この記事では「胸を借りる」について解説する。

端的に言えば胸を借りるの意味は「実力者に練習の相手をしてもらう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「胸を借りる」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

学生時代は運動に無縁のまま過ごしたので、スポーツで「胸を借りた」経験は皆無とか。とある職場で初めて営業しに行った際、交渉相手がその道30年のベテランだったときは緊張しすぎて「胸を借りる」とでも思わないとやっていられなかったとのこと。胸を借りるとはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「胸を借りる(むねをかりる)」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「胸を借りる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「胸を借りる」の意味は?

「胸を借りる」には、次のような意味があります。

相撲で、上位の力士にけいこの相手をしてもらう。また、一般に実力のある者に練習の相手をしてもらう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

何事も一人で練習しているだけでは限界があり、自分よりも知識や経験が豊富な人に立ち向かってこそ成長するところがありますね。相手のほうが実力が格段に上だからとひるんでおじけづくのではなく、果敢に挑戦する様子を表すのが「胸を借りる」。

スポーツ関係の話題でよく使われる言葉ですが、ビジネスシーンでも「先輩の胸を借りるつもりで挑みます」などと耳にしますよ。

「胸を借りる」の語源は?

次に「胸を借りる」の語源を確認しておきましょう。対面してぶつかり合うイメージのとおり、この言葉は相撲に由来します。相撲の練習の一つに「ぶつかり稽古」があり、このとき受け手を務めるの、はぶつかっていく力士より上位の力士。ここから、力をつけるために自分より強い相手に稽古をつけてもらうこと全般を「胸を借りる」というようになりました。

なお、慣用句で「胸」が使われる場合は「胸が痛む」「胸を躍らせる」のように人の気持ちを比喩的に表現する場合が多いですね。ですがこの「胸を借りる」は珍しく、体の一部としての胸そのものを表していますよ。

 

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「胸を借りる」の使い方・例文

「胸を借りる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・横綱の胸を借りて練習を積んだので、ずいぶん自信がつきました。

・一般人の我々が世界レベルの指導を受けられるめったにない機会です。胸を借りて堂々と実力アップを目指しましょう。

・次の試合の対戦相手はt全国大会にも出場する強豪校だ。臆する僕たちに監督は「胸を借りるつもりで挑戦しよう」と声をかけた。

 

3つ目の例文のように「胸を借りるつもりで」という使い方はとてもよく見かけます。誰から見ても経験や実績、能力が上の相手と戦う際はどうしても「負けるに決まっている」「勝負にならないのではないか」と引っ込み思案な思いが心を占めがち。そんなときに励ます表現として便利ですよ。

例えば職場で後輩が、初めて役員会議で説明をするといった場合に、うまく使えそうですね。

「胸を借りる」の類義語は?違いは?

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では、「胸を借りる」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。

「稽古(けいこ)をつけてもらう」

伝統的な芸能や武術を習うことを、特に「稽古」といいます。似た言葉「練習」との違いは、舞踊などの芸事や武道といった日本の伝統的なものごとの訓練について使うのが「稽古」だという点。また、練習は一人でも行いますが、師匠から習うイメージが強いのが稽古です。

この「師匠から習う」ことを「稽古をつけてもらう」、逆に教えることは「稽古をつける」と表現します。上位者が下位者に教える点では「胸を借りる」と同じですが、「力不足だが挑戦する」とのイメージは特にないのが「稽古をつけてもらう」。果敢な挑戦というよりは、粛々と習うニュアンスがあるでしょうか。

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「胸を借りる」の対義語は?

では、「胸を借りる」と逆の意味はどうやって表したらいいでしょうか。対になる表現があるので覚えておきましょう。

「胸を貸す」

「借りる」の反対「貸す」を使って「胸を貸す」といえば、実力のある者が下の者の練習相手をしてあげることを表します。

先輩の胸を借りて成長した力士は、今度は後輩に胸を貸して指導するようになるのでしょうね。

「胸を借りる」の英訳は?

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最後に「胸を借りる」を英語で表す方法を紹介します。

「practice with」

残念ながら、「胸を借りる」ほど端的に「上位者に練習相手をしてもらう」を表す英単語は存在しません。先輩後輩の上下関係に厳しい日本と異なり、英語圏では練習相手の実力の程度はあまり気にならないのでしょうか。

ですから、「○○さんと練習する」なら「practice with ○○」でかまいません。特に相手の上手さ、実力差を強調したければ、「practice with a partner of higher skill(高い技術を持つ相手と練習する)」とすればよいでしょう。

相撲が由来の慣用句ってほかにもあるの?

桜木先生ご指摘のとおり、よく聞く慣用句でも実は相撲が語源というものがあります。いくつか紹介しますね。

その1「勇み足」

相撲では、相手を土俵際まで追い詰めながら、勢いあまって自分から先に足を土俵の外に踏み出し、負けになることを言います。ここから、勢い余ってやりすぎの失敗をすることをいうようになりました。

この語源を知っていれば、「勇み足」は失敗全般を表すのではなく、調子に乗ってやりすぎた場合に限定して使うべきだとわかりますね。

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その2「待ったなし」

「待った」とは相撲の取り組みでやむを得ない理由で勝負開始前、あるいは途中で止める際のかけ声であり、またその止める行為そのもののこと。立合いには時間制限があり、それを超えると「待った」と言ってやり直すことは制裁金の対象になります。相撲中継で、行事が「時間です」「待ったなし」と力士に声をかけて知らせているのを見たことがある人もいるでしょう。

ここから、時間的に差し迫っていて先送りできない状況のことを「待ったなし」というようになりました。

・大舞台に抜擢された嬉しさで社外に秘密を漏らすとは、勇み足もいいところだ。

・これ以上の少子化を防ぐべく、待ったなしの対策が必要とされている。

「胸を借りる」を使いこなそう

この記事では「胸を借りる」の意味・使い方・類語などを説明しました。今回、辞書には掲載されていませんでしたが、「胸を借りる」には「泣くときに胸に顔をうずめさせてもらう」という意味もありますね。こちらも同様に、泣かせてあげる、慰めてあげる際は「胸を貸す」を使います。

どちらの意味においても、筆者ぐらいの年になると胸を貸す側でなければならないのだろうなぁと少し寂しい気も…。先輩や年長者に頼って、胸を借りられるうちにどんどん借りておくことをおすすめします。

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国語言葉の意味

【慣用句】「胸を借りる」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「胸を借りる」の使い方・例文

「胸を借りる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・横綱の胸を借りて練習を積んだので、ずいぶん自信がつきました。

・一般人の我々が世界レベルの指導を受けられるめったにない機会です。胸を借りて堂々と実力アップを目指しましょう。

・次の試合の対戦相手はt全国大会にも出場する強豪校だ。臆する僕たちに監督は「胸を借りるつもりで挑戦しよう」と声をかけた。

 

3つ目の例文のように「胸を借りるつもりで」という使い方はとてもよく見かけます。誰から見ても経験や実績、能力が上の相手と戦う際はどうしても「負けるに決まっている」「勝負にならないのではないか」と引っ込み思案な思いが心を占めがち。そんなときに励ます表現として便利ですよ。

例えば職場で後輩が、初めて役員会議で説明をするといった場合に、うまく使えそうですね。

「胸を借りる」の類義語は?違いは?

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では、「胸を借りる」と似た意味で使える言葉を見ていきましょう。

「稽古(けいこ)をつけてもらう」

伝統的な芸能や武術を習うことを、特に「稽古」といいます。似た言葉「練習」との違いは、舞踊などの芸事や武道といった日本の伝統的なものごとの訓練について使うのが「稽古」だという点。また、練習は一人でも行いますが、師匠から習うイメージが強いのが稽古です。

この「師匠から習う」ことを「稽古をつけてもらう」、逆に教えることは「稽古をつける」と表現します。上位者が下位者に教える点では「胸を借りる」と同じですが、「力不足だが挑戦する」とのイメージは特にないのが「稽古をつけてもらう」。果敢な挑戦というよりは、粛々と習うニュアンスがあるでしょうか。

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