この記事では「業突く張り」について解説する。

端的に言えば業突く張りの意味は「欲張りで強情なこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「業突く張り」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「業突く張り」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「業突く張り」の意味や語源・使い方まとめ

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業突く張り」は「ごうつくばり」と読みます。最近ではあまり使われなくなり、馴染みのない表現かもしれませんが、年配の方はしばしば使われていたりしますね。また、小説や時代劇などでも聞くことがあるでしょう。

それでは早速「業突く張り」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「業突く張り」の意味は?

まず初めに「業突く張り」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「業突く張り」には、次のような意味があります。

1.[名・形動]非常に欲張りで強情なこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「業突く張り」

2.ひどく欲張りな様子(人)。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「業突く張り」

上記の通り「業突く張り」は、非常に欲張りで強情、頑固なことや、そのさまを言います。また、欲張りで強情な人、と言う意味で人を指して使う場合もありますね。「業突く張り」は、人をののしる時などに使われる、悪い意味の言葉です。

「強突く張り」とも書くことがあるようですが、「業」を同じ読みで「強」と当ててしまったと考えられており、「業突く張り」の方が一般的と言えるでしょう。
また送り仮名を省略して「業突張り」「強突張り」とも書きます。

「業突く張り」の語源は?

次に「業突く張り」の語源を確認しておきましょう。「業突く張り」は、仏教用語の「」と、古語の「つくばい」に由来していると考えられています。

本来仏教で言う「業」には良いも悪いもなく、自分の意志や行動からの因果関係を表すのですが、民間に広がるにつれ、「自分の悪事の報い」と言った意味で使われるようになってきました。「業晒し(ごうさらし)」と言う表現もあり、これは、悪事を働き恥をさらす、と言う意味です。「業突く張り」の「業」も悪事を働くと言うニュアンスでしょう。

「つくばい」は、うずくまる、と言う意味ですが、おとし入れようとしてうずくまって、ひそかに機会をねらう、と言う意味も持っており、「業突く張り」の「突く張り」の部分はこの「つくばい」が語源と考えられています。

\次のページで「「業突く張り」の使い方・例文」を解説!/

「業突く張り」の使い方・例文

それでは「業突く張り」の使い方を実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.昨日友達からもらったお礼のクッキーを兄が全部食べてしまい、注意したら「その辺に置いておいたお前の責任だ!」と言われた。なんて業突く張りな言い様だろう。
2.今日の営業成績月間ランキングに載っていた先輩だが、ひどい業突く張りで、後輩のお客様を許諾なしに堂々ととっていくらしいよ。
3.あの業突く張りめ!自分の得だと判断するとひどい方法を使うことも厭わないんだから、無欲な弟のつめの垢でも飲ませてやりたいくらいだ。

例文のように「業突く張り」は、欲張りで頑固、強情な人、またはそのさまを悪く言う際に使います。

例文1と2は、欲張りな様子を批判している表現です。
例文3は、欲張りな人だとののしる表現で、時代劇や小説の会話文でしばしば使われますね。

「業突く張り」は悪意がある表現ですから、使う際には気をつけましょう。

「業突く張り」の類義語は?違いは?

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業突く張りの類義語は、「阿漕」や「意地汚い」が挙げられます。

その1「阿漕」

阿漕」の読み方は「あこぎ」です。漢字での書き方は知らなかったかも知れませんが、読みを聞くと耳にしたことがある言葉だったと思います。意味は、しつこく、ずうずうしいこと、義理人情に欠けあくどいことです。特に無慈悲に金品をむさぼることによく使われますね。

「阿漕」は、津市の海岸「阿漕浦」に伝わる物語に由来しています。
昔、阿漕ヶ浦は禁猟区でしたが、ある漁師が密漁をして、捕らえられても何度も密猟を繰り返していたという伝説があり、このことから、ずうずうしい、しつこく金品をむさぼる、と言う意味で「阿漕」が使われるようになったと言うことです。

それでは、「阿漕」の使い方を例文で確かめてみましょう。

\次のページで「その2「意地汚い」」を解説!/

信ぴょう性に欠ける大げさな画像を使って、高く商品を売ろうだなんて、全く阿漕な商売をするよ。

その2「意地汚い」

意地汚い(いじきたない)」は日常会話でも良く使われますね。飲食物や金品などを欲しがる気持ちが強い、と言う意味です。特に飲食物に欲張りな事に良く使われますね。「意地」は、その人の心根や気立て、根性と言う意味を持ちますが、その他にも、物をむやみにほしがる気持ち、食べ物に執着する心と言う意味も持っています。

では、意地汚いの使い方も例文で確かめてみましょう。

読書しながらずっとお菓子を食べ続けるなんて、意地汚い真似はやめなさい!

「業突く張り」の対義語は?

「業突く張り」の対義語には「恬淡」がふさわしいでしょう。

「恬淡」

恬淡」は「てんたん」と読みます。あまり日常会話では使われませんね。小説などでは見かけることがある熟語ですから、覚えておきましょう。

「恬」は、心が静かでやすらかなこと、おだやかだと言う意味の漢字です。「淡」は色々な意味を持つ漢字ですが、ここでは、気持ちがあっさりしている。執着しないと言う意味です。つまり「恬淡」とは、欲が無く、物事に執着しないこと、やそのさまを表します。
無欲で執着しないと言う意味ですからは「業突く張り」の対義語だと言えますね。

「恬淡」の使い方も例文で確かめてみましょう。

父は歳をとったせいか自分自身の利益には恬淡とした態度で、地域のボランティアに精を出している。

\次のページで「「業」が使われている慣用句」を解説!/

「業」が使われている慣用句

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前述した通り「業」は江戸時代に民間に広まった仏教用語です。
民間に広がった結果、仏教で言う「業」とは、だんだん意味が変わってしまい色々な意味合いを持つようになりました。この項では「業」を使った他の慣用句を紹介します。

「業が深い」の「業」は前世からの因縁と言う意味です。「業が深い」は、元々前世の悪行の報いで運が悪い、と言う意味でしたが、現在ではそれが転じて、欲が深いと言う意味でよく使われます。

「非業の死」は、前世からの所業に関係ないところで死んでしまうと言う意味で、転じて、志半ばで不運な報われない死に方をすることです。「非業の最期を遂げる」と言う言いまわしでも良く使われます。

「業を煮やす」事が思うように運ばず腹を立てる、ことです。「業を煮やす」の「業」は、心の動き、と言う意味で、つまり、心が煮えるように激しく怒る、と言うことですね。

「業突く張り」を使いこなそう

この記事では「業突く張り」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「業」は江戸時代に広まった仏教用語です。江戸時代は現代のように情報社会ではありませんから、言語は人づてに伝わる事で、意味の変化が著しかったと考えられます。それゆえに「業」は色々な意味を持つようになりました。
「業突く張り」と言う言いまわしもその一つと言えるでしょう。
「業突く張り」「業を煮やす」「非業の死」、全て「業」の意味が違いますね。

言葉は、語源を知ることでより深く知ることができます。
積極的に語源を調べて覚えていきましょう。

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国語言葉の意味

「業突く張り」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「業突く張り」について解説する。

端的に言えば業突く張りの意味は「欲張りで強情なこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「業突く張り」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「業突く張り」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「業突く張り」の意味や語源・使い方まとめ

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業突く張り」は「ごうつくばり」と読みます。最近ではあまり使われなくなり、馴染みのない表現かもしれませんが、年配の方はしばしば使われていたりしますね。また、小説や時代劇などでも聞くことがあるでしょう。

それでは早速「業突く張り」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「業突く張り」の意味は?

まず初めに「業突く張り」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「業突く張り」には、次のような意味があります。

1.[名・形動]非常に欲張りで強情なこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「業突く張り」

2.ひどく欲張りな様子(人)。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「業突く張り」

上記の通り「業突く張り」は、非常に欲張りで強情、頑固なことや、そのさまを言います。また、欲張りで強情な人、と言う意味で人を指して使う場合もありますね。「業突く張り」は、人をののしる時などに使われる、悪い意味の言葉です。

「強突く張り」とも書くことがあるようですが、「業」を同じ読みで「強」と当ててしまったと考えられており、「業突く張り」の方が一般的と言えるでしょう。
また送り仮名を省略して「業突張り」「強突張り」とも書きます。

「業突く張り」の語源は?

次に「業突く張り」の語源を確認しておきましょう。「業突く張り」は、仏教用語の「」と、古語の「つくばい」に由来していると考えられています。

本来仏教で言う「業」には良いも悪いもなく、自分の意志や行動からの因果関係を表すのですが、民間に広がるにつれ、「自分の悪事の報い」と言った意味で使われるようになってきました。「業晒し(ごうさらし)」と言う表現もあり、これは、悪事を働き恥をさらす、と言う意味です。「業突く張り」の「業」も悪事を働くと言うニュアンスでしょう。

「つくばい」は、うずくまる、と言う意味ですが、おとし入れようとしてうずくまって、ひそかに機会をねらう、と言う意味も持っており、「業突く張り」の「突く張り」の部分はこの「つくばい」が語源と考えられています。

\次のページで「「業突く張り」の使い方・例文」を解説!/

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