この記事では「何のその」について解説する。
端的に言えば「何のその」の意味は「何ほどのことがあろうか、何でもない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「何のその」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「何のその」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「何のその」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「何のその」の意味は?

「何のその」には、次のような意味があります。

立派なもの、あるいは困難なことと思われている事物・事態に対して、高が知れていると反発、軽視する気持を表わす。どうということはない。問題じゃない。

出典:コトバンク

「何のその」は相手の判断を否定する様子を表し、相手の判断文に対する応答として用いられます。くだけた表現で日常会話中心に用いられますが、やや乱暴なニュアンスがあり、女性はあまり用いない傾向にあるでしょう。

「何のその」の語源は?

次に「何のその」の語源を確認しておきましょう。「何のその」は「何の」と「その」とが組み合わさってできた言葉。この場合の「何の」は感動詞として用いられており、相手の懸念などを打ち消す語です。また、「その」の「そ」は代名詞、「の」は格助詞で、今述べる事柄に関係することを相手の立場を基準に述べる形で用いられていますよ。

\次のページで「「何のその」の使い方・例文」を解説!/

「何のその」の使い方・例文

「何のその」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.質問する側の佐竹秀雄が「どうだ、参ったか」と聞くと、回答者の曽田節也は「なんのその」と答えた。彼らはお雨の中、話題の週間気候クイズの動画を収録していた。

2.あなた、植垣文雄さんがお迎えに来てくださいましたよ。あめの中たいへんだったでしょう。なんのその私はにちじょうなので、ちょっとしたどらいぶみたいなものですよ。

3.かれはウェールズでの生活が長いので、翻訳なしでもネイティブレベルの発音もなんのそので聞き取れる。

例文1からはユーチューバー同士でネタを考えて頑張って動画を撮っている様子が伺えますね。また、例文2は迎えに行った相手を気遣っての言葉だということが分かりますし、例文3のようにスラスラと会話できる人は頼もしいですよね。

「何のその」の類義語は?違いは?

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「何のその」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「どうでも」

「どうでも」はあらゆる手段や方法を用いて強行する様子を表し、「どうでも家を出るって言うんなら勘当だぞ」「どうでも白状させてみせるぞ」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。主体の強い意志を暗示しますが、しばしば無理難題のニュアンスがありますよ。この「どうでも」は「どうしても」に似ていますが、「どうしても」の方が冷静で無理難題の暗示はありません。そのため「どうでも白状させる」は「どんな手段を使っても」、「どうしても白状させる」は「必ず白状させてみせる」というニュアンスになります。なお「何のその」との違いは、「何のその」は相手の判断文に対する応答として用いられるという点でしょう。

\次のページで「その2「何とでも」」を解説!/

その2「何とでも」

「何とでも」は処理能力が十分にある様子を表し、「私に言えば三万や五万なんとでもなるのに」などのように「何とでもなる」の形で用いられることが多いですよ。前に処理能力の範囲を示し、その範囲内でなら十分に処理能力があるというニュアンスで、気安さの暗示があります。ちなみに「何のその」との違いは、「何のその」はやや乱暴なニュアンスがあり、女性はあまり用いない傾向にあるという点です。

「何のその」の対義語は?

「何のその」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「辛うじて」

「辛うじて」は大きな困難や労力を伴って最低の状態を確保する様子を表し、「その部屋にはかろうじて朝日が差し込む窓がある」「通路は人が横になってかろうじて通れる狭さだ」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。前者は朝日が少し差し込むだけで他の時間は日陰になるという意味で、最低の状態として朝日を得るという意味、後者は通路の狭さの程度が人が横になって通るだけのものだという意味で、状態を比喩的に説明していますよ。

「辛うじて」は「辛くも」や「やっと」に似ていますが、「辛くも」は苦労して失敗を脱したという意味で切迫感と安堵の暗示がありますし、「やっと」はもともと実現可能な対象について苦労して達成した安堵の暗示があります。そのため「辛うじて第一志望に受かった」は「合格点ぎりぎりだった」、「辛くも第一志望に受かった」は「落ちないでよかった」、「やっと第一志望に受かった」は「合格するのに苦労した」というニュアンスになりますよ。

その2「何んとか」

「何んとか」はあらゆる手段を尽くして希望を満たす様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられます希望を満たすためにあらゆる努力をするというニュアンスで、文脈によって懸命・努力・切迫感・懇願などの暗示がこもるでしょう。「(家賃の催促)もう一日も待てないね。そこをなんとか…」の「そこをなんとか…」は無理を承知で懇願する際によく用いられる表現で、あらゆる可能性を探ってこちらの要求に答えて欲しいという話者の強い依頼を表します。この「何んとか」は「どうにか」「辛うじて」や「やっと」などに似ていますが、「どうにか」「辛うじて」は好ましくない境界をぎりぎりのところで脱したというニュアンスで、「どうにか」には安堵の暗示が、「辛うじて」には切迫感と安堵の暗示が、「やっと」はもともと実現可能な対象について苦労して目標を達成した安堵の暗示があるでしょう。

したがって「その部屋には何んとか朝日が差し込む窓がある」「その店は昼近くになって何とか開店した」は誤用となり、正しくは「その部屋には辛うじて朝日が差し込む窓がある」「その店は昼近くになってやっと開店した」となります。また「終電になんとか間に合った」は「一生懸命走ったから」、「終電にどうにか間に合った」は「乗り遅れないでよかった」、「終電に辛うじて間に合った」は「もう少しで乗り遅れるところだった」、「終電にやっと間に合った」は「間に合わせるのに苦労した」というニュアンスになりますよ。

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「何のその」の英訳は?

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「何のその」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「何のその」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「no big deal」

「no big deal」は「大きな問題ではない」という意味です。「I got through it all no big deal」で「何のそので困難を乗り切った」、「When times are tough, don't big deal」で「苦しい時こそ、何のそので頑張って」と言い表すことができますよ。

「何のその」を使いこなそう

この記事では「何のその」の意味・使い方・類語などを説明しました。「何のその」は相手の判断を否定する様子を表す表現で、相手の判断文に対する応答として用いられますが、やや乱暴なニュアンスがあり女性はあまり用いない傾向にあると解説しましたね。また「何のその」は「参ったか」という相手の判断に対して、まだ参っていないという応答を表す表現でもあります。参考にしてくださいね。

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国語言葉の意味

「何のその」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「何のその」について解説する。
端的に言えば「何のその」の意味は「何ほどのことがあろうか、何でもない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「何のその」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「何のその」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「何のその」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「何のその」の意味は?

「何のその」には、次のような意味があります。

立派なもの、あるいは困難なことと思われている事物・事態に対して、高が知れていると反発、軽視する気持を表わす。どうということはない。問題じゃない。

出典:コトバンク

「何のその」は相手の判断を否定する様子を表し、相手の判断文に対する応答として用いられます。くだけた表現で日常会話中心に用いられますが、やや乱暴なニュアンスがあり、女性はあまり用いない傾向にあるでしょう。

「何のその」の語源は?

次に「何のその」の語源を確認しておきましょう。「何のその」は「何の」と「その」とが組み合わさってできた言葉。この場合の「何の」は感動詞として用いられており、相手の懸念などを打ち消す語です。また、「その」の「そ」は代名詞、「の」は格助詞で、今述べる事柄に関係することを相手の立場を基準に述べる形で用いられていますよ。

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