
「噂をすれば影がさす」の使い方・例文
「噂をすれば影がさす」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。
1.噂をすれば影がさすとやらで、電車の座席に座ってうわさ話に興じていたら、目の前に知子が立っていた。
2.噂をすれば影がさすとはよく言うが、後ろを振り向いたら静子がいたのには驚いたな。
例文からはうわさ話に夢中になるあまり当の本人が近づいてきているのも知らず、いつの間にか姿を現した本人を目にして、驚いている様子が伝わってきます。
その1「得てして」
「得てして」は「金持ちはえてしてけちが多い」などのようにある傾向になりがちである様子を表します。「都会にいるとえてして自然の美しさにばかり目がいき、自然の恐ろしさには気づかないものだ」のように傾向を表す「…ものだ」に呼応することが多い。「得てして」の暗示する傾向は実現の可能性は高くないでしょう。また、ふつうの常識に反するような内容であることが多く、必然的に導かれる内容についてはあまり用いられません。
「得てして」は「とかく」や「ややもすると」に似ていますが、「とかく」の表す可能性はとても高く、自分の力の及ばない無力感やあきらめの暗示がありますし、「ややもすると」は言外にある条件を仮定して、その条件のとき一定のあまり好ましくない結果になる可能性や傾向を暗示します。そのため「得てしてこの世はままならぬ」「私たちは得てして太陽の恩恵を忘れがちになる」は誤用となり、正しくは「とかくこの世はままならぬ」「私たちはややもすると太陽の恩恵を忘れがちになる」となりますよ。ちなみに「噂をすれば影がさす」との違いは、「得てして」の暗示する傾向は実現の可能性は高くないという点です。
その2「兎角」
「兎角」は一般的にあまり好ましくない傾向である様子を表す副詞。「年をとるととかく事を性急に考えがちになる」「母親は息子の妻をとかく批判的に見たがる」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。「ボーナスは減ってもローンは減らないなんて、とかくこの世はままならぬだね」の「とかくこの世はままならぬ」は慣用句で、いろいろやってみたところで、結局この世は自分の思う通りにはならないものだという無力感やあきらめの気持ちを暗示しますよ。
「とかく」は「ともすると」や「ややもすると」に似ていますが、これらはある条件を仮定して、その条件のとき一定の結果になるという意味で用いられ、実現の可能性は「とかく」よりも低いでしょう。なお「噂をすれば影がさす」との違いは、「兎角」は一般的にあまり好ましくない傾向である様子を表すという点です。
「噂をすれば影がさす」の対義語は?
「噂をすれば影がさす」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
「むろん」
「むろん」は明白な意見や判断を述べる様子を表します。とてもかたい文章語的でくだけた会話にはあまり登場しません。例えば「ぼくはむろん君の意見に賛成だ」は述語にかかる修飾語、「結婚式に来てくれるかい。むろんだよ」は述語の用法、「オリンピックの開会式では、主催者はむろんのこと、選手も観客も一様に喜びに包まれていた」は「□□はもろんのこと」、「政治改革の失敗については政府に責任があるのはむろんだが、国会全体の責任でもある」は「□□はむろんだが」の形で条件句を作ります。
主体が自分の主観的な判断でゆきついた結論を述べるというニュアンスがありますよ。また、「むろん」は「もちろん」や「とうぜん」に似ていますが、「もちろん」は「むろん」よりはくだけた場面でも用いられ主観性がより強くなりますし、「とうぜん」は論理上の帰結を表し、「むろん」とは反対に社会の規範に合致する客観性の暗示があります。
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