

現在の日本では馴染みが薄いので、どんな宗教か分からない人も多いだろう。そこで、ゾロアスター教の歴史と教義について、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。
- ゾロアスター教はイラン発祥の多神教
- ゾロアスター教のルーツ
- ゾロアスター教が信奉するのは火
- ゾロアスター教の聖典「アヴェスター」とは?
- 独自の言語で書かれている「アヴェスター」
- キリスト教に対抗するために聖典化
- イランからインドに拠点を移したゾロアスター教
- アラブ人イスラム教徒の勢力の拡大
- ゾロアスター教信者が多数いるインド
- ゾロアスター教は儀式を重んじる宗教
- もっとも重要な儀式がジャシャン
- ゾロアスター教の葬式は鳥葬
- ゾロアスター教にかかわる著名人
- パールシーの家庭に生まれたフレディ・マーキュリー
- パールシーであることを嫌がるフレディ・マーキュリー
- ゾロアスター教は将来は滅びゆく宗教?
この記事の目次

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ひこすけ
アメリカの文化や歴史を専門とする元大学教員。今は気になったことをきままに調べている。フレディ・マーキュリーの人生を描いた「ボヘミアン・ラプソディー」を観て、ゾロアスター教に興味を持った。世界史で習ったものの、実際はどのような宗教なのかはまったくの無知。そこで、ゾロアスター教の歴史や教義を調べてみた。
ゾロアスター教はイラン発祥の多神教

ゾロアスター教は、イラン高原に住んでいた古代のアーリア人が信仰していた古代ペルシアに由来する宗教。「アヴェスター」と呼ばれる書物を聖典としています。宗教のジャンルは多神教。ミスラやヴァーユをはじめとする多様な神を信仰してしました。そのため一神教のキリスト教と対照的な位置にあります。
ゾロアスター教のルーツ
ゾロアスター教のルーツはイランやインドの神話に由来する様々な神です。イラン神話に登場する英雄的な神がミスラ。西アジアからギリシア・ローマまでおよぶ広い範囲で崇められていました。インドの神話に由来する風の神がヴァーユ。これらの多神教をもとに、ザラスシュトラが創設したのがゾロアスター教の原型です。
ゾロアスタ―教の勢力の大きさについてはさまざまな意見があり明確ではありません。アケメネス朝ペルシア時代、ほとんどのペルシア人がゾロアスター教を信仰していたという見方もあります。その一方、アーリア人が信仰していた複数の宗教のひとつで、それほど大きな力を持っていなかったという見方もありました。
ゾロアスター教が信奉するのは火
ゾロアスター教が尊ぶのは火。光は善のシンボルであるという考えからです。そこで別名で拝火教とも言われました。このような信仰携帯から、ゾロアスター教のすべての神殿には、ザラスシュトラが点火した火がずっと灯されており、信仰している人々はそれを拝みます。
ゾロアスター教にとって火とは、善すなわち清浄・正義・真理を象徴すると考えられてきました。このように火を信仰する宗教はゾロアスター教よりも前にありました。たとえばヴェーダ宗教。火の神であるアグニが火を通じて人間の祈りを天に届けると信じられていました。このような火の信仰はヒンドゥー教や密教に影響を与え、火をまつる儀式を定着させました。

ユダヤ教でも火は重要なモチーフだ。たとえば神ヤハウェは、火のイメージで語られることが多い。「出エジプト記」では燃え盛る柴が登場。ヘブライ人を導く火の道が登場する場面もある。キリスト教の信仰の軸にある精霊も、炎のような存在として語られていたな。そのためゾロアスター教の火を尊ぶ信仰は決してマイナーなものではない。
ゾロアスター教の聖典「アヴェスター」とは?

聖典とは、神、信仰の対象、成人などの言葉やふるまいが書かれたもの。あるいは、信仰の基礎となる教えが書かれていることもあります。世界にはさまざまな宗教があり、それぞれ独自の聖典がありますが、ゾロアスター教の聖典は独特な経緯を経て成立しました。
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