この記事では「虎の尾を踏む」について解説する。

端的に言えば虎の尾を踏むの意味は「とても危険な事をすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「虎の尾を踏む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「虎の尾を踏む」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「虎の尾を踏む」の意味や語源・使い方まとめ

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虎の尾を踏む」(とらのおをふむ)は、なかなか日常会話では使われない慣用句ですが、小説や、ドラマなどでは見聞きしたことがあると思います。もしこの言葉通り実際に虎の尻尾(しっぽ)を踏んだら…、どういうことになるでしょう?きっと大変な事になってしまいますね。

それでは早速、この物騒な慣用句「虎の尾を踏む」の意味・語源・使い方を見ていきましょう。

「虎の尾を踏む」の意味は?

まず初めに「虎の尾を踏む」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「虎の尾を踏む」には、次のような意味があります。

1.非常に危険なことをすることのたとえ

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎の尾を踏む」

2.きわめて危険な事をすることのたとえ

出典:新明解国語辞典(三省堂)「虎の尾を踏む」

上記の通り「虎の尾を踏む」は、非常に危険な行為をする、と言う意味の慣用句です。
小説などでは、怖ろしい事と分かっていて挑戦するような場面で使われることが多いですね。うっかり危険に踏み入れるのではなく、故意に危険な行為をする、と言うニュアンスがあります。

「虎の尾を踏む」の語源は?

次に「虎の尾を踏む」の語源を確認しておきましょう。「虎の尾を踏む」は中国の『易経』と言う物事の理を陰陽で説いた占いの書物に由来があり、『履』と言う占い結果の項目に、語源となった原文があります。

原文は「眇能視、跛能履。履虎尾咥人。」と書かれており、意味は、野心を起こして過信し、甘い考えでゆくと、虎の尾を踏んで噛みつかれるだろう、と言うことです。占いの意味は、意気込みばかりあっても、思慮が足りなければ痛い目をみる。と言う教訓ですが、この「虎の尾を踏む」の部分だけで非常に危険な行為をすると言う意味で使われるようになったのでしょう。

\次のページで「「虎の尾を踏む」の使い方・例文」を解説!/

「虎の尾を踏む」の使い方・例文

それでは「虎の尾を踏む」の使い方を実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼女の機嫌が悪いのはわかっていたが、虎の尾を踏む覚悟で仕事での注意をした。
2.上司の失敗を会議で追及したらしいが、あえて虎の尾を踏むようなことをするなんて面の皮が厚いな。
3.対戦相手は強豪だったが、敵の裏をかく作戦を立て、虎の尾を踏むような心地で挑んだ。

例文1にある「虎の尾を踏む覚悟」と言う表現はよく使われます。また、例文2と3は「虎の尾を踏むような」と、どちらも同じ言い回しをしていますが、このような言い回しも良く使われるでしょう。

意味の項でも説明した通り、「虎の尾を踏む」は、知らずに危険なことをしてしまうのではなく、自分から意図的に危険なことをする、と言うことですから注意しましょう。

「虎の尾を踏む」の類義語は?違いは?

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「虎の尾を踏む」の類義語には、「薄氷を踏む」や「竜の頷の珠を取る」がふさわしいでしょう。

その1「薄氷を踏む」

薄氷を踏む」の読み方は「はくひょうをふむ」です。小説などでしばしば使われる表現ですね。

今にも割れそうな、水面に薄くはった氷の上を踏んで歩く、とても不安で落ち着かないようすを例えにして、非常に危険な場面に臨んでいることを表しています。事態が悪い方へ向かわないか、ひやひやしている、緊張している気持ちです。「薄氷を踏む思い」という言い回しが良く使われます。

\次のページで「その2「竜の頷の珠を取る」」を解説!/

その2「竜の頷の珠を取る」

竜の頷の珠を取る」は「りゅうのあぎとのたまをとる」と読みます。「竜の頷(あぎと)」とは、「竜のあご」のこと。「竜の頷の珠を取る」の意味は、目的のために非常に危険なことをする、と言うことです。あまり馴染みのない言葉だと思いますが、実は昔話でよく知られている「竹取物語」にも関係がありますので紹介しましょう。

中国の古典『荘子』に、「竜頷」という記述があります。竜の首には美しい珠があり、危険を冒さなくては手に入れられない貴重な物だ、と言う意味です。
かぐや姫が、多くの男性に求婚された時、その結婚を避けるために求婚者に無理難題を要求したのは知っていますね。その時の一つが、この竜の頷の珠を取ってくることだったのです。

これらから「竜の頷の珠を取る」は、ある目的のために非常な危険をおかすことの例えとして使われるようになりました。

「虎の尾を踏む」の対義語は?

「虎の尾を踏む」の対義語は、ぴったりの言葉はありませんが、反対の意味に近い言葉に「君子危うきに近寄らず」があります。紹介しましょう。

「君子危うきに近寄らず」

君子危うきに近寄らず」(くんしあやうきにちかよらず)は、有名な言葉ですから聞いた事があるでしょう。「君子」とは、学識・人格ともにすぐれたりっぱな人、人格者のことを指します。つまり「君子危うきに近寄らず」は、賢い人は自分の行動を慎むので危険な事には近づかない、と言うことです。

「君子危うきに近寄らずだよ」と、人に危険を回避するよう忠告したり、賢い人の危なげない立ち回りを賞賛するときに「さすが君子危うきに近寄らずだね」などと使われます。

日本の独自な表現「竜の鬚を撫で虎の尾を踏む」

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中国の故事に由来した「虎の尾を踏む」を使って、日本独自に作られた言葉に「竜の鬚(ひげ)を撫で虎の尾を踏む」があります。説明しましょう。

平家物語の一節に「竜の髭(ひげ)をなで、とらのををふむ心地はせられけれども」と言う一文があります。日本人にとっても昔から竜は畏敬するものでした。ですから「竜の髭を撫でる」は、「虎の尾を踏む」のと同じく、大変な危険をおかすことですね。つまり「竜の鬚を撫で虎の尾を踏む」とは、きわめて危険な行為をすることを強調している言葉なのです。

日本独自の「竜の髭を撫でる」と言う表現と、中国の故事成語「虎の尾を踏む」が組み合わされた面白い表現ですね。

 

「虎の尾を踏む」を使いこなそう

この記事では「虎の尾を踏む」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「虎の尾を踏む」の意味は、非常に危険な事をすることです。意図的に危険なことをする行為や、そのハラハラしている気持ちを表す際に使うことができます。

しかし、「虎の尾を踏む」を、虎の尾を踏んで怒らせる、と言うニュアンスでとらえて、人を怒らせることや、神経を逆なでする、と言う、「逆鱗にふれる」と同じような意味で誤用している例がとても多いです。気をつけましょう。

語源を知ることは、間違えやすい言葉の誤用を防ぐこともできるでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「虎の尾を踏む」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「虎の尾を踏む」について解説する。

端的に言えば虎の尾を踏むの意味は「とても危険な事をすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「虎の尾を踏む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「虎の尾を踏む」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「虎の尾を踏む」の意味や語源・使い方まとめ

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虎の尾を踏む」(とらのおをふむ)は、なかなか日常会話では使われない慣用句ですが、小説や、ドラマなどでは見聞きしたことがあると思います。もしこの言葉通り実際に虎の尻尾(しっぽ)を踏んだら…、どういうことになるでしょう?きっと大変な事になってしまいますね。

それでは早速、この物騒な慣用句「虎の尾を踏む」の意味・語源・使い方を見ていきましょう。

「虎の尾を踏む」の意味は?

まず初めに「虎の尾を踏む」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「虎の尾を踏む」には、次のような意味があります。

1.非常に危険なことをすることのたとえ

出典:デジタル大辞泉(小学館)「虎の尾を踏む」

2.きわめて危険な事をすることのたとえ

出典:新明解国語辞典(三省堂)「虎の尾を踏む」

上記の通り「虎の尾を踏む」は、非常に危険な行為をする、と言う意味の慣用句です。
小説などでは、怖ろしい事と分かっていて挑戦するような場面で使われることが多いですね。うっかり危険に踏み入れるのではなく、故意に危険な行為をする、と言うニュアンスがあります。

「虎の尾を踏む」の語源は?

次に「虎の尾を踏む」の語源を確認しておきましょう。「虎の尾を踏む」は中国の『易経』と言う物事の理を陰陽で説いた占いの書物に由来があり、『履』と言う占い結果の項目に、語源となった原文があります。

原文は「眇能視、跛能履。履虎尾咥人。」と書かれており、意味は、野心を起こして過信し、甘い考えでゆくと、虎の尾を踏んで噛みつかれるだろう、と言うことです。占いの意味は、意気込みばかりあっても、思慮が足りなければ痛い目をみる。と言う教訓ですが、この「虎の尾を踏む」の部分だけで非常に危険な行為をすると言う意味で使われるようになったのでしょう。

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