この記事では「堰を切る(せきをきる)」について解説する。

端的に言えば堰を切るの意味は「あふれ出す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「堰を切る」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

ストレス解消のため、思いっきり泣くための本を用意しているらしい。何度読んでも号泣必至の小説がいくつかあり、決まった場面で堰を切ったように涙があふれるとか。そんなヤザワナオコに、堰を切るとはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「堰を切る」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「堰を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「堰を切る」の意味は?

「堰を切る」には、次のような意味があります。

川の流れが堰を壊してあふれでる。また転じて、おさえられていたものが、こらえきれずにどっとあふれでる。

[補説]「関を切る」と書くのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

川の流れをせき止めているものが急に外れたら、たまっていた水が一気に流れ出しますね。そのように、こらえていたものが一気にあふれ出る様子や、物事が急に激しい動きを示すさまを「堰を切る」といいます。

物理的に物があふれ出たり移動したりすることを表すこともあれば、感情など目に見えないものが表出されることを表現することもありますよ。

「堰を切る」の語源は?

次に「堰を切る」の語源を確認しておきましょう。

「堰」とは、水を取るためや推進、流量を調節するために、川の途中や流水口に設ける構造物のこと。取水堰(しゅすいぜき)や河口堰(かこうぜき)という言葉もありますよ。ダムと似ていますが、違いは堤高(ていこう)にあります。基盤・地盤から固定部の天端までが高さ15メートル以上のものはダム、もっと低いものは席とされているそうです。

大雨などで川が増水し、この堰を破って水があふれ出ることがありますね。それまでたまっていたものが勢いよく放出される様子から、この慣用句ができました。

\次のページで「「堰を切る」の使い方・例文」を解説!/

「堰を切る」の使い方・例文

「堰を切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・割引価格に加えて特別サービス付きのキャンペーンが始まったとあって、開店と同時に大勢の客が堰を切ったように店内になだれ込んだ。

・監督に叱咤され、主将は堰を切ったように泣き出した。

・占い師に優しい言葉をかけられ、経営者の男性は開店以来の苦労話を堰を切って始めた。

・海外での発見が啓示となり、長年停滞していた作業が堰を切ったように進捗し始めた。

1つ目の例文は実際に人が一気に動く様子、2つ目は話、3つ目は涙があふれる状況を表しています。また、「あふれ出る」というニュアンスとは異なりますが、難しい業務が急にはかどり始めたようなケースでも「堰を切る」が使われることがありますよ。

例文からも分かるように、多くの場合に「堰を切ったように」という形で使われるのも特徴です。

「堰を切る」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「堰を切る」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。もちろん「あふれる」「勢いよく流れ出る」でもいいのですが、ここではそれ以外の表現を紹介します。

その1「ほとばしる」

「 勢いよく飛び散る、激しく流れ出る、噴き出る」という意味です。漢字で書くなら「迸る」で、この字を使った「迸散(ほうさん)」という熟語も「勢いよく流れ出る」ことを表します。

実際に液体が流れ出る様子をいう場合だけでなく、「感情がほとばしる」のように比喩的に用いられることもある点は「堰を切る」と似ていますね。

\次のページで「その2「横溢する(おういつする)」」を解説!/

その2「横溢する(おういつする)」

水がみなぎりあふれることを表す言葉です。「縦」の逆方向というイメージが強い「横」ですが、実は「あふれる」という意味も持っています。「溢」も訓読みは「あふれる」で、同じ意味の漢字を重ねて強調している熟語といえますね。

この表現もまた、「気力などがあふれるほどに盛んなこと」を言いたい場合にも用いられますよ。

・昨日の試合では、子供たちのほとばしる汗がまぶしく感じられた。

・改革を担当する役員の勤務開始以来、淀んでいた会社のムードが変わり、社員に活力が横溢するのが感じられるようになった。

「堰を切る」の対義語は?

「堰を切る」と反対の意味を表すにはどうしたらいいでしょうか。

「せき止める」

「流れなどをさえぎって止めること」をいいます。漢字で書くなら「塞き止める」か「塞き止める」。「塞」は一般に「ふさぐ」と読む字です。ここから、「物事を広がらないように食い止める」という意味で使われることもありますよ。

・川をせき止める作業は来月の10日前後に実施されます。

・鶏に広がる感染症が人間界に影響しないようせき止めることが肝要だ。

「堰を切る」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に、「堰を切る」を英語で表す方法を見ていきましょう。

\次のページで「その1「erupt」」を解説!/

その1「erupt」

「爆発する、噴火する」のほか、「噴出する、噴き出る」の意味もあります。erupt in tearsと言えば、「堰を切ったように泣き出す」を表すことができますよ。日本語でも「感情を爆発させる」などと言いますからイメージしやすいですね。

その2「open the floodgates」

「floodgate」は「水門、(怒りなどの)はけ口」のこと。これを「開ける」のですから、まさに「堰を切る」ですね。

「open the floodgates to~」と使えば「(主語によって)~が氾濫する結果になる、~が次々と起こる」という意味。いわゆるMe Too運動の際、一人の女性のツイートがきっかけで多くの女性が「私もセクハラ被害を受けた」と次々と名乗りを上げたことを表す際に使われたのを見かけました。

「堰を切る」を使いこなそう

この記事では「堰を切る」の意味・使い方・類語などを説明しました。毎年夏の時期はゲリラ豪雨などによる洪水の被害が起きていますね。自然の猛威を人間がコントロールできるものでもなく、できるのはせめて備えを万全にしておくことでしょうか。これから先も、少しでもそうした災害が起きないことを祈ります。

そう考えると、感情の面での「堰を切る」もまた自制するのは難しいようなあふれる思いを表していますね。意識的に泣くことでストレスを解消する「涙活(るいかつ)」という活動もあり、イベントも行われているようです。努力や我慢ばかりではなく、時には自分を解放するシーンも必要なのでしょうね。

" /> 【慣用句】「堰を切る」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – ページ 2 – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「堰を切る」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「堰を切る」の使い方・例文

「堰を切る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・割引価格に加えて特別サービス付きのキャンペーンが始まったとあって、開店と同時に大勢の客が堰を切ったように店内になだれ込んだ。

・監督に叱咤され、主将は堰を切ったように泣き出した。

・占い師に優しい言葉をかけられ、経営者の男性は開店以来の苦労話を堰を切って始めた。

・海外での発見が啓示となり、長年停滞していた作業が堰を切ったように進捗し始めた。

1つ目の例文は実際に人が一気に動く様子、2つ目は話、3つ目は涙があふれる状況を表しています。また、「あふれ出る」というニュアンスとは異なりますが、難しい業務が急にはかどり始めたようなケースでも「堰を切る」が使われることがありますよ。

例文からも分かるように、多くの場合に「堰を切ったように」という形で使われるのも特徴です。

「堰を切る」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「堰を切る」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。もちろん「あふれる」「勢いよく流れ出る」でもいいのですが、ここではそれ以外の表現を紹介します。

その1「ほとばしる」

「 勢いよく飛び散る、激しく流れ出る、噴き出る」という意味です。漢字で書くなら「迸る」で、この字を使った「迸散(ほうさん)」という熟語も「勢いよく流れ出る」ことを表します。

実際に液体が流れ出る様子をいう場合だけでなく、「感情がほとばしる」のように比喩的に用いられることもある点は「堰を切る」と似ていますね。

\次のページで「その2「横溢する(おういつする)」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: