この記事では「返す刀」について解説する。

端的に言えば返す刀の意味は「間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること。」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

幼少期から様々な分野の本を読み続け、知識を深めてきた川瀬を呼んです。一緒に「返す刀」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/川瀬

幼少期から多種多様な本を与えられて育ち、分からない言葉があれば辞書で引く癖がついていた。本を読む度に、細やかで表現力豊かな美しい日本語に魅了される。これまでの読書量を活かし、丁寧に言葉の意味を解説していく。

「返す刀」の意味や語源・使い方まとめ

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小説やニュースなどで、「返す刀もない」などと聞いた事があるでしょうか。「返す刀」と聞いただけでは、言葉の意味のイメージすら沸いてこないかと思います。正しい意味と使い方を知ることで、間違った使い方をせずに済み、いざ言葉を聞いた時に戸惑わないで済むのです。それでは早速「返す刀」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「返す刀」の意味は?

「返す刀」には、次のような意味があります。

あるものを攻撃した余勢をかって、間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること。返し刀 (がたな) 。「政府を攻撃した返す刀で与党を非難する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「返す刀」

「返す刀」とは「かえすかたな」と読み、「あるものを攻撃した余勢をかって、間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること」という意味です。これだと少し難しいですが、「あるものを攻撃した勢いで、そのついでに他のものを攻撃すること」と捉えると分かり易いかと思います。

「返す刀」という言葉の本来の意味は、前述のようにその2つを「攻撃する」ことでないといけませんが、現代では攻撃が絡まなくてもかまわないと解釈されているのです。

「返す刀」の使い方・例文

「返す刀」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「返す刀」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.返す刀で斬りかかり、敵を打ちのめした。
2.マスコミは富裕層を批判し、返す刀で貧困層をも非難した。
3.せっかく遠出してここまできたのだから、返す刀でもっと遠くへ行ってみようか。

これらの例文について1つ1つ詳しく見ていきましょう。

例文1は、「刃物で斬る」という意味での使い方です。「返す刀」という言葉を、時代劇や戦争映画で聞いた事があるという方もいるのではないでしょうか。近年では、ライトノベルやゲームで使われる事もありますが、少なくなったと感じます。複数の敵に囲まれた侍が、次々と相手を斬り倒していくシーンを思い浮かべると分かり易いです。1人倒してすぐに別の相手に斬りかかる。攻撃したらすぐに別の敵と対峙する、これを「返す刀」と言います。

例文2は、現代でよく使われる「返す刀」の表現です。物理的な攻撃ではなく、スキャンダルや政治へ追及するような攻撃も表現出来ます。この意味合いでも、必ず複数のものや人を相手に使いましょう。

一方で、例文3は全く「攻撃」という意味合いは一切入っていません。「ついでに」という意味合いで使っている例になります。例文3も全く問題ない使い方ですが、あまり見ない表現です。

「返す刀」の類義語は?違いは?

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「返す刀」には「あるものを攻撃した余勢をかって、間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること」という意味がありました。そんな「返す刀」の類義語についても見ていきましょう。

その1「二の矢」

「返す刀」の類義語には、「二の矢」が挙げられます。「二の矢」は「にのや」と読み、「二度目に射る矢」という意味です。最初に放った矢の後に、続けて放たれる矢の事を言います。「返す刀」と近い意味を持っていますが、違いとしては「複数の相手を攻撃するとは限らない」点です。「二の矢」はあくまでも、攻撃を繰り返すだけであり、1つの相手に執拗に攻撃することを表現します。

・1つの漫画が運よくヒットしたとしても、二の矢が継げない漫画家は沢山見てきました。

・僕が考案した鉛筆は小学生の間で流行し、沢山売れたが二の矢が継げずに困っている。

・二の矢、三の矢を放つ

\次のページで「その2「行きがけの駄賃」」を解説!/

その2「行きがけの駄賃」

もう1つの類義語には、「行きがけの駄賃」ということわざが挙げられます。「行きがけの駄賃」とは「ゆきがけのだちん」と読み、「ある事をするついでに、自分の利益になるような別の事をすること」という意味です。「返す刀」と同様に、誰かを攻撃してその勢いで続けざまに別のものを攻撃するといった意味でも使われる事があります。

・ストレスが溜まっていたから、行き掛けの駄賃でドアを蹴り飛ばした。

・空き巣は行き掛けの駄賃で、テレビを壊していった。

・行き掛けの駄賃だ、こいつも盗んでいこう。

その3「便乗」

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「ついでに」という意味であれば、「返す刀」の類義語として「便乗」が挙げられます。「便乗」とは「びんじょう」と読み、「巧みに機会をとらえて利用すること」という意味です。しかし、「返す刀」と違い、便乗には「利用する」「利益を得る」というニュアンスが含まれています。

・海に潮干狩りの車が行くというので、近所の人が便乗するのかもしれない。

・近所の人も知っているぐらい有名なのがあったので、これに便乗しよう。

・「それなら私も」と、友人が手を挙げたので、僕も便乗して手を挙げた。

「返す刀」を使いこなそう

この記事では「返す刀」の意味・使い方・類語などを説明しました。「返す刀」は「あるものを攻撃した余勢をかって、間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること」という意味です。「返す刀」はとても誤用が多い言葉になります。「物理的な複数への攻撃」「ついでに」「複数への人やものを追求する意味での攻撃」の3つの意味合いで使いましょう。類義語では、「便乗」「行きがけの駄賃」「二の矢」の3つが挙げられ、それぞれ意味やニュアンスに少し違いがあるため、上手く使い分けていきましょう。

「返す刀」は非常に誤用される事が多い言葉です。テレビや書籍などでも、誤って使われているのを見かける事もあります。例えば、「攻撃してきた男性を返す刀で攻めた」のように、反撃するという意味では使いません。他にも、「返す刀で逃げ出した」「相手に反論する」の比喩に使われる事も多いですが、全て間違いなので、誤用しないように注意しましょう。日常生活ではあまり耳にしない言葉ですが、小説やテレビで稀に耳にする言葉です。是非この機会に正しい意味と使い方を理解し、使いこなしていきましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「返す刀」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「返す刀」について解説する。

端的に言えば返す刀の意味は「間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること。」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

幼少期から様々な分野の本を読み続け、知識を深めてきた川瀬を呼んです。一緒に「返す刀」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/川瀬

幼少期から多種多様な本を与えられて育ち、分からない言葉があれば辞書で引く癖がついていた。本を読む度に、細やかで表現力豊かな美しい日本語に魅了される。これまでの読書量を活かし、丁寧に言葉の意味を解説していく。

「返す刀」の意味や語源・使い方まとめ

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小説やニュースなどで、「返す刀もない」などと聞いた事があるでしょうか。「返す刀」と聞いただけでは、言葉の意味のイメージすら沸いてこないかと思います。正しい意味と使い方を知ることで、間違った使い方をせずに済み、いざ言葉を聞いた時に戸惑わないで済むのです。それでは早速「返す刀」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「返す刀」の意味は?

「返す刀」には、次のような意味があります。

あるものを攻撃した余勢をかって、間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること。返し刀 (がたな) 。「政府を攻撃した返す刀で与党を非難する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「返す刀」

「返す刀」とは「かえすかたな」と読み、「あるものを攻撃した余勢をかって、間を置かずに他に攻撃の矛先を転じること」という意味です。これだと少し難しいですが、「あるものを攻撃した勢いで、そのついでに他のものを攻撃すること」と捉えると分かり易いかと思います。

「返す刀」という言葉の本来の意味は、前述のようにその2つを「攻撃する」ことでないといけませんが、現代では攻撃が絡まなくてもかまわないと解釈されているのです。

「返す刀」の使い方・例文

「返す刀」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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