ、意味はだいたいわかっても、語源はよく分からない人もいるんじゃないか?実は古くからある日本語ではなのです。そして類義語もたくさんある。

今回は魅力あふれるその「切り札」という言葉について、院卒日本語教師の"むかいひろき"に解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「最後の切り札」の意味や語源は?

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「これが俺の”最後の切り札”だ!」「"最後の切り札"を出すしかない。」…このようなセリフをドラマや小説で見聞きしたことがある人は多いのではないでしょうか。まずはその「最後の切り札」の意味や語源に迫ります。

「最後の切り札」の意味は「とっておきの最後の手段」

「最後の切り札」という言葉は、「切り札」「切札」という形で辞書に掲載されている場合がほとんどです。まずは、この「切り札」「切札」の意味について辞書で確認してみましょう。「切り札」「切札」は辞書では次のような意味が掲載されています。

1. トランプで、他の組の札を全部負かす力があると決められた札。
2. とっておきの最も有力な手段。最後のきめて。「最後の―」「代打の―」

出典:広辞苑 第七版(岩波書店)「きり-ふだ【切札】」

辞書では「切り札」の意味は2つ掲載されていましたね。今回この記事で詳しく解説するのは2の意味です。1は次の語源の項目で詳しく見ていきますよ。

辞書の記述からも窺えますが、「最後の切り札」の意味は「とっておきの最後の手段」です。物事がうまく立ちいかなくなってしまった時、スポーツの試合で負けてしまいそうな時…など、様々な場面で使用します。

「最後の切り札」の語源はトランプ!

この「最後の切り札」の語源はトランプです。トランプゲームの中で、他のどの札よりも強い力を持つと定められた札を「切り札」といいます。

他の札を切り立つ強い札だから「切り札」ゲームのキリとなる最後の強い札だからキリ札→「切り札」など、トランプの中で「切り札」という言葉が誕生した経緯は様々な説がありますが、トランプで最初に使われだした言葉であることは間違いありません。

このトランプ用語だった「切り札」が、広く日常にも応用されるようになりました。よって、江戸時代以前を舞台にした時代劇で「切り札」「最後の切り札」というセリフが出てきた場合は、当時はそのような言葉は存在しないので、厳密に言えば誤りとなりますね。(神事で「切札」という言葉が使用されますが、これは全く別の言葉です。)

\次のページで「「最後の切り札」の使い方を例文とともに解説!」を解説!/

「最後の切り札」の使い方を例文とともに解説!

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続いて、「最後の切り札」の使い方を例文とともに確認していきましょう。「最後の切り札」は、物事がうまく立ちいかなくなったピンチの場面や、スポーツで敗北寸前に追い込まれた場面など、基本的には窮地の場面で使うことが多い言葉です。

そして、例文の解説の前に、「最後の切り札」は「とっておきの最後の手段」であることは、前提として頭に入れておきましょう。

1.会社の経営が苦しい。ただ、社員たちをリストラするのは最後の切り札だ。何とかしてリストラはせずに乗り越えたい…!
2.1点ビハインドの9回表2アウト、港南高校は最後の切り札として、三上君を代打に起用した。
3.戦争で敵国に押されている国にとって、核兵器は最後の切り札となる。

例文1での「とっておきの最後の手段」は、社員のリストラです。確かに社員をリストラすれば、リストラした社員の分だけ人件費が削減され、会社の経営状況は一旦は良くなるでしょう。しかし、これまで大切にしてきた社員をリストラするのは苦しいですよね。まさに「最後の手段」ですね。

例文2において、僅差で負けている試合の「とっておきの最後の手段」は三上君です。恐らく代打で打席に立つ三上君は、過去の試合で試合を決めるタイムリーなどを打っていたのかもしれません。通常は、成果が期待できる場合に「最後の切り札」という言葉を使用するからですね。

例文3において、戦争で敵国に押されている国の「とっておきの最後の手段」は核兵器です。核兵器を敵国の首都に打ち込めば、間違いなく敵国は崩壊するでしょう。しかし、核兵器を使用した場合、その後の世界中からの報復など代償はとても大きいものとなります。まさに「最後の手段」ですね。

「最後の切り札」の類義語は?

次に、「最後の切り札」の類義語をご紹介します。「最後の切り札」の類義語は「伝家の宝刀」「奥の手」「秘密兵器」です。「伝家の宝刀」「奥の手」は古くから使われてきた言葉ですが、「秘密兵器」は「最後の切り札」と同様、比較的新しい言葉と言えるでしょう。

「伝家の宝刀」いざという時のとっておきの手段

「伝家の宝刀(でんかのほうとう)」は「いざという時にだけ使う、とっておきの手段」という意味の慣用句です。「最後の切り札」と意味やニュアンスの違いはありません

「伝家の宝刀」の本来の意味は「家に代々伝わる名刀」です。このような名刀は、よほどの大事がない限りは使用することはありません。このことから、「いざという時にだけ使う、とっておきの手段」という意味が派生したと考えられています。

なお、「天下の宝刀」「殿下の宝刀」と書くのは誤りなので注意しましょう。

\次のページで「「奥の手」滅多に使わないとっておきの手段」を解説!/

「奥の手」滅多に使わないとっておきの手段

「奥の手(おくのて)」は「滅多には使わない、とっておきの手段」という意味の慣用句です。「最後の切り札」と意味やニュアンスは近いですが、「奥の手」の方が最後まで秘密にしていた、隠していたというニュアンスが強く出ます

もともと「奥の手」は「左手」の意味であり、右手よりも左手を尊んで「奥」という言葉を使っていました。ここから、「とっておきの手段」という意味が派生したと考えられています。

「秘密兵器」非常時の最終手段

「秘密兵器」は、本来はその文字の通り、「秘密裏に開発、使用される兵器」を意味します。ただ、現代では、そこから派生して「いざという時までに隠しておいたとっておきの手段、人材」という意味でも使用されるようになりました。「奥の手」と同様に、「最後の切り札」と意味やニュアンスは近いですが、「秘密兵器」の方が最後まで秘密にしていた、隠していたというニュアンスが強く出ます

「最後の切り札」を英語で表現すると…

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続いて、「最後の切り札」の英語表現を紹介します。「最後の切り札」の英語表現は「last resort」です。意味や使い方を例文とともに確認していきましょう。

「last resort」:最後の手段

「last resort」は、単語を直訳すると「最後の手段」となります。まさに日本語の「最後の切り札」と同じ意味・ニュアンスを表す表現です。「とっておきの手段」という意味を表す英語表現には「trump card」や「ace in the hole」もありますが、「最後の」というニュアンスをつけたい場合は、「last resort」が最適ですね。

例文を確認していきましょう。

1.Manager Hader substituted Schneider as a last resort. ヘイダー監督は、最後の切り札としてシュナイダーを代打で起用した。
2.Defecting to Country A is the last resort. A国への亡命は最後の切り札だ。

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切り札は最後まで取っておくもの…「最後の切り札」

今回は「最後の切り札」について解説しました。「最後の切り札」は「とっておきの最後の手段」という意味の慣用句で、カードゲームのトランプが語源となっています。窮地の場面で使用することが多く、形勢逆転への僅かな望みをつなぐのが、この「最後の切り札」なのです。

窮地の場面と言ってもいろいろあると思いますが、皆さんの「最後の切り札」は何ですか?

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国語言葉の意味

どんな時に使えばいい?「最後の切り札」の意味や語源、類義語などを院卒日本語教師がわかりやすく解説

みんなはいざという時の「最後の切り札」は持っているか?まぁ状況や場面にもよるが、「最後の切り札」は何か持っていたほうが良い。

この「最後の切り札」の意味は、簡単に言えば「とっておきの最後の手段」です。ただ、意味はだいたいわかっても、語源はよく分からない人もいるんじゃないか?実は古くからある日本語ではなのです。そして類義語もたくさんある。

今回は魅力あふれるその「切り札」という言葉について、院卒日本語教師の”むかいひろき”に解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「最後の切り札」の意味や語源は?

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「これが俺の”最後の切り札”だ!」「”最後の切り札”を出すしかない。」…このようなセリフをドラマや小説で見聞きしたことがある人は多いのではないでしょうか。まずはその「最後の切り札」の意味や語源に迫ります。

「最後の切り札」の意味は「とっておきの最後の手段」

「最後の切り札」という言葉は、「切り札」「切札」という形で辞書に掲載されている場合がほとんどです。まずは、この「切り札」「切札」の意味について辞書で確認してみましょう。「切り札」「切札」は辞書では次のような意味が掲載されています。

1. トランプで、他の組の札を全部負かす力があると決められた札。
2. とっておきの最も有力な手段。最後のきめて。「最後の―」「代打の―」

出典:広辞苑 第七版(岩波書店)「きり-ふだ【切札】」

辞書では「切り札」の意味は2つ掲載されていましたね。今回この記事で詳しく解説するのは2の意味です。1は次の語源の項目で詳しく見ていきますよ。

辞書の記述からも窺えますが、「最後の切り札」の意味は「とっておきの最後の手段」です。物事がうまく立ちいかなくなってしまった時、スポーツの試合で負けてしまいそうな時…など、様々な場面で使用します。

「最後の切り札」の語源はトランプ!

この「最後の切り札」の語源はトランプです。トランプゲームの中で、他のどの札よりも強い力を持つと定められた札を「切り札」といいます。

他の札を切り立つ強い札だから「切り札」ゲームのキリとなる最後の強い札だからキリ札→「切り札」など、トランプの中で「切り札」という言葉が誕生した経緯は様々な説がありますが、トランプで最初に使われだした言葉であることは間違いありません。

このトランプ用語だった「切り札」が、広く日常にも応用されるようになりました。よって、江戸時代以前を舞台にした時代劇で「切り札」「最後の切り札」というセリフが出てきた場合は、当時はそのような言葉は存在しないので、厳密に言えば誤りとなりますね。(神事で「切札」という言葉が使用されますが、これは全く別の言葉です。)

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