この記事では「勝って兜の緒を締めよ」について解説する。
端的に言えば「勝って兜の緒を締めよ」の意味は「敵に勝っても油断をしないようにせよ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「勝って兜の緒を締めよ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「勝って兜の緒を締めよ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「勝って兜の緒を締めよ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「勝って兜の緒を締めよ」の意味は?

「勝って兜の緒を締めよ」には、次のような意味があります。

戦いに勝っても油断することなく、また、成功しても慢心することなく、用心深く事に当たれ。

出典:コトバンク

「勝って兜の緒を締めよ」は戦いに勝って油断し、兜を脱いだ時に不意に敵が来襲してこないとも限らないので、勝っても兜の緒を締め直せ、ということからたとえ成功しても気を許してはいけないという戒めの慣用句です。

「勝って兜の緒を締めよ」の語源は?

次に「勝って兜の緒を締めよ」の語源を確認しておきましょう。戦国時代の武将「北条氏康」が放った言葉で、合戦においてはかぶとの緒を緩めるのは油断大敵であると諫めたのが由来だと言われています。それでは「勝」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「勝」は力と上に持ち上げる意味の音を示す文字とを合わせた字。力を入れて物を持ち上げることから、「たえる」「かつ」「まさる」の意味に使われるようになりました。

\次のページで「「勝って兜の緒を締めよ」の使い方・例文」を解説!/

「勝って兜の緒を締めよ」の使い方・例文

「勝って兜の緒を締めよ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.勝って兜の緒を締めよだ!最後まで気を抜かないで戦おう。

2.決勝まで勝ち進んだ子供たちに向かって、監督は勝って兜の緒を締めよと言った。

例文1.2はスポーツの戦いにおいて最後まで全力で戦うことを誓っている場面です。「勝って兜の緒を締めよ」は試合において叫ばれることの多い言葉ですが、ビジネスにおいても耳にするフレーズでもあります。

「勝って兜の緒を締めよ」の類義語は?違いは?

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「勝って兜の緒を締めよ」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「疑り深い」

「疑り深い」は「奴はえらくうたぐりぶかい性格なんだ」「そんなにうたぐりぶかくっちゃいけないよ」などのように人が物事を信用せず疑いやすい様子を表しますよ。「疑い深い」に非常に近い意味を持ちますが、物事を信用せず何でも疑ってかかる性質について侮蔑や困惑の暗示を伴って表現する語です。疑問の深さも本来知る必要のないところまでかんぐって疑うというニュアンスがあり、多分に感情的でしょう。したがって「疑い深い」よりもさらにはっきりしたマイナスイメージがあり、懐疑的だという意味ではありますが、けっしてほめ言葉にはなりません。

また、「疑い深い」はその人の性格全体を評して言う語であって、特定の行為について疑問を持ちやすいことを意味しないことが多い。したがって「彼は他人の研究の結果には疑り深い」は誤用となり、正しくは「彼は他人の研究の結果には疑い深い」となりますよ。ちなみに「勝って兜の緒を締めよ」との違いは、「疑り深い」は人が物事を信用せず疑いやすい様子を表すという点です。

その2「注意深い」

「注意深い」は細かい点まで神経がゆきとどいている様子を表す形容詞。例えば「彼はちゅういぶかくあたりを見回した」が基本的な意味、「君はちゅういぶかい人間だね」はさまざまなことについて細かくゆきとどいている人間という意味で、しばしば「抜け目ない」というニュアンスをもつことがあり、その場合にはややマイナスよりのイメージの語となります。「注意深い」は細かい点まで神経がゆきとどくことを客観的に表す語で、そのことについての感想は原則として入っていません

この点が、将来の不利益を恐れて細かい点まで神経をゆきとどかせるニュアンスのある「用心深い」と異なります。そのため「一度失敗すれば誰でも注意深くなる」は誤用となり、正しくは「一度失敗すれば誰でも用心深くなる」となりますよ。なお「勝って兜の緒を締めよ」との違いは、「注意深い」は細かい点まで神経がゆきとどいている様子を表すという点です。

その3「念のため」

「念のため」は明らかなことを確認する様子を表します。例えば「ねんのため申し添えますが、一度お撮りしたチケットのキャンセル・変更はできません」「どこかで見た顔だと思ったので、ねんのため名前をきいてみた」は述語にかかる修飾語の用法、「三陸海岸って最高だよね。ほんと、でも、あなたとは行かないわよ、ねんのため」は述語部分を省略した用法で、日常会話ではしばしば用いられますよ。

また、客観的に明らかであることを確認する(させ・る)ために、ある行為を行う様子を表します。相手が三陸海岸へ旅行を婉曲に誘っていると察知した話者が、先回りしてあなたとは行きたくないという明らかな結論を相手に改めて確認させるという意味で、まだ明示されていない勧誘を先回りして拒絶する冷酷さが暗示されているでしょう。ちなみに「勝って兜の緒を締めよ」との違いは、「念のため」は明らかなことを確認する様子を表すという点です。

「勝って兜の緒を締めよ」の対義語は?

「勝って兜の緒を締めよ」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

\次のページで「「鈍い」」を解説!/

「鈍い」

「鈍い」は「僕は感覚が鈍いからくすぐられても平気だ」などのように感覚が鋭くない様子を表します。「この子は頭がにぶくて、いくら言って聞かせてもわからない」は「頭(の働き)がにぶい」で慣用的な表現となり、理解が遅いという意味ですよ。「ここまではっきり言ってもわかんないの?にぶいわねえ」の「鈍い」はしばしば日常会話で感動詞的に用いられ、情勢を判断する力に乏しい、察しが悪い、心配りが足りないという意味です。

「勝って兜の緒を締めよ」の英訳は?

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「勝って兜の緒を締めよ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「勝って兜の緒を締めよ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「Let not victory elate you」

「Let not victory elate you」は「勝って兜の緒を締めよ」という意味です。「Even if you win, don't let your guard down . That's what they say let not victory elate you」で「勝っても油断してはだめだよ。勝って兜の緒を締めよと言うからね」、「Let's keep our heads up. That's what they say let not victory elate you」で「気を引き締めていこう。勝って兜の緒を締めよと言うからね」と表現することができますよ。

「勝って兜の緒を締めよ」を使いこなそう

この記事では「勝って兜の緒を締めよ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「勝って兜の緒を締めよ」は戦いに勝って油断し、兜を脱いだ時に不意に敵が来襲してこないとも限らないので勝っても兜の緒を締め直せ、ということからたとえ成功しても気を許してはいけないという戒めだと解説しましたね。また、油断がならず安心できない様子を表す言葉に「気が置けない」がありますこれは「気が置けない」を「安心できない」の意味に解釈した用法で、最近、この誤用例はとても増えてきています。表現の違いを正しく理解しまし適切な表現を心掛けるようにしましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「勝って兜の緒を締めよ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「勝って兜の緒を締めよ」について解説する。
端的に言えば「勝って兜の緒を締めよ」の意味は「敵に勝っても油断をしないようにせよ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「勝って兜の緒を締めよ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「勝って兜の緒を締めよ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「勝って兜の緒を締めよ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「勝って兜の緒を締めよ」の意味は?

「勝って兜の緒を締めよ」には、次のような意味があります。

戦いに勝っても油断することなく、また、成功しても慢心することなく、用心深く事に当たれ。

出典:コトバンク

「勝って兜の緒を締めよ」は戦いに勝って油断し、兜を脱いだ時に不意に敵が来襲してこないとも限らないので、勝っても兜の緒を締め直せ、ということからたとえ成功しても気を許してはいけないという戒めの慣用句です。

「勝って兜の緒を締めよ」の語源は?

次に「勝って兜の緒を締めよ」の語源を確認しておきましょう。戦国時代の武将「北条氏康」が放った言葉で、合戦においてはかぶとの緒を緩めるのは油断大敵であると諫めたのが由来だと言われています。それでは「勝」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「勝」は力と上に持ち上げる意味の音を示す文字とを合わせた字。力を入れて物を持ち上げることから、「たえる」「かつ」「まさる」の意味に使われるようになりました。

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