平安時代日本史

平安時代の庶民の暮らしを記録する「大和物語」について元大学教員が5分で解説

よぉ、桜木建二だ。平安時代というと、華やかで雅(みやび)な世界を連想しがち。源氏物語、枕草子、栄花物語、和泉式部日記では、そんな華やかな世界が描かれた。しかしその一方で、下流貴族や一般庶民はとても貧しい暮らしをしていたことが分かっている。

大和物語は、そんな庶民の生活を垣間見れる作品で、伊勢物語よりも少し後に書かれたらしい。ほかの平安時代の作品とは軌を逸する大和物語について、日本史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/ひこすけ

アメリカの歴史や文化を専門とする元大学教員。源氏物語や枕草子について調べる過程で、大和物語の平安文学のきらびやかな世界とは対照的な作風のルーツが気になりまとめてみることにした。

大和物語とはどんな作品なの?

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平安時代初期に成立したのが大和物語。伊勢物語のあとに執筆されたと言われています。伊勢物語の主人公は、物語を通して在原業平ただひとり。いっぽう大和物語には特定の主人公は存在しません。主人公は実在する天皇、有名な貴族、女房、僧など。その時代の人なら知っている人物が一話ごとに登場する、オムニバス形式の歌物語です。

大和物語の成立について

大和物語という名称の由来ははっきりしません。ひとつめの説が、伊勢物語と対比するために大和物語としたというもの。しかし、大和の地域をとくに意識していません。ふたつめの説が大和という名の女房が作者とするもの。この説についても、はっきりした根拠はありません。

作者についても不明です。宇多天皇やその周辺の人物が多く登場ことから、宇多天皇に仕えた女房が書いたとも推測されていますが、こちらも不明。源順、花山院、清少納言の父である清原元輔が書いたという説もありますが、これも証明されていません。

大和物語にはどんな特徴がある?

大和物語は170余りの章段か構成。前半は天暦年間(947年から957年)の実在の人物にまつわる歌物語となっています。とくに摂関家の主流から外れた人々が中心に登場。そんな人々にまつわるエピソードや、その折詠まれた歌の由来が書かれています。

後半は、より古い時代の人物の言い伝えが中心。後世の説話文学に近い内容です。内容的には、悲恋、離別、再開、愛する人の死など。古い伝説や伝承が、歌を通して描かれています。その説話には、私たちがことのある内容も含まれました。

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ちなみに大和物語では「あり」「おり」の尊敬語である「いまそかり」という動詞が多く使われている。時代の流行語だったのか作者の好みだったのかは不明。和歌でも同じ表現がくり返し使われ、強調の係助詞「なむ」が多用されている。

大和物語と現代とのつながり

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後世、多くの版画家たちが大和物語を版画にしたり、また、短編小説化したりしました。江戸時代にはカラー版画にされたり、お習字の手本にされたり、子供向けの読み物に書き直されたりしていました。私たちが手にしているのはほとんど藤原定家により書写され、伝えられてきた二条家本系統です。

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