端的に言えば水を向けるは「きっかけを作って話を自分が望む方へ誘う」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「水を向ける」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/柊 雅子
イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事とするライター、柊 雅子。インタビューをする際、「記事にしたい方向に水を向けることがポイント」という彼女が「水を向ける」について解説する。
「水を向ける」の意味は?
「水を向ける」には、次のような意味があります。
1.霊前に水を手向ける。
2.相手の関心が自分の思う方向に向くように誘いをかける。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「水を向ける」
霊前とは死者の霊をまつっているところで、そこに水を供えることを「水を向ける」といいます。
時代劇等で「あの仏の身元がわかりやしたぜ!」はよく使われている台詞。時代劇等では死者のことを「仏」ということがありますね。では死者はいつから仏になるのでしょうか。人は亡くなって直ぐに「仏」になるわけではありません。仏教では四十九日の法要が済むまで、亡くなった人は「霊」なのです。四十九日の法要を迎えて、霊は「仏」となります。なのでお供えの表書きも四十九日の法要までは「御霊前」、それ以降は「御佛前」と書くのです。
やたらと子供の自慢をしたがるお母さんっていますよね。そんなお母さんはママ友との会話の最中でも自分の子供の自慢をするきっかけを探しています。そして話題が自分の子供に関わるように方向付けようとしようとするのです。このきっかけを作って方向付けをしようとすることが「水を向ける」なんですね。
「水を向ける」」の語源は?
次に「水を向ける」の語源を確認しておきましょう。「霊前に水を供えること」という意味の「水を向ける」が、どうして「きっかけを作って話を自分の望む方へ持っていこうとすること」という意味になるのでしょうか。
巫女が死者の霊魂などを呼び寄せ、その口を通して語らせることを口寄せといいます。口寄せをする際に用意されるのが水としきみ。しきみとは山林に自生する常緑広葉樹です。
水としきみを水向け(霊前に供え)し、呼び寄せた霊魂に代わって巫女が話し始めます。巫女が霊魂を呼び寄せたことによってこの世の人間は霊魂と交信することができるようになるわけですね。何かきっかけを探って、自分の望む方へ話を向けることができるようにすることを「水を向ける」というのは口寄せを行うための「水向け」がその由来なのです。
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