この記事では「はたと」について解説する。

端的に言えばはたとの意味は「急に状況が変化するさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「はたと」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「はたと」の意味や語源・使い方まとめ

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「はたと」という言葉をご存知ですか。聞いたことがあるかもしれませんね。どんな意味を持つ言葉でしょうか。それでは早速「はたと」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「はたと」の意味は?

まず初めに、「はたと」の意味を辞書で確認してみましょう。「はたと」には、次のような意味があります。

1.唐突に物を打ったりぶつけたりするさま。
2.動作や状況が急に変わるさま。
3.一点を見すえるさま。
4.完全に。まったく。すっかり。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「はた」

「はたと」の「はた」には実はいろいろな意味があるのです。「はたち」や「はたとせ」の「二十」。織物を織る道具の「機」。他にも「畑」「旗」「端」など。中でも「はたと」の形で用いられる「はた」は、「はたとひざを打つ」のように「急に物を打つさま。勢いよく物をうつさま」「はたと思い当たる」のように「急に状況が変化するようす」「はたとにらみつける」のように「鋭くにらみつけるようす」「はたと当惑する」のように「完全にその状態になるさま」の4つの意味を持っています。「礑と」と漢字で書くこともありますが、多くは「はたと」とひらがなで書かれる言葉です。

「はたと」の語源は?

次に「はたと」の語源を確認しておきましょう。

「はたと」の「はた」は、急な動作につけられた「はった」という擬音が変化してこの語になったと考えられています。「はった」は勢いよく打ったり蹴ったりすること、また急に胸に応えた、感動したということも表しました。時代小説などに「敵をはったとにらみつけた」といった表現が出てくることがありますね。勢いよくにらみつけた時に「はった」と音がしたかのような気分になってしまうという、その架空の擬音を「はった」と言ったのです。その「はった」から「はた」という言葉が生まれました。「はたと」の歴史は古く、『平家物語』や『徒然草』にも登場するのですよ。その頃から今と同じような意味で使われていました。

「はたと」の使い方・例文

「はたと」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「はたと」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.難しい文章の翻訳に悩んでいたが、ヒントをもらったおかげでちょうどいい訳語が浮かび、思わずはたとひざを打った。
2.前後の流れと全く関係のない質問が飛んできたので、回答者ははたと口をつぐんでしまった。
3.ただ歩いていただけなのに注意を受けた親子は、警備員をはたとにらみつけた。
4.いったいどうしたらいいのか、これ以上の解決方法が浮かばないという閉塞感に、はたと困り果てた。

「はたと」は4つの違った意味を持っていますね。文脈によって意味が異なってくることになります。

例文1は、「急にぶつける」ことを意味する「はたと」の使い方です。「はたとひざを打つ」という表現が最もよく使われますが、「はたと手を打つ」など他にも使うことができますよ。例文2は、「急に変わる」さまを意味する場合の使い方です。「はたと気づく」「はたと手を止める」「はたと泣き止む」など、この意味で使われることが最も多いのではないでしょうか。例文3は、「一点を見据える」さまを意味する場合の使い方です。「はたと睨む」というのがよく使われる表現ですね。例文4は、「完全に」の意味での使い方です。「はたと行き詰った」「はたと迷った」などこの意味で使われることも多くありますね。

「はたと」の類義語は?違いは?

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「はたと」の類義語を見ていきましょう。

その1「ぱたっと」

急にぶつける」ことを意味する「はたと」の類語として「ぱたっと」があげられます。「ぱたっと」は「あまり重くない物が落ちたり倒れたりする音や、そのさまを表す語」なのですが、「続いていたものが急に途絶えるさま」も表す言葉です。「はたと」とよく似ていますね。

その2「出し抜けに」

急に変わる」さまを表す「はたと」の類語としては「出し抜けに」があげられます。「出し抜け」は「予期しないことが起こること」を意味する言葉です。思いもかけず突然なことを表します。他にも「行き成り」「突然」「不意に」などもありますね。

その3「じろりと」

一点を見据える」さまを意味する「はたと」の類語としては「じろりと」をあげます。「じろり」は「目玉を動かして、鋭い目つきで見るさま」を意味する言葉です。他にも「にらみ据える」「刺すような目で」「射抜くようなまなざしで」などもありますよ。

\次のページで「その4「とんと」」を解説!/

その4「とんと」

完全に」を意味する「はたと」の類語としては「とんと」があげられます。「とんと」は「すっかり。きれいさっぱり」を意味する言葉です。すっかり、まったく、きっぱりとといった意味を表します。また、後に打消しの表現を伴うと「一向に。すこしも」の意味になりますよ。

「はたと」の対義語は?

「はたと」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

その1「次第に」

「はたと」の対義語というのは特にありません。「急に変わる」さまを表す「はたと」の反対の意味を持つ言葉として強いてあげるなら「次第に」があげられるでしょう。「次第に」は「物事の程度や状態が少しずつ変化・進行するさま」を意味する言葉です。だん

その2「少し」

完全に」を意味する「はたと」と反対の意味を持つ言葉としては「少し」があげられるでしょう。「少し」は「数量・程度などがわずかであるさま」を表す言葉です。「ちょっと」のことを表します。漢字で「寡し(すこし)」と書くこともありますよ。

「はたと」の英訳は?

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「はたと」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

 

その1「suddenly」

急に変わる」さまを表す「はたと」の英訳としては「suddenly」があげられます。「suddenly」は「突然に、不意に」を意味する単語です。

 

その2「slap one's knee」

「はたと」は文脈によって意味が異なりますので、この単語を使えば訳せますということにはなりません。例えば、「はたとひざを打つ」を表現したい場合には「slap one's knee」と訳すことができます。「slap」は「平手打ち、打つこと」を意味する単語です。「slap one's knee」でそのまま「ひざを打つ」ことを表します。

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その3「be really at a loss for words」

もうひとつ、「はたと言葉につまる」を表現したい場合には「be really at a loss for words」と訳すことができます。「loss」は「失うこと、喪失、紛失」を意味する単語です。言葉を失ってしまった、すなわち「言葉につまる」ことを表現できます。

Suddenly he stopped talking.
彼は、はたと話すのをやめてしまった。

He slapped his knee.
彼は、はたとひざを打った。

She was really at a loss for words in the middle of the conversation.
彼女は、会話の途中ではたと言葉につまった。

「はたと」を使いこなそう

この記事では「はたと」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「はたと」には「急にぶつけること」「急に変わるさま」「一点を見据えること」「完全に」という4つの意味がありましたね。それぞれはつながっていながら別々のニュアンスを持っているかと思います。様々に活用することのできる「はたと」。ぜひ使ってみてくださいね。

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「はたと」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

1.難しい文章の翻訳に悩んでいたが、ヒントをもらったおかげでちょうどいい訳語が浮かび、思わずはたとひざを打った。
2.前後の流れと全く関係のない質問が飛んできたので、回答者ははたと口をつぐんでしまった。
3.ただ歩いていただけなのに注意を受けた親子は、警備員をはたとにらみつけた。
4.いったいどうしたらいいのか、これ以上の解決方法が浮かばないという閉塞感に、はたと困り果てた。

「はたと」は4つの違った意味を持っていますね。文脈によって意味が異なってくることになります。

例文1は、「急にぶつける」ことを意味する「はたと」の使い方です。「はたとひざを打つ」という表現が最もよく使われますが、「はたと手を打つ」など他にも使うことができますよ。例文2は、「急に変わる」さまを意味する場合の使い方です。「はたと気づく」「はたと手を止める」「はたと泣き止む」など、この意味で使われることが最も多いのではないでしょうか。例文3は、「一点を見据える」さまを意味する場合の使い方です。「はたと睨む」というのがよく使われる表現ですね。例文4は、「完全に」の意味での使い方です。「はたと行き詰った」「はたと迷った」などこの意味で使われることも多くありますね。

「はたと」の類義語は?違いは?

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「はたと」の類義語を見ていきましょう。

その1「ぱたっと」

急にぶつける」ことを意味する「はたと」の類語として「ぱたっと」があげられます。「ぱたっと」は「あまり重くない物が落ちたり倒れたりする音や、そのさまを表す語」なのですが、「続いていたものが急に途絶えるさま」も表す言葉です。「はたと」とよく似ていますね。

その2「出し抜けに」

急に変わる」さまを表す「はたと」の類語としては「出し抜けに」があげられます。「出し抜け」は「予期しないことが起こること」を意味する言葉です。思いもかけず突然なことを表します。他にも「行き成り」「突然」「不意に」などもありますね。

その3「じろりと」

一点を見据える」さまを意味する「はたと」の類語としては「じろりと」をあげます。「じろり」は「目玉を動かして、鋭い目つきで見るさま」を意味する言葉です。他にも「にらみ据える」「刺すような目で」「射抜くようなまなざしで」などもありますよ。

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