この記事では「髪結いの亭主」について解説する。

端的に言えば髪結いの亭主の意味は「女房の稼ぎで暮らす旦那」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「髪結いの亭主」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を活かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい言葉で解説していく。

「髪結いの亭主」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「髪結いの亭主」という慣用句を知っていますか?まず、「髪結いってそもそも何?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。言葉の言い回しが古く、意味が想像しにくい慣用句ではありますが、実は現代を生きる私たちも意味の近い言葉に言い換えて使っていることもあるのです。今回は、そんな「髪結いの亭主」について解説をしていきたいと思います。

それでは早速「髪結いの亭主」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「髪結いの亭主」の意味は?

「髪結いの亭主」には、次のような意味があります。

女房の働きで養われている男。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「髪結いの亭主」とは、「かみゆいのていしゅ」と読む慣用句です。自分自身は働かず、妻の稼ぎで養われている男性を意味しています。現代でも女性の稼ぎに頼って働かずに生活をする男性のことを「ヒモ」と呼ぶことがありますが、「ヒモ」を昔の言い方で表すと「髪結いの亭主」になるのです。

「髪結いの亭主」が使われていた時代は、男性が働いて女性が家を守るという考え方がメインであったため、妻の稼ぎで生活をしている男性を表すこの慣用句はマイナスのイメージを持った言葉として使われていました。しかし、男女平等が浸透して、女性が働いて男性や育児をするなどの家庭のあり方が多様化した現在では、この慣用句を使うと不適切な場合もあるので使用シーンはしっかり見極めましょう。

「髪結いの亭主」の語源は?

次に「髪結いの亭主」の語源を確認しておきましょう。

「髪結い」とは現代でいう美容師や理容師などのことで、明治時代にはこの専門の職業の人を「髪結い」と呼んでいました。当時、芸子などの髪を結う「女髪結い」は他の職業や男性の稼ぎに比べても非常に収入のよい仕事であったため、「髪結い」の妻を持った男の人は遊んで暮らすことができていたのです。このような背景から、「髪結いの亭主」という慣用句が成り立ったと考えられています。

\次のページで「「髪結いの亭主」の使い方・例文」を解説!/

「髪結いの亭主」の使い方・例文

「髪結いの亭主」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.何にでも世話を焼いてしまう彼女は、付き合う男性をことごとく髪結いの亭主にしてしまう。
2.彼女の夫は結婚したとたん仕事を辞めてしまい、就職活動もせずなかなか働こうとしない。まるで髪結いの亭主だ。
3.同じ男として、夫婦ふたりで協力せず妻ひとりに働かせる髪結いの亭主のことを理解することができない。

ここでは3つの例文を挙げました。使い方を確認していきましょう。

上記は、女性に頼ってばかりで自分で働こうとしないヒモのような男性のことを表す例文ですまた、例文3のように、このような男性のことは理解ができない、このようにはなりたくないと戒めという形で用いる場合もあります。いずれにしても、「ヒモ」のようにパートナーに頼りっぱなしの男性とはできるだけ付き合いたくないものですね。

「髪結いの亭主」の類義語は?違いは?

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「髪結いの亭主」の明確な類義語は存在しませんが、下記の2つの慣用句は似た意味を持つと考えることができます。

その1「左団扇」

「左団扇」は漢字をそのまま「ひだりうちわ」と読み、左手でゆっくりと団扇を使うという意味が転じて、安楽な生活を送ることを意味しています。一般的に聞き手は右手が多いと考えられているため、聞き手ではない左手でゆったりと団扇をあおぐ仕草が、豊かで何の心配もない安楽な生活を送るという意味に変化したと考えられているのです。

また、妻の稼ぎで暮らすというマイナスなイメージの強い「髪結いの亭主」に対して、「左団扇」は誰のどのような収入によって安楽な生活が送れるのかが限定されないので区別して覚えておきましょう。

\次のページで「その2「有閑」」を解説!/

1.宝くじで1億円を当てた彼は長年勤めていた会社をやめて田舎に引っ越し、左団扇で暮らしている。
2.作家として活躍してきた彼は、今は執筆活動をやめて左団扇で暮らしている。
3.両親から継いだ不動産を経営しているので、あくせく働かず左団扇で日々暮らすことができる。

その2「有閑」

「有閑」は「ゆうかん」と読み、生活に余裕があって暇のあること、時間に余裕のあることを意味する言葉です。資産に余裕があり、暇な時間を非生産的な消費に費やす「有閑階級」や、時間やお金に余裕があって趣味や娯楽などを楽しみながら気ままに暮らす「有閑マダム」などという用いられ方もします。誰の稼ぎによって余裕が出るとい限定されてはいませんが、夫の稼ぎによって優雅に暮らすと使われることのある「有閑マダム」で考えると、「髪結いの亭主」と似た意味を持つと考えられるのではないでしょうか。

1.安い賃金で寝るまもなく働く労働者たちは、有閑階級の人々に不満をつのらせている。
2.実業家と結婚をして職場から退職をした彼女は、まさに有閑マダムのような生活を送っている。

「髪結いの亭主」の対義語は?

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「髪結いの亭主」には、明確な対義語は存在しません。あえて「髪結いの亭主」の反対の意味を挙げるなら、苦労をいとわずに努力するという意味の「身を粉にする」などが考えられるのではないでしょうか。

「髪結いの亭主」を使いこなそう

この記事では「髪結いの亭主」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「髪結いの亭主」は現代で言う「ヒモ」と似た、自分で働くことがなく妻の収入で養われている男性を指す言葉です。明治時代では「髪結い」の女性は稼ぎがよく、男性は遊んで暮らすということからこの慣用句は成り立ったと考えられています。

明確な類義語や対義語はありませんが、似た意味や反対に近い意味を持つ言葉として「左団扇」「有閑」「身を粉にする」を紹介しました。

明治時代にも現代でいう「ヒモ」のような考え方があったことも意外ですが、使用されていた当時に比べて現代の家庭のあり方が多様化していることを考えると、意味以外にも様々なことを学ぶことができる言葉なのではないでしょうか。

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【慣用句】「髪結いの亭主」の意味や使い方は?文学部卒現役ライターがわかりやすく解説!

この記事では「髪結いの亭主」について解説する。

端的に言えば髪結いの亭主の意味は「女房の稼ぎで暮らす旦那」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「髪結いの亭主」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を活かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい言葉で解説していく。

「髪結いの亭主」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「髪結いの亭主」という慣用句を知っていますか?まず、「髪結いってそもそも何?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。言葉の言い回しが古く、意味が想像しにくい慣用句ではありますが、実は現代を生きる私たちも意味の近い言葉に言い換えて使っていることもあるのです。今回は、そんな「髪結いの亭主」について解説をしていきたいと思います。

それでは早速「髪結いの亭主」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「髪結いの亭主」の意味は?

「髪結いの亭主」には、次のような意味があります。

女房の働きで養われている男。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「髪結いの亭主」とは、「かみゆいのていしゅ」と読む慣用句です。自分自身は働かず、妻の稼ぎで養われている男性を意味しています。現代でも女性の稼ぎに頼って働かずに生活をする男性のことを「ヒモ」と呼ぶことがありますが、「ヒモ」を昔の言い方で表すと「髪結いの亭主」になるのです。

「髪結いの亭主」が使われていた時代は、男性が働いて女性が家を守るという考え方がメインであったため、妻の稼ぎで生活をしている男性を表すこの慣用句はマイナスのイメージを持った言葉として使われていました。しかし、男女平等が浸透して、女性が働いて男性や育児をするなどの家庭のあり方が多様化した現在では、この慣用句を使うと不適切な場合もあるので使用シーンはしっかり見極めましょう。

「髪結いの亭主」の語源は?

次に「髪結いの亭主」の語源を確認しておきましょう。

「髪結い」とは現代でいう美容師や理容師などのことで、明治時代にはこの専門の職業の人を「髪結い」と呼んでいました。当時、芸子などの髪を結う「女髪結い」は他の職業や男性の稼ぎに比べても非常に収入のよい仕事であったため、「髪結い」の妻を持った男の人は遊んで暮らすことができていたのです。このような背景から、「髪結いの亭主」という慣用句が成り立ったと考えられています。

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