「割が悪い」の使い方・例文
「割が悪い」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。
1.経営者の孫娘の彼女は感情的になると、立場を利用して同僚に割の悪い仕事を押し付けてくる。
2.たい焼き屋で時給が安く割の悪いアルバイトをしている。みんなに無料で売れ残りのたい焼きを毎日配るが、商売繫盛しているならシンプルに待遇を良くしてほしい。
3.ことわざ研究会の会員の健太は逆引き辞書に収録されてある単語を五十音別に一覧にするようにと、割の悪い作業を頼まれた。
例文1からは我儘な彼女に周りは手を焼いている様子が伺えますし、例文2からはアルバイトの待遇改善を求めている気持ちが読み取れます。また、例文3からは厄介な作業を引き受けることになってしまった嘆きが伝わってきますね。
その1「かったるい」
「かったるい」は「あいつの仕事ぶりはかったるい」「こんなかったるい話につきあってられるか」などのように進行や発展の度合いが遅くて焦燥を感じる様子を表します。俗語であって日常会話以外には用いられません。「じれったい」や「もどかしい」「まだるっこい」などに近いですが、「かったるい」は進捗の遅さをやや客観的に述べており、始点が物事の方にある点が、人の感じ方に視点を置いた「じれったい」や「もどかしい」「まだるっこい」と異なります。
焦燥自体もこれらの言葉より程度が低いです。また「かったるい」には焦燥だけでなく怒りの暗示も含まれていますよ。そのため「彼の話はかったるい」は「話の内容や進め方が遅い」、「彼の話はじれったい」は「話を聞いているといらいらしてくる」というニュアンスになります。ちなみに「割が悪い」との違いは、「かったるい」は進捗の遅さをやや客観的に述べているという点でしょう。
その2「きつい」
「きつい」は物理的・抽象的に余裕がなく不快な様子を表す形容詞。物理的に余裕がない場合と、要求や規則などが厳しくて余裕がない場合があります。例えば「今年は寒さがきつい」「今度やったらきつく叱ってやってくださいな」は程度がはなはだしい、厳しいという意味。抽象的なものについて用いられた場合は「厳しい」に似ていますが、「厳しい」には「きつい」に暗示されている被害者意識がなく、やや客観的である点が異なりますよ。そのため「寒さがきつい」は「寒いのがつらい」、「寒さが厳しい」は「寒さがはなはだしい」というニュアンスになるでしょう。なお「割が悪い」との違いは、「きつい」は物理的・抽象的に余裕がなく、不快な様子を表すという点です。
「割が悪い」の対義語は?
「割が悪い」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「手っ取り早い」
「手っ取り早い」は手間がかからず簡単に行える様子を表します。「料理は半製品を活用するとてっとりばやくできる」「一流大学へ行くには一流高校へ行くのが一番てっとりばやいとばかな親は考えている」のように述語にかかる修飾語で用いられることが多く、述語になることもありますが、名詞にかかる修飾語としてはあまり用いられません。手間がかからず簡単に行える結果、行動の速度そのものも速くなりますが、「手っ取り早い」は「素早い」に比べて手間のかからなさを強調するニュアンスになり、行為の結果がいい加減という暗示を往々にして含む点で動作の瞬間の速度を暗示する「素早い」と異なります。
したがって「彼女は仕事を手っ取り早く片付けた」は「手間をかけずに適当に片付けた」、「彼女は仕事を素早く片付けた」は「片付ける所要時間が短かった」というニュアンスになりますよ。「手っ取り早い」はまた「手早い」にも似ていますが、「手早い」は行為の所要時間の短さをやや客観的暗示し結果までは言及しない点が、手間をかけずにいい加減に(適当に)行うというニュアンスのある「手っ取り早い」と異なります。そのため「小麦粉は練らずに手っ取り早く混ぜます」は誤用となり、正しくは「小麦粉は練らずに手早く混ぜます」となりますよ。
その2「手早い」
「手早い」は物事を取り扱う時間が短い様子を表し、動作にかかる所要時間が短いことを暗示し動作の速度が大きいことは暗示しません。また、「手早い」は実際の行為の所要時間の短さを暗示し、一般的に時間を必要としないという意味はありません。「彼女の仕事はいつもてばやい」も仕事を簡単に片づけるというニュアンスで用いられており、能力が高いために仕事を消化する時間が短いというニュアンスはないことが多いでしょう。したがって「彼女は仕事が手早い」は「仕事を簡単に片づける」、「彼女は仕事が速い」は「処理能力がある」というニュアンスになります。
また「この本を読むと知識がてばやく身につく」は簡単に苦労なしにという意味。「手早い」は「素早い」に似ていますが、「素早い」が対象とする動作には原則として制限がないのに対して、「手早い」は手を使った動作や物の取り扱いについて用いられることが多く、要領よく消化するというニュアンスで用いられる点が異なります。また「手早い」は「手っ取り早い」にも似ていますが、「手っ取り早い」が手間をかけずに(適当に)処理するというニュアンスを持つのに対して、「手早い」では結果のいい加減さの暗示がなく、マイナスイメージにはなっていない点が異なりますよ。
「disadvantageous」
「disadvantageous」は「不利」という意味です。「I’m in trouble because I’m being forced to do a job disadvantageous」で「割の悪い仕事を押し付けられて困っている」、「Longer working hours but lower wages disadvantageous」で「労働時間が長くなったのに賃金は変わらず割が悪い」と言い表すことができますよ。
「割が悪い」を使いこなそう
この記事では「割が悪い」の意味・使い方・類語などを説明しました。「割が悪い」の「悪い」は好ましくなく不都合な様子を表すマイナスのイメージの語だと解説しましたね。また「毎日残業でこき使われるのはやりきれない」などのように我慢できない様子を表す言葉に「やりきれない」があります。好ましくないものの程度がはなはだしくて我慢できないことを慨嘆する暗示がありますよ。ただし、対象の程度がはなはだしいこと自体は暗示しません。また、好ましいものの程度がはなはだしいときにも用いません。この点で「耐え難い」と異なるでしょう。そのため「やりきれない暑さ」は「暑くていやになる」、「堪えがたい暑さ」は「非常に暑い」というニュアンスになりますよ。