この記事では「おくびにも」について解説する。

端的に言えばおくびの意味は「げっぷ」で、「おくびにも」は「げっぷにも」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「おくびにも」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。嫌な相手であったとしてもそれをおくびにも出さず、ニッコリ笑って仕事をする彼女が「おくびにも」について解説する。

「おくびにも」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「おくびにも」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

デジタル大辞泉には「おくびにも」という言葉は掲載されていません。そこで「おくび」という言葉の意味をみていくことにします。

「おくび」の意味は?

「おくび」には、次のような意味があります。

1.胃にたまったガスが口から外に出るもの。げっぷ。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「おくび」

「おくび」という言葉だけを日常生活で耳にすることはありませんね。そこでここからは「おくび」という言葉ではなく、よく使われる「おくびにも出さない」という慣用句について解説していきます。

長男が大学生になり、京都で一人暮らしを始めて二ヶ月ほどたった頃の話です。長男の友人のお母さんから「〇〇(長男の名前)…原付バイクでスピード出し過ぎて、堤防から下の河原へ落ちたらしい」という話を聞きました。幸いなことに、長男は掠り傷でしたが原付バイクは動かなくなったらしいと。数日後、何事もなかったのように「健康のため、自転車も使おうと思うから持って来て」と長男から電話が。

「スピードを出し過ぎて事故を起こし、原付バイクが動かなくなったから自転車が必要」とは決して言いません。この長男のように「感情や物事を隠して、全く感じさせない」こと「おくびにも出さない」といいます。

「おくびにも出さない」の語源は?

次に「おくびにも出さない」の語源を確認しておきましょう。

「あなたは今、まさに空気を食べているのです」…こう言われても、何のことかわからないでしょう。私たちはあらゆる場面…例えば息をしているだけでも空気を食べて、飲み込んでいます。そしてその食べた空気が逆に口の方に戻ってきたものがげっぷなのです。

胃は身体の中の奥深くにあり、外から胃の中のことを見ることはできません。何も見えない上に胃から上がってくるげっぷもださないということは身体のなかにある胃の中を隠しきることになります。これが「おくびにも出さない」という慣用句の由来ですね。

\次のページで「「おくびにも出さない」の使い方・例文」を解説!/

「おくびにも出さない」の使い方・例文

「おくびにも出さない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼女は医師から告げられた病状をおくびにも出さずに、夫が入院している病院へ三か月間通い続けた。そのお陰で「体力が回復すれば退院できる」と思っていた夫は希望を持ち続けることができた。

2.その男は本当の目的などおくびにも出さず、偶然を装い彼女に近付いた。

3.彼は結婚するという彼女に祝いの言葉を述べるため電話をかけたが、自分の気持ちはおくびにも出さなかった」

例文1:私の父はガンで亡くなりましたが、最期まで本人に本当の病状を知らせませんでした。「80半ばを過ぎたお父さんには知らせなくていいよ。残された時間を知ったら不安になるだけだから」というの母の考えからそうしたのです。

例文2:「その男」は何か言えない目的があって彼女に近付いたということですね。こんな例文を読んだ時、「この男の目的は何なのか?」「彼女はどんな人物なのか?」「この二人の年齢は?」…と色々パターンを変えて想像してみるのが私の習性。息子たちには「変な人!」と言われますが、楽しいですよ。

例文3:「彼女のことが好きという自分の気持ちを押し殺して、彼女の結婚を祝福する」、この「自分の気持ちを押し殺して」というモチーフは映画や小説でよく用いられますね。かなり古い映画ですが「めぐり逢い」はこのモチーフを使ったラブストーリー。今時のような派手さはありませんが、じんわりと心に沁みる名作です。

「おくびにも出さない」の類義語は?違いは?

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「おくびにも出さない」の類義語をみていきましょう。

「何食わぬ顔」

幼児がおとなしいと、大体とんでもないことをしているものです。我が家の次男が二歳くらいだったころ…部屋の片隅でおとなしく何かをしていました。ぽっちゃりとしたほっぺたが動いています。次男は長男が隠しておいたお菓子を見つけ出し、こっそりポリポリと食べていたのです。

不意打ちで「何をこっそり食べてるの」と言うと、びっくりした次男は「何も食べてないよ」と言わんばかりに首を左右に振りましたが、手や口はお菓子の粉だらけ。「何食わぬ顔」とはいきませんでした。

「何食わぬ顔」とは「何事もない」「自分には無関係だ」という意味。「おくびにも出さない」隠そうとするものは「どうしても他の人に知られたくない物事や自分の感情」「何食わぬ顔」隠したいのは「自分の言動」や「そこに関わったという事実」です。

\次のページで「「おくびにも出さない」の対義語は?」を解説!/

「おくびにも出さない」の対義語は?

続いて対義語です。

「顔に出る」

「深く隠す」という意味の「おくびにも出さない」に対して、体調や気持ちが顔に表れること「顔に出る」といいます。

「ただいま」と家のドアを開け、お母さんの顔を見た瞬間「今日は機嫌が悪いぞ。気を付けよう」と思ったことはありませんか。どうしてそう思ったのかというと、お母さんの顔が「機嫌が悪い」ということを表していたから…つまりお母さんの感情が顔に表れていたからですね。また、お母さんの顔色を見て「熱でもあるんじゃないか」と思ったことはありませんか。これもお母さんの体長が顔に表れていたからそう思うということですね。

「おくびにも出さない」の英訳は?

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「おくびにも出さない」を英語で表現してみましょう。

英文1.  Some citizens did not like the military control of the country, but they gave no intimation of their intentions

一部の市民は軍による国の支配を良いと思っていなかったが、彼等はそんな胸の内をおくびにも出さなかった

英文2.  He knew the man was going to leave the town, but he didn't breathe a word about it.

彼はその男性がこの町を出ていくつもりであることを知っていたが、彼はそのことをおくびにも出さなかった

英文1を直訳すると「一部の市民は軍による国の支配を好まなかったが、彼らは彼らの意図を全くほのめかさなかった」。「gave no intimation of their intentions」が「全くほのめかさなかった」と言う意味なので「おくびにも出さなかった」と訳すことができます。

英文2「didn't breathe a word」は「一言ももらさなかった」という意味で、直訳は「彼はその男性がこの町を出ていくつもりであることを知っていたが、彼はそのことを一言ももらさなかった」。「一言ももらさなかった」ということは「おくびにも出さなかった」ということですね。

\次のページで「「おくびにも出さない」を使いこなそう」を解説!/

「おくびにも出さない」を使いこなそう

この記事では「おくびにも」を含んだ慣用句「おくびにも出さない」の意味・使い方・類語などを説明しました。「おくび」はげっぷのことで「おくびにも出さない」は「感情や物事を隠して、全く感じさせない」という意味。類義語は「何食わぬ顔」、対義語は「顔に出る」、英語では「not breathe a word」等と表現されることがわかりましたね。

お父さんやお母さんに「おくび」とは何のことかを説明すると、きっと感心してもらえますよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「おくびにも」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「おくびにも」について解説する。

端的に言えばおくびの意味は「げっぷ」で、「おくびにも」は「げっぷにも」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した柊 雅子を呼んです。一緒に「おくびにも」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/柊 雅子

イベントの司会や雑誌の記事作成を仕事としてきたライター、柊 雅子。嫌な相手であったとしてもそれをおくびにも出さず、ニッコリ笑って仕事をする彼女が「おくびにも」について解説する。

「おくびにも」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「おくびにも」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

デジタル大辞泉には「おくびにも」という言葉は掲載されていません。そこで「おくび」という言葉の意味をみていくことにします。

「おくび」の意味は?

「おくび」には、次のような意味があります。

1.胃にたまったガスが口から外に出るもの。げっぷ。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「おくび」

「おくび」という言葉だけを日常生活で耳にすることはありませんね。そこでここからは「おくび」という言葉ではなく、よく使われる「おくびにも出さない」という慣用句について解説していきます。

長男が大学生になり、京都で一人暮らしを始めて二ヶ月ほどたった頃の話です。長男の友人のお母さんから「〇〇(長男の名前)…原付バイクでスピード出し過ぎて、堤防から下の河原へ落ちたらしい」という話を聞きました。幸いなことに、長男は掠り傷でしたが原付バイクは動かなくなったらしいと。数日後、何事もなかったのように「健康のため、自転車も使おうと思うから持って来て」と長男から電話が。

「スピードを出し過ぎて事故を起こし、原付バイクが動かなくなったから自転車が必要」とは決して言いません。この長男のように「感情や物事を隠して、全く感じさせない」こと「おくびにも出さない」といいます。

「おくびにも出さない」の語源は?

次に「おくびにも出さない」の語源を確認しておきましょう。

「あなたは今、まさに空気を食べているのです」…こう言われても、何のことかわからないでしょう。私たちはあらゆる場面…例えば息をしているだけでも空気を食べて、飲み込んでいます。そしてその食べた空気が逆に口の方に戻ってきたものがげっぷなのです。

胃は身体の中の奥深くにあり、外から胃の中のことを見ることはできません。何も見えない上に胃から上がってくるげっぷもださないということは身体のなかにある胃の中を隠しきることになります。これが「おくびにも出さない」という慣用句の由来ですね。

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