今回は「皆既月食」がテーマです。

皆は皆月食がどんな現象か知っているか?月食とは月が地球の影に入り、月が欠けて見える現象のことです。ところで月食は、観測する場所によって見え方異なる。皆既月食は月が本影(太陽が地球によって完全に隠された部分)に入った状態で、観察すると月がだんだん欠けていくのがわかる。そして部分月食は月の一部分が暗くなる月食のことです。

月といえば黄色ですが、皆既月食の月は赤っぽく見える。実はこれは夕焼けと同じ原理で起きているのです。今回はそんな皆既月食について学んでいきます。解説は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

理科教育に興味があり、理系に進んだリケジョ。実験や科学工作が大好きで、科学館の仕事が楽しくてしょうがない。

月食とはどんな現象?

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月食とは月・地球・太陽が一直線に並び、月に向かう太陽の光を地球が遮る現象です。地球が太陽と月との間に入ると月に地球の影がかかってしまうため、月が欠けて見えます。ちなみに月食は月蝕と表記されることも。この月食、地球上のいる場所によってその見え方が異なります。

ところで、毎日ちょっとずつ月の形が変わっていく月の満ちかけを考えてみましょう。月の満ち欠けにも月・地球・太陽の位置が大きく影響しています。そして月が満月となるのも月・地球・太陽が一直線となった時です。そのため、月食は必ず満月の時に起こります。しかし、満月の時に必ず月食かといえば、そうではありません。この仕組みについては後程解説いたします。

普段見られる月の満ち欠けについてはこちらを見てくださいね。

月食の種類

月食の種類

image by Study-Z編集部

月食には皆既月食部分月食半影月食があります。それぞれどのような現象なのでしょうか。

月にかかる地球の影には太陽から全く光が届かない本影、そして本影の外側で太陽の光が部分的に届く半影があります。そして本影にすっぽりと隠れるのが皆既月食、月の一部が暗くなるのが部分月食です。そして半影の部分では半影月食が起こり、月の一部分がわずかに暗くなります。半影月食は気づかないこともあるくらい観察しづらい現象で、月食として話題になっているのは皆既月食と部分月食です。

皆既月食

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皆既月食の色、赤銅色

まずは皆既月食の色について説明します。月の色と言えば多くの人は黄色を思い浮かべるでしょう。しかし皆既月食の時、月は赤く見えるのです。

皆既月食は月が地球の本影に入ることで起きることは先ほど説明しましたね。太陽の下でも蛍光灯の下でも影は日が当たらず暗くなっています。もちろん、影に入ったものも黒っぽく見えますね。しかし月食の場合、影に入った月が真っ暗になって空に消えてしまうのかといえば、そうではありません。皆既月食の時の月は赤みを帯びていて、この色は赤銅色と呼ばれています。この皆既月食の色のキーワードは「散乱」です。

地球に生命があるのは、地球に大気があるからですね。夕焼けが赤いのは、この大気を進む太陽光に含まれた散乱されにくい赤い光の影響です。太陽光にはいろいろな色の光が含まれています。波長が短い青はすぐに散乱してしまいますが、波長の長い赤い光は散乱しにくいのです。

\次のページで「皆既月食の色、赤銅色2」を解説!/

皆既月食の色、赤銅色2

月食が起こる時、太陽の光は地球の大気によって青い光は散乱します。そして散乱しづらい赤い光だけが地球の大気を通過していくのです。そしてこの赤い光は大気によって屈折し、地球の影に入ります。

太陽の光が地球の周りにある大気の中を通過する時、青い光は波長が短いために光が散乱されてしまい、大気をほとんど通ることができません。 一方で、赤い光は波長が長く、光が散乱されにくいため、光は弱められながらも大気を通過することが可能です。 そして、この赤い光は大気中で屈折され、地球の影の中に入り込みます。この光が月を垂らすため、皆既月食の時の月は赤く見えるのです。

光の散乱について知りたい人はこちらの記事をどうぞ。

ダンジョンスケールとは?

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皆既月食の色は赤銅色、と言いましたが常に同じ色になるわけではありません。地球の大気にチリが少ないと、大気を通り抜けることのできる光の量が大きく、明るいオレンジ色の月になります。しかし、チリが多いと光の量が少なく月は暗くなってしまうのです。このような皆既月食の時の月の色の尺度がダンジョンスケールで、フランスの天文学者アンドレ・ダンジョンが発案しました。

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非常に暗い月食。

月面の中心はほとんど見えない。

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暗い月食。

灰色か褐色で、月の細部はわかりづらい。

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暗い赤の月食。

月の中心は暗いが、周辺部はやや明るい。

3

れんが色の月食。

月の縁は明るいかまたは黄色。

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非常に明るい、オレンジ色の月食。

月の縁は青みがかって非常に明るい。

\次のページで「なぜ月食はたまにしか見られないの?」を解説!/

なぜ月食はたまにしか見られないの?

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月、地球、太陽が一直線に並んだ時に起きる月食。それなら毎月満月の度に見られてもいいような気がしますね。しかし月食は年に1、2回程度しか見られません。なぜでしょうか。

月食が満月の度に起こらないのは、月が地球の周りを公転する軌道が地球の公転軌道よりも傾いているためです。このずれによって月の通り道が地球の影よりも上下にずれてしまいます。そのため毎回月が地球の影に入るわけではなく、月が地球の陰に収ったときにのみ月食が起こるのです。

スーパームーンの皆既月食

2021年5月にスーパームーンでの皆既月食が見られました。スーパームーンとは月は地球に最接近したときの満月または新月のことです。最も遠い時と比べてスーパームーンでは見かけの直径が1.14倍の大きさとなります。前回のスーパームーンでの皆既月食は24年前であり、レアな現象であることがわかりますね。

日食とは

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月食と合わせて覚えたいのが「日食」です。日食は太陽と地球の間に月が入った時の起こります。日食が起きると月によって太陽の光が遮られ、地球の表面には大きな影が現れるのです。そして、影がかかった場所で日食を観測することができます。月食が満月の度に起きないのと同様に、日食も新月の度に起きるわけではありません。

日食には太陽の一部が月によって隠される部分日食、太陽の全てが月によって隠される皆既日食、そして月のまわりから太陽がはみ出して見える金環日食があります。金環日食は、地球と月との距離が遠いときに見ることができる現象です。

日食についてはこちらの記事もどうぞ。

\次のページで「皆既月食とは」を解説!/

皆既月食とは

月と太陽の間に地球が入り込んで光をさえぎって起きる月食。満月の時しか起こらず、観測する場所によって見え方が異なります。一部分が影に入った月食を部分月食と呼ぶのです。

皆既月食が起こると、月の色が赤っぽく見えます。皆既月食の際の月の色と、夕焼けが赤いのは同じメカニズムとは驚きですね。また、皆既月食の時の月の明るさは地球の大気中のチリの量によって決まります。この時の色を表しているのがダンジョンスケールです。

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地学宇宙理科

「皆既月食」ってどんな現象?スーパームーンやダンジョンスケールとは?科学館職員がわかりやすく解説

今回は「皆既月食」がテーマです。

皆は皆月食がどんな現象か知っているか?月食とは月が地球の影に入り、月が欠けて見える現象のことです。ところで月食は、観測する場所によって見え方異なる。皆既月食は月が本影(太陽が地球によって完全に隠された部分)に入った状態で、観察すると月がだんだん欠けていくのがわかる。そして部分月食は月の一部分が暗くなる月食のことです。

月といえば黄色ですが、皆既月食の月は赤っぽく見える。実はこれは夕焼けと同じ原理で起きているのです。今回はそんな皆既月食について学んでいきます。解説は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

理科教育に興味があり、理系に進んだリケジョ。実験や科学工作が大好きで、科学館の仕事が楽しくてしょうがない。

月食とはどんな現象?

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月食とは月・地球・太陽が一直線に並び、月に向かう太陽の光を地球が遮る現象です。地球が太陽と月との間に入ると月に地球の影がかかってしまうため、月が欠けて見えます。ちなみに月食は月蝕と表記されることも。この月食、地球上のいる場所によってその見え方が異なります。

ところで、毎日ちょっとずつ月の形が変わっていく月の満ちかけを考えてみましょう。月の満ち欠けにも月・地球・太陽の位置が大きく影響しています。そして月が満月となるのも月・地球・太陽が一直線となった時です。そのため、月食は必ず満月の時に起こります。しかし、満月の時に必ず月食かといえば、そうではありません。この仕組みについては後程解説いたします。

普段見られる月の満ち欠けについてはこちらを見てくださいね。

月食の種類

月食の種類

image by Study-Z編集部

月食には皆既月食部分月食半影月食があります。それぞれどのような現象なのでしょうか。

月にかかる地球の影には太陽から全く光が届かない本影、そして本影の外側で太陽の光が部分的に届く半影があります。そして本影にすっぽりと隠れるのが皆既月食、月の一部が暗くなるのが部分月食です。そして半影の部分では半影月食が起こり、月の一部分がわずかに暗くなります。半影月食は気づかないこともあるくらい観察しづらい現象で、月食として話題になっているのは皆既月食と部分月食です。

皆既月食

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皆既月食の色、赤銅色

まずは皆既月食の色について説明します。月の色と言えば多くの人は黄色を思い浮かべるでしょう。しかし皆既月食の時、月は赤く見えるのです。

皆既月食は月が地球の本影に入ることで起きることは先ほど説明しましたね。太陽の下でも蛍光灯の下でも影は日が当たらず暗くなっています。もちろん、影に入ったものも黒っぽく見えますね。しかし月食の場合、影に入った月が真っ暗になって空に消えてしまうのかといえば、そうではありません。皆既月食の時の月は赤みを帯びていて、この色は赤銅色と呼ばれています。この皆既月食の色のキーワードは「散乱」です。

地球に生命があるのは、地球に大気があるからですね。夕焼けが赤いのは、この大気を進む太陽光に含まれた散乱されにくい赤い光の影響です。太陽光にはいろいろな色の光が含まれています。波長が短い青はすぐに散乱してしまいますが、波長の長い赤い光は散乱しにくいのです。

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