この記事では「心を砕く」について解説する。

端的に言えば心を砕くの意味は「気を遣う(きをつかう)」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「心を砕く」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

インストラクターの仕事では、何よりもまず受講者の知識や理解度を把握することに心を砕いていたとか。心を砕くとはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「心を砕く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「心を砕く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「心を砕く」の意味は?

「心を砕く」には、次のような意味があります。

いろいろと気を遣う。心配する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「心を砕く」というと穏やかではない、暴力的なイメージを持つ人もいるかもしれませんね。ですがここで「砕く」のは「自分の心」。相手を喜ばせようとがんばる気持ちや、何かを成し遂げようとする苦労を「心がバラバラになりそうな不安、心配」として表しています。

目の前の任務に集中して心を尽くすことは世界共通でしょうが、この言葉をプレゼント選びなどおもてなしのシーンでも用いるのは日本的と言えるかもしれませんね。

「心を砕く」の語源は?

次に「心を砕く」の語源を確認しておきましょう。

まず「心」は辞書では「人間の理性、知識、感情、意志などの働きのもとになるもの」と説明されていますが、とてもいろいろな意味を併せ持つ言葉です。今回の「心を砕く」に関係するものだけでも、「物事について判断する働き、思慮」や「他人の状況を察していたわる気持ち、思いやり」などなど。その分だけ、「心を砕く」が用いられるシーンもいろいろな場合が考えられます。

また、「砕く」は固まっているものを壊して細かくすること。心だけでなく「身」を砕くと表現することもありますよ。「砕身」は身を砕くほどの努力をすることで、四字熟語の「粉骨砕身」も有名です。

\次のページで「「心を砕く」の使い方・例文」を解説!/

「心を砕く」の使い方・例文

「心を砕く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・明日のプレゼンテーションが成功するよう、心を砕いて準備しています。

・彼女は長年子供たちのしつけに心を砕いてきた。

・秘書がおもてなしに心を砕いただけあって、相手の会社からお礼の言葉をいただきました。

このように、仕事や勉強などに苦心する様子をはじめ、気配りや配慮を表す様々な場面で使われるのが「心を砕く」です。

ビジネスシーンであれば、重要な業務を任された際に「努力します」と応じてももちろんかまいませんが、「結果を出せるよう心を砕きます」などといえると細やかな心遣いをアピールできますよ。

「心を砕く」の類義語は?違いは?

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「心を砕く」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。

その1「腐心する(ふしんする)」

心を痛め、悩ますことをいい、音も似ている「苦心する(くしんする)」とほぼ同義です。「腐る(くさる)」と見かけることが多い「腐」の字だけでも、「心を苦しめて工夫する、頭を悩ます」という意味がありますよ。

「心を砕く」と比べると、長い期間にわたって苦労する状態が続いているイメージなのが「腐心」といえます。

\次のページで「その2「策を練る(さくをねる)」」を解説!/

その2「策を練る(さくをねる)」

「問題に対する措置について、十分に考え改良を重ねること」を表します。「心を砕く」の意味のうち、「いろいろと配慮する」というニュアンスは共通しますね。

似た言葉ですが「策を弄する(さくをろうする)」となると「いろいろとはかりごとをしすぎる」という否定的なイメージが強くなり、「心を砕く」の一生懸命な雰囲気からは遠くなりますよ。

・古文の男性教諭は、生徒がいかにして古典に興味を感じるか工夫することに腐心していた。

・大学内で二度とこうした不始末が起きないよう、色々と策を練って対応します。

「心を砕く」の対義語は?

「心を砕く」とは反対の意味を表すにはどうしたらいいでしょうか。

その1「気に留めない」

「心を砕く」の反対を「気を遣わないこと」とすれば、特に関心を持たないことを表す「気に留めない」が対義語といえるでしょう。「気に留める」が「心にとどめる、忘れないでいる」の意味ですから、それを否定すると「心にとどめない」となります。

その2「無遠慮(ぶえんりょ)」

「心を砕く」の意味のうち相手にいろいろと配慮する点の反対なら、「無遠慮」がいいでしょう。文字どおり、遠慮せずに好き勝手にふるまう様子を表します。

類義語に、「不躾(ぶしつけ)」や「無配慮(むはいりょ)」「無作法(ぶさほう)」もありますよ。「無」という字は、続く単語によって読み方が「ぶ」だったり「む」だったりするので注意してください。

・彼は私を卒業させてくれた恩人なので機会あるごとに感謝の気持ちを表している。それを気に留めないそぶりでいてくれるから、友人関係を続けられるのだろう。

・大切にしているプラモデルを無遠慮にいじりまわされて腹が立った。

\次のページで「「心を砕く」の英訳は?」を解説!/

「心を砕く」の英訳は?

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「心を砕く」を英語で表す言い方を見ていきましょう。

「make every effort」

直訳すれば「あらゆる努力をする」ということなので、最大限の配慮をする「心を砕く」に近いですね。

「捧げる」を意味するdevortを使った「devote oneself to」という表現でも、「~に身を捧げる、~に心を砕く」を表せますよ。

なお、「気を遣う」のニュアンスよりも「心配する」の意味合いを表したいときは、単純にworry aboutを用いればよいでしょう。

目上の人の行動について「心を砕く」と評価したらだめなの?

確かに「心を砕く」は、自分が頑張るときに使うことが多く、お礼の際や目上の人の行動についてはあまり使いません。もちろん「お心を砕いてくださって感謝します」と言っても文法的には正しいと言えるでしょう。ですが、そもそも「目上の人の苦労をねぎらう」ことを失礼と感じる人もいるのです。

桜木先生が違和感を覚えたのも無理はありませんね。お礼の場面で同じことを表したいときは、「温かいお心遣いをありがとうございます」などとしたほうが無難といえます。

「心を砕く」を使いこなそう

この記事では「心を砕く」の意味・使い方・類語などを説明しました。私もこうして皆さんに解説する記事を書くときは、間違いがないように心を砕いて執筆していきたいと思います。

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国語言葉の意味

【慣用句】「心を砕く(こころをくだく)」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「心を砕く」について解説する。

端的に言えば心を砕くの意味は「気を遣う(きをつかう)」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「心を砕く」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

インストラクターの仕事では、何よりもまず受講者の知識や理解度を把握することに心を砕いていたとか。心を砕くとはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「心を砕く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「心を砕く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「心を砕く」の意味は?

「心を砕く」には、次のような意味があります。

いろいろと気を遣う。心配する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「心を砕く」というと穏やかではない、暴力的なイメージを持つ人もいるかもしれませんね。ですがここで「砕く」のは「自分の心」。相手を喜ばせようとがんばる気持ちや、何かを成し遂げようとする苦労を「心がバラバラになりそうな不安、心配」として表しています。

目の前の任務に集中して心を尽くすことは世界共通でしょうが、この言葉をプレゼント選びなどおもてなしのシーンでも用いるのは日本的と言えるかもしれませんね。

「心を砕く」の語源は?

次に「心を砕く」の語源を確認しておきましょう。

まず「心」は辞書では「人間の理性、知識、感情、意志などの働きのもとになるもの」と説明されていますが、とてもいろいろな意味を併せ持つ言葉です。今回の「心を砕く」に関係するものだけでも、「物事について判断する働き、思慮」や「他人の状況を察していたわる気持ち、思いやり」などなど。その分だけ、「心を砕く」が用いられるシーンもいろいろな場合が考えられます。

また、「砕く」は固まっているものを壊して細かくすること。心だけでなく「身」を砕くと表現することもありますよ。「砕身」は身を砕くほどの努力をすることで、四字熟語の「粉骨砕身」も有名です。

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